見出し画像

断片

#1
光る海を見に行くつもりで
月の明かり
星のかけらひとつない暗闇を
砂利道抜けて雑木林抜けて
着いた今はもうやっていない
海水浴場に
怖がりがふたり

#2
死ぬ気で来たのに
なにも見えないとつまらない
介錯くらいしてくれたって

#3
無風
まとわりつく暑さ
潮を含んだ空気が
煩わしい

#4
また誰かがなにか言っていたらしい
まだ耳には届いていない
誰もが見るであろう場所に書いてあるのは
見かけたけれど
にこやかに目の前にいても
知っているので
覚悟してください
笑っても伝わるか

#5
知ったこっちゃないわな


#6
黙っているからといって
許しているわけでもなく
耐えているわけでもない
澱は溜まる
胃に肺に脳に流し込まれ
咀嚼も呼吸も思考も何も
できなくさせることも

#7
手はわたしにある

#8
さしのべることはしない

#9
その値がない、
というのはただの言い訳で
本来であればかき消されるほどの
戯言であるということを自覚して
いただきたい
分岐で捨てられる程度の
あるというならばある証明を
できないのなら
<—!金輪際
関わらないでいただきたい)—>

#10
結局できなかった 
なにを?
この世を終わらせる
ああ、それ難しいよね
そういうと彼は車から箱を取り出す
「自分用」
「自分以外用」
ふたつあって、
それらをそれぞれに使うのだという
嘘っぽい
笑うと彼は馬乗りになる
こうやって使うんですよと
力を入れる

息が
詰まる


暗転。

#11
思い出と記憶なんてあてにならない

#12
ああ、どうでもいいんだな

#13
考えかたが相容れない人の
ふとした思考を目にすることがあると
自分の目の前にいてもそんなふうに
考えているのだということが
わかってしまうのでなおさら
距離が開く
それは正しい意味で社会的な

#14
別にいなくたっていいだろ
必要あるか?

#15
自分がはいることで空気が変わるのが嫌で
柱の影から見てる
みたいなことを何度も繰り返す
うちにタイミング失って
車の往来 電車の通過
遮るものが増えてくるので
見ていないときにかぎってなにかある
という事実は純然としてあるけれど
ここらが潮時
とばかりに背を向ける
ヘッドホン持っててよかったと思う
のはこれで何度目か

#16
誰かに合わせて
諦めることばかり選んだ

#17
誰かの思索に比べたら
浅く浅い自分の
(何の価値もない)

#18
ああ、自分だけ
と思うのは浅はか
なのではあるけれど人の
せいにするほどの傲慢さ
も持ちあわせていない
ので
自分が悪いんだろうとうっすら
思って言葉ははみださないように
しっかりと握りしめておく
に限る
(お前のせいだと言われても
ああそうですか、としか)

#19
大人とか子どもとか
誰かの都合で決めないでほしい

#20
昔ほどテレビも雑誌も見なくなったのは
大人の事情が透けて見えるせい
そんなこと察しなくてもいいのに
自分に関係ないところで気を使うのは
やめにしたい
意味がない

#21
そこまで親しくはない人のところにお邪魔する、というのは文字通り邪魔なのだろうか、ということを昨日から考えている。一方的に知っている人に馴れ馴れしくするのとも違う、それはたぶんパーソナルスペースの問題なのかもしれない。顔見知りになれば受け入れられている、ということはないのだと、折に触れて確認する必要がある。常に必ず一線を引いておかなければならない。あなたと私、先生と生徒、作家と読者、客と主人、あるいは。

#22
もしだめになったらごめんね
そしたらここから消えるから

#23
これは仮定だが、すべてのことから手を引いたほうがいいのではないか、という気がしている。自分の発想は正しくない、誰かの発想は正しい、二つに分けることは難しいのかもしれないが、自分が思っているとおりに進めてうまく行ったことはない。別の誰かが同じことをするとたいていのことはうまくいく。だからそういうことなのだ。

#24
「僕があなたから離れてゆく」ってよく言ったもんだな、と思う。なにが面白いのかわからないが、面白がっている人が多いのでそれは面白いのだろう。悪いのは自分だ。

#25
最近は
謝ることばっか

最近の
飲み込んだ言葉の多さ

#26
誰かいると思って行った場所の、人影もない呼吸の音だけが響く見晴らしのいい砂浜から見える青空は、ただ一人であることを確認するだけでなにも与えてはくれない(あたりまえの話)

