彼は私が大学2年生の夏に空へと旅立った。 彼との出会いは、かなり過去へと遡り、物心つくころには一緒に祖母の家で遊んでいた。彼はすぐに人を噛むため、私の母はしつけをするも噛む癖はなかなか抜けなかった。 エピソードを挙げれば、いくつか思いつくが私は彼に会うことができて本当に良かったなと感じる。なんてったって、妹の初恋相手でもあるのだ。小学生の夏休みは祖母の家で過ごすことが多く、必然的に彼と過ごした思い出もたくさんある。 夏の夕立で雷が鳴り響き、彼は不穏な暗い空を見上げて尻
電車の窓から光がさしこみ、私たちを照らしていた。 朝5時過ぎに乗り込んだときは、ひと気がなく私たち3人だけの世界のようだったが電車に乗ってから、時間が経つと徐々に乗客も増えてきた。 私たちは電車に揺られながら、ゆっくりと流れる時間を過ごしていた。 「晴歌、朝ごはん食べないの?」 右隣に座っている唯が駅のコンビニで買ったパンを頬張る。 「私はいいや。お腹空いてない」 私は左隣りに眠っている美波を見る。朝が弱い美波は、電車に乗って座席に座るなり夢の世界へと入