成長痛に備えよう

事業が上手くいっている時は成長が実感できる一方で、業績向上時に起こるさまざまな事への対応準備が予想できないケースがある。売上が上がると当然忙しくなる。これまで充分な時間をもって対応できていた事も心の準備や前段取りをしていないとバタバタしてしまう。場合によってはミスやクレームにつながる事もある。

他にも、業績向上に伴い会社の認知度が向上すると相応にお客様が求めるサービスレベルが上がるケースもある。工務店の場合、業績アップによるエリア認知度の向上と共に大手のハウスメーカー並みの対応を求められる。概ね商圏エリアのシェアが3％を超えてくると、会社パンフレットのクオリティや社屋の設えから営業対応や現場環境・アフター体制まで、至る所でのレベルアップが必要となる。よく『施工棟数30棟の壁・50棟の壁・100棟の壁』と言われるように、工務店の事業規模に応じた組織体制の構築が必要になる。工務店に限ったことではないが、外部から求められるレベルが上がってくるのである。

業績向上時、経営者は次の戦略を前のめりに打っていく事が多い。こういう時は今が攻め時とばかりにマーケティングなど業容拡大への比重が大きいのではないだろうか。組織構築が疎かになると歪みを起こしてしまう。前向きな社員は成長を楽しむことが出来るが、規模が小さかった頃と比べてやる事も増えるうえに高いレベルのスキルを求められる事もあり、場合によっては社員の心理的安全性を阻害するケースもあるだろう。

一次的に業績向上はしたもののリバウンド（反動減）や踊り場状態を起こすケースは往々にしてある。この要因は様々であるが『経営者と社員の意識にギャップがある』『次に起こる事を予想していなかった』『顧客からの要望度が上がった』『仕事に余裕がなくなりミスが増え満足度が下がった』などが考えられるのではないか。一番は経営トップが冷静かつ戦略的にどれだけ前段取りをするかによる。過去最高の売上をたたき出し、初めて体験する忙しさをどう対処していくのかなど、業績アップ時にはトップが預言者となりこれから起こってくるだろう事を社員の皆さんに伝えておく事はとても重要である。逆に業績向上を良いことに気が緩んでしまうと後手に回り状況が悪化する事すらあるだろう。

クレーム増やミス・トラブルの発生などいわゆる成長痛に備えるには、密接なコミュニケーションと将来どうなるのかというビジョンの明確化、そして実務への落し込みが不可欠になる。業績UP時に『成長』するのか、それとも『膨張』しただけにしてしまうのかは、やはり経営者の考えによるところが大きい。マーケティングの成功による業績向上と組織体制の構築が両輪となり順調に成長していく企業になるには『成長痛に備える』事が肝要である。

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