『ひかりの靴下』

商店街から少し外れた
小さな屋根の稜線が
空を支えている
「あのあたり」って
思っておけばいい?

寒さもすっかり厳しくなって
僕よりも夜が
だんまりを決め込んでいる

でも君がちょっと息を吐けば
生ビールのお代わりを頼むみたいな
ぶっきらぼうさで
「生きてる」ってヤツは言う

しぶしぶ付き合うような
安い物語ではないから
僕は心から笑って
窓の外は雪

瞬きのような短い夜に
正しさばかりを競い合う
無駄な暮らしをやめるまで
何年もかかってしまったけれど

ほんとうは
トム・ウェイツが歌うみたいに
働いていたいだけだったのかも

明日迎えに行くよ
車は借り物だけど
会いたくてたまらない気持ちだけは
本当だから

明日迎えに行くよ
君がこっちに来られないことは
知っているけど

明日迎えに行くよ
真夜中の駐車場で
ハンドルを握って目を閉じれば

そっちも今頃は冬
国道沿いのあのあたりを
多分君は歩いている頃だろう

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