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【R&Dチームから #1】 マイナンバーカードを活用して、委任・クアドラティック・クオータ制など「未来の投票」を本格的に実装する

株式会社Liquitousは、「⼀⼈ひとりの影響⼒を発揮できる社会」を⽬指し、オンラインの参加型合意形成プラットフォーム「Liqlid」の開発、導⼊・運⽤⽀援、定着化⽀援までを⼀気通貫で⾏う「市⺠と⾏政の間のコミュニケーション・エージェント」です。

現時点では、埼⽟県横瀬町・⾼知県⼟佐町をはじめ、連携協定を大阪府河内長野市・千葉県木更津市などと締結しながら、複数の⾃治体でLiqlidの実証/事業導⼊を進めています。

現時点のLiqlidに搭載される機能の活用ケース

「Liqlid」には、大きく分けて6つの機能があります。

  1. アイデアを出す

  2. (アイデアを複数個選択し、たたき台を設定して)プロジェクトを作成

  3. (プロジェクト内で、たたき台をもとに)議論する(チャット)

  4. (プロジェクト内で、たたき台について)修正する(修正提案の投稿)

  5. (プロジェクト内で、たたき台について)投票

  6. 結果の表示

現時点で、自治体の皆さんと一緒にLiqlidを活用する際は、上記のうち、「1. アイデアを出す」から「4. 修正提案の投稿」までの活用が大半で、「5. 投票」を機能として利用しないケースが大半です(弊社は、全ての機能の利用が必須としてご提案しているわけではありません)。

一方で、私たちLiquitousとしては、上記機能の「5. 投票」についても、さまざまな可能性があると認識しています。

もちろん、「投票」と言っても、あくまでも「Liqlid」というツールの中の1機能です。既存の公職選挙や住民投票を直接的に代替するものではありません。同時に、「Liqlid」に参加している皆さんの意向を正確に調査する機能として、有効に活用できると考えています。

Liqlidにおける投票機能の概観

もちろん、Liqlidにおける「投票」機能について、既に機能的な開発・実装はすでに完了しています。本稿では、その一端をご紹介できればと考えています。

Liqlidにおける投票機能は、大きく3つの観点から整理することができます。

  1. 1票の重み付け(1票のみを投票できるor複数の選択肢に等価の票を投票できるorクアドラティック投票*後述)

  2. 投票権の所有者(従来の投票 or 投票権の委任*後述)

  3. 投票結果の公開の有無(公開投票 or 秘密投票)

Liqlidにおける投票の設定画面

Liqlidでは、上記3つの観点から、特定のプロジェクトにおける投票の諸条件を設定することができます。

なお、クアドラティック投票とは、自らが持つ票を任意の割合で複数の候補に分割して投票できる投票システムになります。各選択肢に投票した票の乗数の和が、常に一定の数字以下になるようにしなければなりません。このシステムは、一般的な複数選択肢への投票と同様に、例えば賛成・反対の二元論に帰着させるなく、個々人の価値を投票結果に反映させることを実現しつつも、一般的な複数選択肢への投票よりも、分散して投票ができることで、どの選択肢にも票が入り、「物事が決まらない」状態を抑止することができます。

また、Liqlidでは、投票権を委任することもできます。
これまでは、何らかの投票で自らに投票権を与えられたとしても、例えばその投票で問われる命題が、自らにとって直接的に関係のない、あるいは自らに判断に足るだけの経験/知識がないと(自分自身が)判断した場合には、闇雲に投票するか、はたまた投票権を行使しない、つまり棄権するしかありませんでした。一方、投票権を委任することができれば、闇雲に投票したり、棄権したりせずとも、自分の投票権を活かすことができます。
自分の投票権を他人に委任できるという概念そのものは、間接民主制・直接民主制のハイブリッドであるとも評価できるでしょう。

Liqlidの投票機能の発展ーマイナンバーカード搭載の基本4情報を活用して

日本国では、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づき、マイナンバーカードが発行・配布されています。そして、マイナンバーカードには、ICチップが搭載されています。

マイナンバーカードのICチップ(の中身)は、必須事項領域と空き領域に分かれています。
このうち、必須事項領域には、4種類のアプリケーションが搭載されています。4種類の中の1つに、券面事項入力補助アプリケーションが存在します。
券面事項入力補助アプリケーションとは、マイナンバーや基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)が、テキストデータとして記録されていることを指します。

つまり技術的には、マイナンバーカードを用いることで、(マイナンバーそのものを取得することなくとも)基本4情報を個々の利用者から取得することが可能となります。

個人情報保護等に適正な対策を行なうことは言うまでもありませんが、Liqlidにサインアップする際に、マイナンバーカードを用いた認証を必須とし、基本4情報をLiqlidの運用に活用できる状態となれば、例えば、「世代への委任投票」や、「男女の票の総数が1:1とする状態を作り出す投票」なども実現することができます。
これらはあくまでも概念的な整理の範囲を超えず、公共政策学や政治学、行政学、社会学的な観点からの評価を欠かすことはできません。しかし、いずれにせよ、技術的に実現することは可能なのです。

また、マイナンバーカードのICチップの空き領域に、例えば関係人口をIdentifyするシステムなどを搭載して、eKYCができるようにすると、さらに可能性は広がります。

実は、弊社では、すでに外部のマイナンバーカードを用いた個人認証基盤を提供する事業者が開発したAPIを利用する形で、弊社内にマイナンバーという機微な情報を保持せず、基本4情報についてはハッシュ化するなどして個人情報を直接取り扱わず、Liqlidへのサインアップにあたって、マイナンバーカードを利活用して認証を行うシステムのPoCを進めています。実際に、この認証システムを実社会に提供するまでには、まだしばらく時間を要します。ただ、今回は1つのアイデアとして、紹介させていただきました。

(文責:株式会社Liquitous R&Dチーム)