結局酒を飲むタイミングがない

 僕は今年に入るまで酒をほとんど飲まない人間だった。とある友人から高級なウイスキーを飲ませてもらってからはそこそこの頻度でウイスキーを飲むようになったが、最近はまた飲まない日々を過ごしている。別にウイスキーを嫌いになったわけではなく、シンプルに寝る寸前まで頭を使っているため酒を飲むタイミングがない。基本的に僕はこのような執筆だったり何かしらの勉強をしているので、わりと眠気に襲われるギリギリまで作業をしていることが多い。その時点で既に夜が更けているため、そこから飲むと朝になってしまう。そのため酒を飲まないまま一日を終えることが多い。

 最近、友人に連れられ久々に深夜まで飲んだのだが、そのときなぜ自分が結局酒を飲んでいないのかということを理解した。それは、複数人で入るような飲み放題の店やチェーン店では僕が好きな酒がメニューにないからだ。例を挙げると、白州と余市が今の自分の中での推しだが、そんなウイスキーを置いている店はバー以外にはない。また、飲み放題の対象にも入ってこない。知多でもいいのだが、知多すら置いていない根性のない店が多い。そのため、そもそも飲みたい酒がないから渋々ジンジャーエールを頼むという酒を日常的に飲んでいなかった頃の自分と全く同じ注文をいまだにしている。言ってしまえば僕にとっては大体の飲み会が酷く退屈なものなのである。

 以前、友人から、お前もそのうち安い酒を大量に飲むようになると言われた。しかし、その発言にはどうも納得できなかった。自分にとって美味しいと感じるから高価なウイスキーを飲んでいるだけで、別に酒であればなんでもいいというヤリマンのような価値観で生きているわけではない。むしろ安い酒(例:オールド)も試してみて、これは自分の舌には合わないという結論に至ったからこそ高い酒だけ飲んでいる。脳が麻痺してしまっている人間の舌と僕の繊細な舌を一緒にしてもらっては困る、と思うのが正直なところだ。しかし、脳まで酒焼けしてしまった友人には僕の声は届かない。酒が人生における最上の快楽となってしまった人間の言葉は、いまいち理解できないと思うばかりだ。


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