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2021年度アカデミー助演女優賞受賞。 『ミナリ』のおばあちゃんが世界をノックアウト! ★LIPカルチャー部

難民・移民について学べるカルチャーを、メンバーがピックアップするこの連載。今回は、1980年代のアメリカに移住した韓国人一家を描き、本年度アカデミー賞でも注目された映画『ミナリ』の魅力に迫ります!

◆孫に「韓国くさい」と言われようが、おばあちゃんは元気!

映画の冒頭シーン。アメリカ南部の長閑な農地が広がる映像は隅々まで美しく、アメリカ人でなくても移民でなくても、懐かしい気持ちでいっぱいに。そこから決して派手ではない家族のストーリーが展開しますが、あっという間の2時間でした。それはきっと、韓国から娘のために遅れて渡米したユン・ヨジュン演じる”おばあちゃん”が、とんでもなくパンチが効いてるからでしょう。

このおばあちゃん、独特の図々しさと明るさで、あっという間に新しい暮らしに馴染んでいきます。アメリカ生まれの孫に「韓国くさい」と言われようが、イタズラでおしっこを飲まされようが、なんのその。年の功ってこういうものなんだ、ていうかこのおばあちゃんに人生相談してみたい!と思うほど、ユン・ヨジュンは観客を引きつけます。助演女優賞を受賞したのも納得の演技。人種や国境を超えて、「これぞああ懐かしい、おばあちゃん!」という人物を見事に作り出しているのです。

さて、物語の終盤、いよいよ家族の絆は試されます。これはもうダメかというときに、おばあちゃんが取っちゃった行動とは!? えええー!?!? という驚きの展開なので、機会があったらぜひ映画をご覧ください。

◆移民問題が”自分ごと化”されるような物語の力

『ミナリ』は家族の絆の物語であり、そして韓国人一家の「アメリカン・ドリーム」の物語でもあります。韓国からアメリカへの移民の波は、①米朝修好通商条約締結による1903年ごろ、②朝鮮戦争終結後の1950年ごろ、③米国移民法改正後の1965年ごろの3回に分けられます。アメリカは在外韓国人と韓民族が最も多い国であり、2010年の米国国勢調査では、韓国系アメリカ人は米国総人口の約0.6%を構成する約170万人です。

……とWikipediaの情報を共有してみましたが、ピンと来ませんか? ならば繰り返しますが、ぜひ『ミナリ』をご覧ください。映画で描かれる、農園主を夢見ながらひよこ工場で働いて日銭を稼ぐ夫婦、教会デビューしたら「なんでそんなに顔が平面なんだ?」と聞かれて答えに詰まる息子、タイトルに掲げられるミナリ(セリ)の種を、アメリカの地に蒔く祖母……。

登場人物ひとりひとりの物語に観客はスッと感情移入でき、「もし自分が移民だったら」と想像する人も少なくないのではないでしょうか? 

映画で描かれる家族の誰かに自分を重ね合わせ、「自分/他者」、「自分ごと/他人ごと」の境界線が崩れていく。そして移民問題に自然と興味が湧いてしまう。エンターテインメイントが持つ物語の力ってスゴイ! そう改めて思わされた作品でもありました。

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執筆: 高橋 京子(Living in Peace)

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