汎用東北弁における助詞「さ」についての一考察

 来る日も来る日もTwitter中に労働が邪魔をしてくるのが鬱陶しくて仕方ない私であるが、先日、あるツイートに対し、津軽の血が騒ぎ、居ても立ってもおれず、次のようなツイートをした。

 リファレンスされるツイートは当該アカウントの名誉のため割愛するが、「『この国に出ていく』」という部分を説明するために当該部分のみ抜き出すと、「オラこの国さ出ていぐだぁ」という文言である。某二次創作小説で津軽弁の監修を行った経験のある程には津軽弁警察であるところの私は、明け透けに言えば、これに憤った。津軽弁における助詞「さ」の使い方の誤りに辟易していたのである。

 上記のような「さ」の用法は、実際の所、所謂「東北弁らしい文」の中で普遍的に見られるように思うが、読者諸君の印象はどうだろうか。「うんうん、よく見るよね」と共感して頂けることを祈っている、そうでないとこの話は先に進まない。

 今日日ソースが「教えて!Goo」というのも困った話ではあるが、私と同じ違和感を抱えていた人物による投稿があったので、参考にされたい。

 例に挙げられている『「東京に住む息子さ帰ってきた」「リンゴさ食え」』が、まさにこのことである。

 津軽弁における「さ」は、現代語の「へ」「に」と同様、目的や到達点を現す格助詞であるが、どうも非東北方言話者は(ともすれば東北方言話者であっても、津軽弁話者に対しては)何でもかんでも「さ」を付けておけば東北弁ないし津軽弁らしく聞こえるようである。だが、実際には「が」や「を」の代わりに用いることは一般的ではない(上記URLで指摘されているように、一部で用いる方言が存在するようである。情報求む。また、格助詞ではなく間投助詞なのではないかという意見もあり、私は今の所これを支持している。詳細については後述する)

 さて、ここからは件の私のツイート及びその後の連投について、興味深い意見が寄せられたことについて、紹介していく。


「あんたがたどこさ」の「さ」の印象があるのではないかという指摘を、私は興味深く受け取った。

「あんた方何処さ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ」……「船場山には狸がおってさ それを漁師が鉄砲で撃ってさ」……と続く、知らぬ人の居らぬ手毬唄である。

https://twitter.com/lp_announce/status/993529224483880966

「あんたがたどこさ」について、更に理解を深める指摘を頂戴した。熊本弁の「くさ」の派生であるとする意見である。「くさ」について簡単に調べたところであるが、主に強意・強調の効果があり、要は間投助詞の一種と取ることが出来る。

 その後も幾つかリプライを頂戴し、考察は進んだが、話の簡略のため割愛する。眠いのではない。

 これら、頂戴した情報を元に、「どのような経緯で『さ』を濫用する東北弁らしき訛りが発生したか」という命題に対して仮説を立てるとするならば、「様々な方言に用いられる間投助詞『さ』が巡り巡って『訛りというもの』のステレオタイプとして定着し、特に東北弁のイメージと結びついた」と考えられる。

 当方としては、この仮説を引き続き検証していくために、各種資料に当たっていく所存である。同時に、この命題についての読者諸氏の意見や参考資料も募集したい。

 ここでの投げかけが、全ての汎用東北弁にイラッとくる東北方言話者にとって力添えになるものであれば幸いである。

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