#27
フロアが違うからと非常階段の踊り場で話をしていた彼と彼女、僕たちは用があるふりをして見に行く。なぜか僕が通りすぎると必ず目があうのはなにか言いたかったからなのだろうか。それとも誰とも目があったのだろうか。全ての予想を可能性として受け止めてはいなかったし、答え合わせは永遠にされることもない。後で漏れ伝わってきた言葉に絶望していてもしかたなかった。

#28
ひとちぎりしただけのパンの大半をくれるけど、そういうのはなかよくはんぶんことは言わないと思うんだ。

#29
ふゆはすぐそこ

#30
自分の感情を誰かに全部預けてしまうなんてそんな危ないことできないといつも思う。壊れたらおしまい、誰かだってもて余すのは目に見えている。自分でさえ手に余らせてる。

#31
高いビルから投げ捨てたら、誰かにぶつからないことを祈る。粉々になるのは自分だけでいいし、抜け殻は風に飛ばされてしまえば誰にも気づかれることはないだろう。

#32
またね、と言わずに
じゃあね、と言った意味を
あの時からずっと考えている

#33
自分が思うほど愛されてもいないし
誰かに必要とされているわけでもない
全ては思いあがりだ

#34
すべてが自分の思うとおりにならないと
気がすまないのね
誰もいない場所で出す命令は
誰かの耳に届いているの?

#35
ときどき見るのは
自分だけがいない今

#36
必要なのは なにものにも負けない強い心
ノイズに惑わされることなく
信念を持ってして遂行する

#37
まだ夜が残る住宅街の路地
電線と屋根に群がるカラス
声はなく 羽音すらもなく
迎えに来たのか見送るのか
地上から耳を掠めて過ぎる
待っているのは私ではない
わかったならもうおかえり
干からびた誰かの皮膚など
記憶の足しにもならない

#38
イマジナリーフレンドが去ってからが本番

#39
わりと真面目な話、自分だけ何にもしてないんですよというときのほうが人の反応は良いときが多い。自分のやっていることは許容しがたく、自分以外の人がやれば許される、それだけのことだろう。一人でぼんやりと時間を過ごすのは慣れている。することがあればやる。自分のしたいことはしてもしなくてもいい。できたらやりたいけど、気に入らないんでしょ?

誰かの反応を気にしていては生きてはいけない。いつも後回しにするけど、いざ自分の番になったときに笑われるのはもうたくさん。お前がやれ。お前がやれ。お前のことはお前がやれ。俺のすることじゃない。後始末はもうたくさん。後始末は。

#40
僕の好きな場所はなくなって
見る影もなく変わってしまって
新しくなる
古いものは捨てられる
価値がわからないからどうしようもない
僕にはなにもわからない
昔話と澱のような記憶と
「それから私?」
「みんないいわけないだろ」
永遠に足を引っぱりあうんだ
情けを見せたほうが負け

#41
曖昧なまま笑うのはもうやめてほしい

#42
待つことも大切だが
そう待ってもいられない

#43
ビッケのうたの節で
「ちいさなタイミング」
って歌ってる

#44
少しのずれでも戻せなくなる

#45
ときどき、すべてを否定される。自分がやっていることすべてを否定される。褒められて無邪気に喜ぶ歳でもないので、あるいはそのほうが正しいのかもしれない。

#46
<—! 回答がほしいのか共感されたいのかただ相槌がほしいだけなのかわからない。—>野に放たれた瞬間に何かが攫っていってしまい、放たれたものがなんだったのかわからなくなってしまう。意味のない、価値のない、理由のないなにか。波紋。静寂。気配のない痕跡。警戒。繰り返して、悔悟。

#47
誰を 何を
如何にして

許容 諦念

#48
いちばんおもっていることは
あたまのなかにしまったまま

だいじょうぶ
ひつようとなんかされてない

#49
あの時、ほかに誰もいない教室で
内緒だよととなりにいてくれた
それだけで僕は生きていけると思った

未来に生きることはできないけれど
ありがとう ありがとう
君の左手の暖かさは忘れないと思う

#50
誰かに必要とされる日は来るんだろうか

#51
なにひとつとして
できることがない
という事実と認識

#52
はしゃいでいるのは自分だけだという事実に気がついたのはどのタイミングだったか、振り返ると誰もそこにはおらず、自分はひとりで話し、笑い、踊るように身体を揺らしていた。
何度目のことなのか、もう忘れてしまうくらい同じことを繰り返し、そのたびに責める。いつまでも学習しないのは本当に自分の悪い癖だと思う。
深呼吸を一回。話の結末がそれほど面白いものではないことを頭の中で確認すると、それきり口を噤む。

#53
You changed nothing more, but you changed everything more.  
Sadly, that meant your childhood’s end. 

#54
手に入るのはいつも
本当にほしいものとは
少し違う、

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?