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たまたま読んだ本6:「映画のタネとシカケ」映画を見る楽しみが増える。映画の魅力を作る側から解説。カメラワークやライティング、音声や編集で映画が活きる。


映画のタネ

映画を見るのは好きだ。
最近は映画館よりはDVDやネットなどで見ることが増えた。
手軽で便利だ。
映画の楽しみは、人それぞれかもしれない。
まず、ストーリーという人や
いや俳優やその演技力だという人もいるだろう。
肝心なのは映像。その美しさや迫力や雰囲気も大事だ。
そして音や編集だという人もいるだろう。

すべて見る人の立場からの映画の魅力だ。

それに対して、
この「映画のタネとシカケ」なぜ映画を観てワクワクするのか?は、
映画を作る人からの視点でその魅力を語る。
映画の別の見方を教えてくれる。

取り上げている映画は11作品。
有名な映画を作品ごとに、カメラワークや照明、音声の入れ方、
画面構成の展開や編集の順序、そして撮影テクニックなど、
いかに見る人を楽しませるか数々の工夫を図解を使って解説してくれる。
映画を見る楽しみが増えること間違いない。

取り上げられた映画作品は次の通り。
01『ジュラシック・パーク』監督:スティーヴン・スピルバーグ
興奮と危機感を見せる映像演出。
カメラの動きやライティングの変化、
面構成などにより緊張を盛り上げる。

02『ラ・ラ・ランド』監督:デイミアン・チャゼル
オープニングのダンスシーンで新しいミュージカル映画の美しさを実現。
クレーンによる高速道路の中央分離帯を越えて移動する撮影や
カメラの影が出ない順光や逆光の撮影、
カラフルな服装や背景の色の統一感など
秘められた工夫を解説する。

03 『フレンチ・コネクション』監督:ウィリアム・フリードキン
伝説のカーチェイスシーンはなぜハラハラするのか?
視線と動線を組み合わせて位置関係を巧み描き臨場感を高めている。

04『透明人間』監督:リー・ワネル
照明とカメラワークと構図の工夫で「透明人間」の存在を描く。
スタジオに建てた家のセットで
ワイヤーアクションやクレーンショットを使い、スリル感を高めている。

05 『パラサイト 半地下の家族』監督:ポン・ジュノ
トラックアップで表現する上層階級と下層階級の生き方。
レールの乗せたカメラワークで寄生する心理を描き出し、
上層社会と下層社会の違いを描写する。
トラックアップとパン、照明の色に違いや角度で描く。

06 『トイ・ストーリー4』監督:ジョシュ・クーリー
レンズの選択とボケのコントロール、照明で登場人物の気持ちを表現する
おもちゃの心理をレンズやボケ、照明で描き出す。

07『1917 命をかけた伝令』監督:サム・メンデス
細心の注意と職人技で誕生した “ワンショット映像 ” は
カメラを観客に意識させない。トランジット(乗り換え)をうまく使いこなす。

08『ミュンヘン』監督:スティーヴン・スピルバーグ
即興的な撮り方をしながら物語とカメラの動きを連動している。
場面に最適なフレームを使い分ける。
照明により運命まで暗示する。
カメラワークの切り替えで場面の雰囲気を伝える。

09 『羊たちの沈黙』監督:ジョナサン・デミ
アクリル板に映り込むレクターの虚像を利用した映像演出。
男性優位社会を描くショットや
クレーンを使った犯罪者の異常性を印象的に見せる。

10『ヒストリー・オブ・バイオレンス』監督:デビッド・クローネンバーグ
ショットの途中から変わる照明が人物の心情の変化を描く。
光の指す角度で継続性をつくり、壁を外すなどセット撮影の有効性を打ち出す。照明や絞りにより正確の変化を表す。

11『マッドマックス 怒りのデス・ロード』監督:ジョージ・ミラー
アクション・映像・音響・編集が共鳴し映画にエネルギッシュさを保つ。
効果音が映画を盛り上げ、反復編集により効果を高め、
打撃の強さを表現する。
横や奥行きの動線を描き緊張感を高め、
日の丸構図は早い動きでも主人公を見逃さない効果がある。

12 映画のアスペクト比とそれがもたらす演出効果を考える。
映画の縦横比の視覚効果により、どう雰囲気が変化するかなどを解説。

これを読むと、その映画が見たくなる。
DVDがあれば、確認しながら何回も見ることができる。
なるほど、このようにして臨場感やスピード感、
見る人の心理をわしづかみにしているのかなど、目から鱗。
もっともそんな理屈を考えなくても
見る人は、自分なりに素直に映画を楽しめばよい。
Vlogが流行り、動画を作る側の人も多いので、
そんな人たちにはここまで本格的でなくても大いに参考になるかも知れない。

映画のタネとシカケ
なぜ映画を観てワクワクするのか?

出版社 ‏ : ‎ 玄光社
発売日 ‏ : ‎ 2023/3/24
ページ数 : ‎ 128ページ A4サイズ
定価:2,420円

著者プロフィール
御木 茂則(みき しげのり)
映画カメラマン/1969年生まれ。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後、丸池納氏に師事。撮影助手として黒沢清監督の『勝手にしやがれ!! 強奪計画』(95)、『勝手にしやがれ!! 脱出計画』(95)『7人のおたく』(山田大樹監督/92)、CMでは上田義彦氏などの作品に携わる。石井岳龍監督の『生きてるものはいないのか』(12)『パンク侍、切られて候』(18)などで撮影補として携わる他、『孤独な惑星』(筒井武文監督/11)『滝を見にいく』(沖田修一監督/14)『彼女はひとり』(中川菜月 /18)などで照明技師としても活躍。『希望の国』(園子温監督/12)『眼球の夢』(佐藤寿保監督/ 16)『Laki sa Tubig』(Janus Victoria監督/22)では撮影、『クモとサルの家族』(長澤佳也監督/ 23)では芦澤明子氏と共同撮影。日本映画撮影監督協会 理事/神戸芸術工科大学 非常勤講師


トップ写真は、アガパンサス


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