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ドント式って何のため

公民科の授業について、授業実践を発信しています。

見方・考え方を学ばせる公民科の授業では、資料やグラフを読み取る課題、計算する課題を教材として用いることがある。
用語・語句を覚えるだけではなく、何を指すのか、どういう意味なのか、どんな判断学校できるか、といった思考力や判断力、スキルを身に付けさせることを目標にして授業をする。

選挙制度を学ぶ
惜敗率、比例代表制、選挙人、議員定数
計算や数字を扱って事例を検討することは有意義だ。

比例代表制のドント方式は、よく扱われる単元だ。比例代表制の当選者が決まっていく過程、議席数がどう割り当てられるか、仮にA党、B党、C党がそれぞれ、1000票、600票、300票を獲得していて5議席を割り当てる場合はどうなるか?
こんな例題を用いて黒板で順番に計算して見せる。よくある授業例だ。

比例代表ってなんですか?
獲得した票の割合で議席が配分される方法だよ。40%獲得したら、議席数も40%だよ。

なぜドント方式をおしえるの?
日本の比例代表制で採用されているからだよ。

授業はここまででいいのか?
ドント方式を教える意義ってわかりますか。

票を40%獲得したら、議席数も40%だよ。
これで比例代表の極意はつかんでいる。ドント方式で決めても大体、この通りだ。

一体、ドント方式は何のために登場したのか。
ドント式の採用でどんな問題が解決されたのか。
この問いに答えない授業なら、本質を捉えていない。語句だけ覚えさせるよりはマシだが、選挙を考える授業にはならない。

比例代表制と選挙区制の比較をする授業でも、結局は同じ問題にたどり着く。
選挙制度について学ぶ上で欠かせないことは何か。
いい選挙って何か。

一人を選出する選挙は、比較的問題が少ない。学校の生徒会長を決める選挙がイメージしやすい。しかし、アメリカの大統領選挙を見ればわかるように、一人を選出する選挙にも課題はある。国家は学校のように小規模ではない。人口は地理的に偏りがある。人口の多い地域で支持者を確保すれば当選できる仕組みであれば、人口の少ない地域の有権者は、疎外感や不公平さを感じたり、選挙への関心が低くなったりする。

議会の議員を決める選挙、すなわちある程度の人数を選ぶ場合、もっと問題が生じやすくなる。地域をどう分けて選挙区をつくるか。議席数はいくつがいいか。

キーワードは、公平性と死票

選挙の課題は、公平性をどうやってつくるか。せっかく投票した票をできるだけ死票にしないようにするにはどうすればいいか。有権者が選挙結果に納得できる制度でなければ、国民は主権を委ねられない。選挙は民主主義の根幹であり、国の安定に関わる。公民科の授業は、この本質を捉えてするべきだ。ドント式の計算を教えるだけで、済ませてはいけない。


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