【前編】DAO運営の課題とは。コミュニティビルディングのあり方から理解する
DAO (Decentralized Autonomous Organization)は、ブロックチェーン上で実行されるツールを共有しあい、ミッションを中心に組織されたグループ、コミュニティのことである。
既存の株式会社と組織形態が異なることでそのガバナンス問題も大きな課題とされている。
前編ではDAOを運営する上での課題を体系的に整理し、
後編では新たな市場を支える技術者にイノベーションの中核となるエッセンスを聞きながら、解決策を解説する。
DAOのコミュニティビルディング
DAOは非中央集権に稼働するBitcoinの仕組みに感化され、2015年あたりからEthereumコミュニティで用いられはじめた概念だ。
複数の主体が「分散的(Decentralized)」に関与しながら「自律的(Autonomous)」に機能する「組織(Organization)」は従来の組織のような紙とハンコで行われる契約をスマートコントラクトで実装し、ミッションを解決していくためのコミュニティである。
上図表は分散的コミュニティをどのように育んでいくかのプロセスを表している。
1.最初は中長期的にDAOに貢献してくれそうな人にその存在を知ってもらうフェーズ。他のプロジェクトとのコラボやエアドロップ、メディアへの露出を通してその認知を高めていく必要がある。
しかし、情報社会の中でユーザーの注目を集めるのは一筋縄ではいかない。エアドロップやファーミングなどの金銭的インセンティブを強調するだけで内的動機が育つのか、というのもひとつの論点になるだろう。
2.第二段階で中長期的に貢献してもらえそうな人たちとの関係を深めていく。せっかくこのコミュニティと関係性を持ちたいと思っても、何をすればいいのかわからなければ去っていってしまう。参加のハードルを下げ、まずは気軽にできるタスクレベルに落とし込むことが重要である。
3.DAOを株式会社に照らし合わせた場合、トークン(株式)を保有しているユーザーは株主であり社員にもなりうる。しかしながら、株主としての振る舞いをするホルダーばかりになってしまうとコアチームが運営する株式会社と変わりない。理想のDAOは社員として働ける環境が整備され、そうしたコミュニティメンバーが増えていく工夫をすることだ。
DAOの目的による特色
すでに世界にはいくつものDAOが乱立しており、その目的によって性格も異なる。
例えば、DeFiプロトコルが運営するようなDAOは経済的インセンティブによって参加者が集まるため資本形成が容易である中で、共通の社会的課題を持ち合わせたメンバーではないので民主主義的な投票で方針を決めずらい。
その一方で、Social DAOのような共通の関心を持つメンバーで構成されたDAOも存在し、意思決定やコミットが強くなる傾向があるもののインセンティブが弱いため参加者が限定されがちになる。
DAOのガバナンスをどのように攻略するか
DeFiプロトコルのDAOでは行動の報酬としてガバナンストークンを配布する施策が主流となった。
ブロックチェーン上で不特定多数のユーザーから一意の個人を追跡することができ、さらにトークンという資本を付与することができるという革新があったことで実現したモデルだ。
しかし、これは短期的な外的報酬しか生まず継続しずらい。
前述した第二段階で見える形で報酬を提示する仕組みと、外的報酬ではなく内的報酬をいかに作っていきユーザーが自律的に関与してくかが重要である。
(後編に続く)