見出し画像

映画 ドラキュラ/デメテル号最期の航海 感想

公開日: 2023年8月10日 (イタリア)
監督: アンドレ・ウーヴレダル
原題:The Last Voyage of the Demeter
原作: 吸血鬼ドラキュラ

クソコラを作りましたのでご査収ください。

ドラキュラ クソコラ

ジェーンドゥの解剖などで知られる、かの有名なアンドレウーヴレタル先生の映画、ブラムストーカーのドラキュラが原作です。
個人的には、監督作品の中では『トロールハンター』の次に好きな映画となりました。トロールハンターは日本語Blu-rayがプレミア化してますがDVDはうまい棒みたいな値段で買えるのでみんな買いましょう。

基本的に事件は、夜に起きるのですが、昼の航海シーンは解放感がある海の描写(映画内ではそれが絶望につながるわけですが、、、)が多く、パイレーツオブカリビアン的な楽しさがありました。
また本作のドラキュラとの対峙、及びビジュアルは映画「エイリアン」から引用されている部分が多く、エイリアンとパイレーツオブカリビアンを同時に観つつ、鬱と耽美に浸りたいワガママさんの夢を叶えてくれるお子様ランチみたいな映画でした。

以下はドラキュラ/デメテル号最期の航海のネタバレに触れる文章です。正直、ドラキュラの航海日誌部分にネタバレもクソもないのですが、一応気になる方はブラウザバック!

ドラキュラの設定にはすごく忠実な映画でした

物語はドラキュラをルーマニアからイギリスに運ぶ呪われた船の部分だけを抽出しているため、自然と『全滅して終わる話』にしかなりません。
この映画のとても好きなところは、『全員死ぬ』(であろう)ということを観客に予め見せていることです。死ぬことがわかっているということは、あとは、逃げられない戦場でなぶられる恐怖が描かれるのかな?と思いきや意外とそうでもなかったのがアツかったなと思いました。

前半の数十分は、子供もクルーもみんな楽しそうなのもよかったです。残酷なことを言うと、はじめから死にたがっている不幸な人が悪魔に襲われても心は動かないんですよね。わたしもそうです。

子供はかわいそうだった

一等航海士のヴォイチェクは、この旅が終わったらデメテル号の船長になるという希望に満ちていましたし、船舶調理師は仕事と信仰に厳格でしたし、船長のエリオットはこれを最後に引退して孫と故郷に住む予定でした。またこの映画の主人公のクレメンスは、ケンブリッジを卒業した医師でありながら肌の色で職探しが難航していましたが、船医からイギリスにわたることに希望をかけていました。

中盤以降のヴォイチェク、アン、クレメンスが諦めずに作戦を立ててドラキュラ討伐を目指すシーンも意外と「いけそう」な雰囲気がただよったり、本人たちも「死んでもこのラインは超えさせない」という次点の希望があったのが良かったです。

血塗られていく希望たちよ

ジム・ジャームッシュの『デット・ドント・ダイ』を見た時、”最悪の結末に進行している世界でも、諦めて死ぬ(シナリオを変える)わけにはいかない、やるべき最善を尽くすしかない”というのが出てきて、その時は『なんだクソジジイ、あなたはもうすぐ死んでいくからこんなひどいコメディが撮れるんだ』とちょっと腹も立ちました。でも、全く同じ話をしているはずのこの映画を見た時は少しも腹が立ちませんでした。
ジム・ジャームッシュの人を小馬鹿にしたゾンビと違って、ドラキュラのビジュアルが信じられないくらい美しい(飛ぶ!)からというのが大きな理由かな。

わたしの人生の災厄すべてを乗せて美しく飛んでくれ

たまに、『世界はすべて悪い方向へしか進んでいかないのではないか』と、考え込み、ひどく塞いでしまうことがあります。中盤で孫を失い錯乱したエリオット船長のこと、もう少し若かったら『愚かで邪魔なキャラクター』と感じていた気がするけど、今はそうは思えませんでした。

この話を終えてしまおう、なかったことにしよう、って気持ち、めちゃくちゃわかります。

みな、数々の救えなかった希望や、救いようのない過去の選択たちを抱えています。都営浅草線のピンク色のラインを目でおいながら、そこに吸い込まれていく自分を何度も妄想しました。
この映画に蔓延する恐怖と絶望、そこに翼をもって君臨するドラキュラはとても美しかったです。今度『世界はすべて悪い方向へしか進んでいかないのではないか』という波が来るときは、きっと隣に彼が立っていてくれると思いました。だからわたしは、主人公で居続けるために逃げて、抗わなきゃ。


みんな、もうダイナソー・ファイターはみたかな?素手で恐竜倒す、インディペンデントカンフーSF映画だよ🦕🦕🦕

最後まで読んでくれてありがとう。これからも、suzukaの映画日記をご照覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?