『アスタリスク』

空白が怖いから句読点を打つのも忘れて最初の言葉が次の言葉を受け取る前にこぼれるこぼれるこぼれるこぼれる有機的観点で見れば圧倒的に不健全でただただ排泄するように分散和音を重ねる姿は一見するとシナプスが強化されていくようではあるけれどその実洪水のような思いと不完全な言葉だけでは人はどこにも行くことが出来ないのだとようやく知ったのは充分すぎるほど疲れることを覚えてから十年ほどたったある日のこと

・・・・ベルが鳴る

届け物です
中身は?
アスタリスク
置き配でいいです
玄関の脇に置いていってください
差出人は?
1999年?
どうしてこんなものを?

それから
しばらくして
ゆっくりと
ほんとうにすこしずつだが
静寂が
やってきた
夜の芝生を揺らす
足元の風のような
静寂と呼べるもの

アスタリスクを境に
雲が緩やかに
旋回を始め
僕は話すことをやめた
自分で自分に
話しかけることを
産まれて初めてやめた

そのとき横には
まだかろうじて
君がいて
「まだいたの」
と心にもないことを
心でだけ
いたずらのように
思ってみた

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