見出し画像

大人になってRomance.3

恋愛とは、こんなにめんどくさいものだっただろうか。
恋とは、なんだかよくわからないけど胸が騒いで甘くて酸っぱくて、
笑ったり踊り出したくなったりするふわふわ楽しそうで、誰もが憧れるそれではなかったか。

あのセリフを言ってしまうその瞬間まで、彼は変わってしまったと思っていた。でも、あのセリフのように口の筋肉を動かして、音として耳で認識して、そして最後の彼の表情を見て、変わったのが誰だかわかった。

お互いの人生に"付き合おう"と約束したクリスマスイブは、先の未来になんの曇りも見えなかった。ただその瞬間瞬間を抱きしめ、楽しいとき嬉しいときはもちろん、悲しいとき辛いときこそ、"付き合っていこう"と思った。

だがどうだ、私の贅沢病は始まった。発症日・発症原因共に不明である。
いつの間にか、連絡をまめによこさないだの、電話をよこさないだの、しないことばかり数えるようになった。私が仕事の日には必ず「仕事頑張って」と言ってくれていたのに。
彼が目の前にいても、好きだと言わないだの、一緒にどこかに出かけようとしないだのと数えるようになった。会いに来てくれていたのに。

人の目は果たして2つで足りるのだろうか。脳は1つで大丈夫か?
言葉を交わせるだけで幸せだったのに、その件数で愛の重さを測りはじめ、どれくらい減ったかを真剣に数え、目の前の幸せや心配りに気づけなくなる。 
会えるだけで幸せだったのに、2人きりならもっと幸せだったのに、
その場所や口にする言葉で得意の計測を始め、その瞬間を無駄にする。
私はどこもかしこも節穴でできているのかと錯覚し始めてきた。愛の過不足研究所でも入るか。

周りを見渡せば彼が溢れている。冷蔵庫に貼ってあるなんだかよくわからないキャラクターのシールも、一番くじを引いたからと持ってきたフィギュアも、お揃いで買ったアウターも。
ただいま、の声も、会いたいときに会えるようになって嬉しいと笑った顔も、おやすみと微笑んだ顔も、何もかも。
さっきの言葉をどうしても取り消したくて首を振ってみたけれど消えるはずもなく、この部屋に沁みついた彼の想いも消えなかった。

スマホでなんでも解決できるクセに、こういうときの対処法になると急にシラを切る。薄情なやつだ。
普段からVlogでも撮っておけば、テッテレー!と笑えたかもしれないのに。
私は世界一良い女だといつも思っていたが、今回ばかりは日本の反対側まで真っ逆さまに落ちていくようだ。失って気づくなんてそんなバカみたいな話ないと思っていた。どうやら自分はおバカなのだと一度知った方が良さそうだ。

何年振りだかはわからないが、今年は久しぶりにサンタさんにお願いをすることにする。彼と末長く幸せでいられますように。これから老眼になっても近眼になっても乱視になっても、どれだけ近くの幸せに感謝するようにしますから。いつもと変わらない日常の中にも、幾つもの"ありがとう"を見つけて伝えられる、自分でも惚れるくらいの素敵なLadyになりますから。
ねえサンタさん?かつてあなたがプレゼントをくれた可愛くて幼かった少女は、今ではこんなに大きくなって素敵な大人の女性になりました。
だけどちょっとだけ失敗しちゃったことがあって、だから今回だけ、
もう一回プレゼントをくれるつもりでお願いを叶えてください。いいでしょ?

別に彼がいなくても生きていけるの。だけど彼がいた方がカラフルな毎日なの。白いご飯と味噌汁とメインだけでも生きていけるけど、副菜や彩野菜やデザートがあった方が心が踊るのと同じように。

別に彼がいなくても楽しく笑って過ごしていけるの。だけど彼と笑う方が
なぜかわからないけどもっと楽しい気持ちになれるの。

もし彼がいなかったら、嫌なことや辛いことがあったら友達に話すことにする。だけど、そのときに飛んできてくれて一緒にラーメンに連れて行ってくれる人はあの人だけなの。

気づけばもらったものばかりで、私は何か少しでもお返しできていただろうか。短所が長所で長所が短所のように、彼がしてくれたことの裏にはしないでいてくれたことがきっとあって、しないでいてくれたことの裏にしてくれたことがあったのだと今はなんとなくわかる。
私はちゃんと"付き合えて”いただろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?