episode 06
私が何か成功を成し遂げる度に母は言った。
「ほらね、ママのおかげよ」
「ママも学生の頃すごかったんだから」
『私の血が流れているんだから当然だ』と言わんばかりに母は自分自身のことを称え、私のことは褒めてくれなかった。
いま思えば、あんな言葉をまともに受け止める必要なんてなかった。
『私が頑張ったから成し遂げた、だから貴方は関係ない』
そう強く言い返すことができたなら、いまの私はこんなふうに傷ついたり、涙を流すことはなかっただろう。
私の成功体験は全て『母のもの』に変換され、残ったのは失敗経験のみだ。
母は私が失敗する度に「ほら見なさい、ママの言った通りになったでしょ?」「あんたに出来るわけがないじゃん」と強い口調で言った。
これが当たり前の環境で育ったから、母のその冷たい声は離れている今も脳内で勝手に再生される。
ここから解放されない限り、私はずっと苦しいままだ。
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