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【エッセイ】平凡だけど愛おしい1日 

絵に描いたような空を見た。
最近、太陽が眩しすぎて空を眺めていなかったな。

そう思って眺めた空はやはり美しかった。
表裏があるかのように。

この日本の美しさは遥か昔から続いてきて、土地が生まれてから歴代の人たちが見てきたのだろう。
いくら街並みが変わろうとも日本から見えるこの美しさはきっと同じなんだと思う。

と、思えるのも約6年前からの話。
ただ綺麗だと思っていても、この目の前にある世界が、如何に有難いことで尊い、恵まれたことなのか。

小さい頃はただ純粋にこの世界を楽しんでいたなぁ。
いつからか、世界の常識に飲み込まれていった。

人間というのは、産まれる前に学んだことも生まれる使命もこの両親を選んだことも何もかも、産まれてからは忘れてしまうのだろう。
この世に生きている上で、忘れなければもっと順調にいって、いわゆる親ガチャや不幸という言葉が生まれるようなこともなく、人生が進むと思ってしまうかも。
でも、それでは意味がない。
結局のところ、人間というのは当たり前や平凡になると飽きてきて、その有り難みを忘れていくのだ。
だからこそ、思い出すためにも学んで気づいていく人生になっているんだろう、と思う。

誰かを否定するわけでもなく、強制しようとするわけでもなく、ただこの世界、日本に生きている今を楽しみたい。
今、出会っている人、場所、空間、やること、その全てが今しかなくて愛おしいことだと感謝していきたい。

最近そう思えることがとても愛おしいことだと感じる。
幸せだと思う。

数年前。
怒涛の勢いの中、バカ真面目に一生懸命に真正面から突っ込んで生きていた。
もうこんな人生、こんな世界辞めたいとも思った。
愛のない、自分のことしか考えない人、欲ばかりの世界はもう真っ平らだと思った。

「良いなぁ。勝ち組じゃん。」

人間というのはキリがない。
妬み嫉み嫉妬。どれだけすれば気が済むのか皆目見当がつかない。
これではまた同じ繰り返しではないか。いい加減、気づく世界でありたい。

と、このループにハマってしまうとまた変な焦りや他人のことが気になり始めてしまうからやはり、全てが今しかなくて愛おしいことだということをしつこいくらいに噛み締めていこう。
これが噛み締められるのもこの世界に生きているうちだと思うから。

そう思いながら外を歩いて、顔を上げると太陽が暑くてジリジリ刺さり、湿気の空気に岩盤浴しているかのように汗が溢れ出てくる。
下から上がってくる熱で、いかにもコンクリートが岩盤浴化を進めているように感じる。
普段の岩盤浴の良さはすぐに温泉に入れて汗を一旦流せることだとも痛感もする。そしてまた、自然の凄さと有り難みを感じる。同じコンクリートの上でも川沿いにいくと一段と気温が下がる。
川と木の凄さに圧倒され、「これが大地の宝か。」
なんて偉そうなことを感じたりもした。

ミーンミンミンと蝉の鳴き声が澄んだ空に響き渡る。
「夏だ」
そう感じられる空気感というか趣が、懐かしさや、いろんな思い出も思い出させてもくれる日本独特な感じがして好き。

風がなびくと鳴り響く風鈴の音。この音を聞くだけで涼しさを味わえるのはなんと粋なんだろう。ガラスの風鈴は、江戸時代中期に始まったと聞くが、夏のその情景を想像するだけで楽しくなる。あたかも自分がその時代、その場所で生きていたかのように。

私の魂が巡り巡って今、私の元に来てくれているならばこの長い人生最後でありたい。
そう考えるとこの残りの人生、どんな出来事も楽しんで悔いのないように生きる選択肢しかないと思う。今までのわたしがやりたくても出来なかったこと、今私がやりたいこと。全てに身を委ねて、最後にトータルで見た時にこの魂の人生は充実していて素敵だな、濃いなぁなんて笑える物語で完結したい。
今、たった20年弱の人生でも、生まれてから19年間は波瀾万丈というか紆余曲折、ズタズタにどん底も頂点も、この世界の精神をぎゅっと詰め込んだように濃くて重い時間だった。
このど真ん中にいる頃の私は相当辛くて大変だったが、今それを超えて俯瞰して辿ってみると、その頃の私が全身全霊で向き合って生きてくれたからこそ、その時代の執着や陰念が今さわやかでいられる。

目の前に広がる景色をただ漠然と眺めていると、
この木や空や土は精神的に大人なんだと浮かび上がってくる。彼らの懐が桁違いに大きすぎるというか。
そこにただ1人の人として決まった期間、居させて貰っている。というだけなんだ。

この決まった期間、たくさんのことを経験するだろう。嬉しいことも悲しいことも。運命の人にも出会うかもしれない。
時勢という言葉がある通り、この世界にはその時々の流れがある。その時出会うべき出来事、人や仕事がちゃんとあらわれる。
だから流れに身を任せて待とうと思う。
目の前に広がる景色をただ漠然と眺めているように。この世に吹く風を感じて。
自分の鼓動を感じて。

そしたらきっと、私自身もこの地球や日本も、この世に生きている人たちも笑顔で物語を更新していけると絵に描いたような空を見て思った。
今はまだ表裏があるかもしれない。
だけど、これからはきっとこの美しい景色のように人の心も美しくなっていくのだろう。
どんな表裏の裏と思えることが起きたとしてもまた一歩進み続けていけるのだろう。

まだ、まだこれから。

むしろこれから。

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