治る道筋と長期化する理由
治る道筋の意味がわかない。
東洋医学の臨床現場で、治療しているこちら側からは見えていて、治療されている患者さんには全く見えないのが「治る道筋と長期化する理由」です。
コロナ後遺症においての治療の道筋は、処方集にあるフローチャートで確認できます。ですが、なぜあれがあの経過を辿るのかが全くわからないのだと思われます。そりゃそうです、東洋医学のシステム自体がわからないと、治る道筋がどうしてああなっているのかが全くわからないはずなのです。
時々面白いなあと思うのですが、西洋医学の処方薬を飲むときにメカニズムをしっかり理解して服薬する人がどれほどいるのだろう?と。長期化する・慢性化する病の場合にも「仕方がないのかな」と通院を続けますね。
ですが、東洋医学の場合はかなりの確率で「どうして?」と聞かれるのです。納得がいく説明が欲しい、と……わかりました、説明してみましょう。でも、医学は医学なんです。なので、術語が結構出てきます。それでもいいですか?
温疫論の膜原と半表半裏
処方集に、
「「余邪」の概念は、明代末期の呉有性『温疫論』に見える考え方で、半表半裏の膜原(まくげん)と呼ばれる「経絡と胃が混じる部位」に病が治っているように見えてもいまだに余の邪が潜んでおり、完治していない……とされるものです。」
と書きました。ここに、後遺症の原因となっている「湿熱邪」が入り込んでいると考えるのです。
ここは、わかりやすい体表面や、臓腑経絡内ではなく、その両方の隙間みたいな場所であると考えられていて、東洋医学の診断法である四診で見えにくいところだと考えられています。ですが、「疫病」で特に「温疫」であればここに邪がいると考えるべきだとされている場所なのです。
ですので、一回、爪楊枝鍼を使ってやると、見えやすい「胃」のところに邪が移動し、これにより舌に黄苔が発生してくるのだと考えられます。同時に舌が一気に浮腫み出す人・舌下静脈が一気に浮かび上がってくる人がいます。これは湿熱邪の湿気がとても多い場合だと考えられます。この時、一気に浮腫み出す人・黄苔が極端に多い人は、元々体内に湿熱邪を溜め込んでいた人だと考えられます。
また、舌が甚だしい紅色の場合は、熱邪が多いことを示し、これもひょっとすると元から熱が多かった人の可能性が高いです。
元々湿熱の多くなる生活
いわゆる「不養生」が湿熱を作り出してしまいます。でも、日常的にこれが多いからといってはっきりとした不調としては感じられない場合がほとんどです。今回のコロナに関していうなら、本当に元の生活習慣によって体内にどのくらい湿熱を溜め込んでいたかによって、治るまでの時間が決まっている感じです。
・アルコール、甘いもの、脂っこいもの、味の濃いものの常食
・炭水化物の過剰摂取
・ストレス喰いなどでの各種食物の過食
・野菜不足
・運動不足
・遅寝遅起きなど不規則な睡眠習慣
あたりのどれか、ないし複数が当てはまる場合、セルフケアで治るまでの日数が長くなる傾向が見られます。また、元々持病があって瘀血・黄苔が発生していた場合も同様に長くなる傾向があります。
なので、一度罹患した人・一度も罹患したことがない人共通で後遺症を起こさないようにするのに必要なことは、日頃の養生……なのです。
湿熱邪を追い出す
追い出すには爪楊枝鍼で少しずつ動かしていくことになります。(一気に動かすには専門家の監視のもとにある種の漢方を使っていくことになりますが、それにはここでは触れません。)追い出し切らないと、通常の状態に戻せないのです。ですので、元から溜まっていた状態の人は、長い道のりになってしまうのです……。
実は、この湿熱邪、多く溜まっているとコロナ自体が悪化しやすいと考えられています。肥満や糖尿病を基礎疾患として持っているとコロナ自体が悪化しやすいというデータがありますが、東洋医学的にはそれらが脾胃の湿熱が原因として起こる病だと考えられているのです。体内に元々あるところにさらに上乗せした状態になるので、急速に悪化しやすいとされるのです。
また、見た目が細くても、食生活が「スタバのフラペチーノを昼食がわりに」「必ず食後にデザート」「カバンの中にチョコ・のど飴常備」など、甘いものを常食している場合も湿熱邪はたくさん溜まっています。
ということで、これら溜め込んだ湿熱邪を少しずつ出し切ることが必要なのです。
瘀血になる湿熱
そして、めんどうなのが、湿熱が溜まって体の深いところの血にまで影響を及ぼした場合です。この場合、舌診所見に黄苔・胖大舌・瘀血が全部揃っています。トリプル。湿熱邪は長期間体にあった場合、少しずつ熟成されちょっとずつ奥へ沈殿していくようにしつつ、熱を発生させていくようになると考えられています。こうなると瘀血へと変換されていくのだそうです。
さらに紅舌まであればカルテットですね。上記の湿熱が血に影響して瘀血を発生、そこがもっと熟成された場合、真っ赤な舌に黄苔が乗って舌の裏には黒々と静脈が浮かび上がるという状態になるのです。
トリプル、カルテットの場合、処方集にあるフローチャートがもっと複雑化していきます。
・トリプル
黄苔を消すのに爪楊枝鍼をするとむくみ&瘀血に変換される。
↓
瘀血を消すのに処方を下すと黄苔&むくみに変換される
↓
黄苔を消すのに爪楊枝鍼をするとむくみ&瘀血に変換される。
↓
むくみを消すのに爪楊枝針を処方すると黄苔&瘀血に変換される
↓
repeat!
・カルテット
黄苔を消すのに爪楊枝鍼をするとむくみ&瘀血に変換される。
↓
瘀血を消すのに処方を下すと黄苔&むくみに変換されて熱が上がる
↓
黄苔を消すのに爪楊枝鍼をするとむくみ&瘀血に変換される。熱は下がる。
↓
むくみを消すのに爪楊枝針を処方すると黄苔&瘀血に変換される。熱は上がる。
↓
repeat!
これが、かなりの間続きます。爪楊枝針は体表面に作用しているので、深いところにある瘀血や凝り固まった水滞である痰濁の強いものを改善させるにはかなりの時間がかかる上、少しだけそれらが動いた時に不快感が増すんです。
いかがでしょうか?
こんなふうな経過をたどり、皆さんは現状の病態に行き着いていると考えてください。
子供らは親に管理されているのと、大人と違って陽気が多いため、少し刺激してやれば改善を見ることが多いです。なかなか改善を見ない小児の場合、掴みきれていませんが、何かしら生活習慣ないし生まれつきの性質が絡んでいると思われます。
サポートしてくださると、多分さらに私のマッスルがスマイルすることでしょう。