見出し画像

どこにだって行けるんだ

遮光カーテンのちょっとした隙間から射しこむ朝日が眠そうな顔を照らした。ぬくもった布団を体から引き剥がし、一息で体を起こす。カーテンを思い切りよくシャッと開けると、降り続いた雨をたっぷり溜め込んだ木々がきらきらしていた。

雨粒の重さにしだれる草花のように、一度しゃがんでから大袈裟に伸びをする。湿気を溜め込んだ自分の体がシャキッとリセットされるのを感じた。雨上がりの日差しはどうしてこんなに活力をくれるんだろう。

布団を畳んで、コップ一杯の水を飲む。冷たい水を顔に浴びせ、洗いたてのフカフカのタオルで顔を優しく包み込む。一つ一つの動作を焦らず丁寧に行うことで、自分と自分の生活を大事に守れている気がする。

読みかけの本を3冊も4冊もリュックに詰めて自転車にまたがった。今日はどこに行こう。焦る必要もないし迷う必要もない。どこにだって行ける。右足で強くペダルを押し込んだ。

400字エッセイ書いています。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?