校正者目線でよく見かける誤用語句 ①
備忘録も兼ねて、校正者視点でよく見る誤用などをまとめていきます。
特に物書きの方の参考になれば幸いです。
荒らげる ✖荒げる
誤用頻度断トツ(主観)。原稿の段階から間違わずに「荒らげる」と書いていらっしゃる著者さんは本当に少ないです。
校正者から指摘を出しても採用されずに「そのままでいいです」と言われるレベル。いいんですか、それで。
その影響か、稀に買った本でも見かけます。おそろしや。
「あらげる」ではありません。「あららげる」です。
例 彼女は僕の胸ぐらを摑み、声を荒らげた。
窺う ✖ 伺う
同じ読みで字が違う語句を『同音異字』といいます。誤用の中でも特に注意するべきものです。使い分けをしっかりとすれば問題ありません。
これの使い分け方としては
窺う:顔色や様子などを確かめる
伺う:目上の人に意見をいただく・訪問する
とりあえず「うかがう」を使うときは「伺」でいいか、という考えのせいか「伺」のほうが圧倒的によく見かけます。使い分けを特に意識しないと間違いやすい語句でしょう。
例 木陰に身を隠し、気付かれないようにそっと彼の様子を窺った。
~にも拘(わ)らず ✖ ~にも関(わ)らず
おそらく誤用頻度第2位(主観)。かく言う私もこの仕事を始めてから知ったので、それだけ世間には認知されている誤用なのかもしれません。
同音異字ですが、「~にもかかわらず」という意味で「関」は使えない(と思います)。「関わる、関わらない」という意味で「あいつとはもう関わらずに進めよう」と使うくらいでしょうか。
修正した結果「拘わらず」と「拘らず」の送り仮名でまたユレている、という面倒なことになる可能性があるので、こだわりがなければ「~にもかかわらず」と漢字をひらくのがおすすめです。
例 彼はいつも遅刻するにも拘わらず、一切謝罪をしない。
却って ✖ 返って
「予想や期待に反して」という意味で使う「かえって」。同音異字。自分が期待していたものとは違う結果が「返って」くるところからこの字を使う傾向にあるのかもしれません。
同音異字は字に惑わされやすいので注意が必要です。
例 上司はお酒を飲まない人なので、居酒屋に連れていくことは却って失礼である。
✖ 返事が返ってくる
重言です。「頭痛が痛い」「馬から落馬する」など、様々なパターンがあります。
ただ、これに関しては個人的な見解を述べると、文章で使うのはやめておいたほうがいいくらいに思っています。逆に言えば、口頭では問題ないと思っています。
理由としては、言葉の意味としてはあながち間違いではないからです。「返事」の意味の中に「質問や問いかけに対する言葉、書面」とあるため、言葉や書面が返ってくる、という意味で使えば問題ありません。
文章で使うのはやめておいたほうがいい、という理由は「返」の字が重なるからです。たとえ間違いではないとしても、見た目で重言だと感じると違和感を覚える人も出てくると思われます。
修正案としては「返事がくる」「言葉(手紙)が返ってくる」など。
すべての語句に対して言えることですが「多分この字だろう」と当て推量で書くと、3割くらいの確率で間違える気がします。それくらい普段使っている日本語には意外な落とし穴が多いのです。
普段から「この字で合っているのだろうか……」と疑問に思い、調べる癖をつけることで正しい日本語を使えるようになります。ご留意ください。
ご覧いただきありがとうございました。
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