見出し画像

理髪店

初めての理髪店に入るには少し勇気がいる。この町に移住してから4ヶ月が経とうとするが、1度も家の近くの理髪店を訪れることができないでいた。

しかし、年末年始に地元で髪を切って以来、2ヶ月間放射状に伸び続けた僕の髪の毛はそろそろ限界を迎えていた。

家から40秒歩くと、赤青白のサインポールがリズム良く回っているのが見えた。チラッと店内を覗くと先客はいないようだ。ありったけの勇気を振り絞って入り口のドアを引くと、耳慣れたカランという音と一緒に、若老夫婦が暖かい笑顔と挨拶で出迎えてくれた。

直毛癖の強い僕の髪の毛がバリカンとハサミで手際よく短く整えられていく。他愛もない地元話に花を咲かせながら、時間をかけて丁寧に顔剃りとシャンプーをしてくれた。居心地の良さと心地よさから、寝不足でもないのに、自然とうつらうつらしてしまう。

勘定を終えて外に出ると、日差しが眩しい。今日も良い一日にできそうだ。

400字エッセイ書いています。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?