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ショートショート 『穴』

何だか最近 完全になると円に成るんじゃないかと思いついた。

いや、多分生まれた頃は完全でそこからどんどん欠けていくんじゃなかろうか。そんな気がしたのは人の言葉が吹き出しに入っているようで、カサカサと歩いている気がするのを見てしまったことによる。

影は吹き出しをメモを散らし落としていくように人々の思考を丸い付箋のように貼り付けている。

完全になりたいと、私は思った。この命がけで生きてきた絵画に対する思いに本当に瀕死になって、または呪いに近いものはもう物心ついた時から始まっていたしずっと穴を求めていたのかもしれない。しかし、そこが私の住みかでもある。そこに誕生したのだ。人は皆穴の中にいて繋がっている。そんな気がする。地底とは言わない。それは漂うものなのだ。

そこを侵入しよう、または覗き込もう、穴から私が鋭いパレットナイフで威嚇する前に自分の方が穴が大きくて未知だと、同一の穴を重ねそのどら焼きのような構造でいうと上の部分を意識された、またはそう見えてしまったトリックに私のすみかの穴はいびつに揺れてしまうのだ。

もうやめてください。 そんなことを言いたくなる。命をかけてそれをしなくてもいいけれど、命なんです、私の住んでるところにどうか蓋をしないでくださいと、蛙となって怯えてしまう。その平穏な真円に見えるすごく近くなって観察してくるものが不動であればあるほど強いとその穴は知っているので、私が命をかけたことよりももっと他の計算に助けてもらっているように思える。このことがとても自分が小さいものでゴミのように思える。真円に見えるような穴が私は恐ろしく怒りを自分の範囲全体に溜めて自己を破壊してしまいそうになる。それがその真円のような穴の策略ではないかと蛙の頭にとまったゴミムシがそそのかすのだ。

しかしそれは真円ではない。計算師の仕業だ。その穴はなんとかかんとかそこにいるので少しかわいそうにも思える。きっとそのふちを見せておくことが防御なのだろう。

ああ 穴を掘りたい。正円の 月食の完全になった瞬間のように明るく暗く皆が空を見上げて何を考えているのかわからない 校庭の上のポツンとした黒い丸い影のように。

空間に漂う円 孔 穴 丸   これらは私たちの生きることの本質であってそこいらじゅうに存在しているけれどどら焼きのあんこが見えないように見えない。できればどら焼きの上になりたいけれど、それには生涯をかけて粒状の円の配列から考えて産卵も卵子も眼球も、すべて丸くして壁を破壊しなければ、眼球の奥を見てごらん。眼球の。それは穴を映し出すセンサーだ。 蛙に誰かがささやいた。暗闇に現れたのはバッタだ。

ほら、とべるだろう 跳んでみろよ そう言ってスタイリッシュなバッタは人を小馬鹿にしたような顔で、しかも口が鋭く牙があり今にも食いちぎられそうだ。恐れおののいた私は思い切り出来る限り跳躍をしてみた。

ただ穴から他の多角形らしい自分の穴よりいびつな穴に移っただけだった。ちくしょう。ちくしょうちくしょう。あいつが羨ましい。自分の体が軽くなりたいと私は涙した。しかしそこの位置から見えるものがあった。

いびつなある平面にウミガメがいた。卵を産んでいるように見える。

そうか、産卵から始めなければならない。そう気付いたんだ。けれどその時はもう遅かった。残念なことにイタリアン食堂でエスカルゴをフォークに刺した時思いついてフォークの先を胸に突き刺した。

これは受精だ。痛みという受精だ私は憎しみを産むけれどそれが割れたなら。。。自由だ!きっとそれが、痛みから産まれること。それが完全なんだ。球体だ。全てそれでできている。網目のように張り巡らされた全ての産卵の卵に映るもののまたその卵!この先を行けばきっと割れた場所が私だ!!つかの間の妄想だった。

世界は薄い地図でできている。さまざまな空間に層のようになって札束に言うとキャッシュで30万円引き出した時くらいしか想像が届かないけれど。札束、、いや積み重なっているのだ連続して、コインカウンターのようにほら、そうだった。ケーキも銀貨も銅貨も丸いんだ。重なっている。とてもそれは原始的な貨幣の原型じゃないのかな。それが世界だ。なんだそうだったんだ。あはは 私は笑った。


もうその時には脳が感じられるだけの空間認識としての穴から穴へギュンギュン落ちていっていた。または高速で掘っていたのかもしれない。絵描きの最後の叫びだった。私は蛙になりこの他空間に落ちてどこにも出られない。あいつ、真円の中のやつ、計算師を見つけたから、私はバカだから、この何か見えない穴を理解してしまうことがこんなに恐ろしいことだと思わなかった。

ただ月蝕や日蝕のように美しい軌道にいたかったんだ。ひまわりの花の種のように完全になりたかった。この見えない空間はフラクタルであり壁など存在しない。それは膜のようなものだ。卵と卵を繋ぎ止めている網のようなもので、、、それは私一人には全く関係なく、ただ完全を目指せば良いだけの 簡単な当たり前の話だった。

人の話に戻そう。人は見た目ではわからない。その人が自分の目に映っている。それは虚像であり、その周囲には幾つもの争いとマグマが存在している。それは小さいレストランのテーブルの上の取り皿のようでもあり 銀河系の写真で見る美しい円盤の連なりと同じなんだということだった。

私は完全になりたかったけれど、少し欠けていた方が逃げやすいかもしれないね。そうやって、小さな丸い卵から産まれて生きられないカイコガが指にとまって、こっちをつぶらな丸い目で見てくれたら 幸せだろうになあ。

沈んでいく。丸い円の中へ。孔の中へ。球の全体へ。這い登っていく。その感覚には名前がない。これから私が与えるのである。ううむバベルの塔が実はパノプティコンの原型だったら、、みんな罪人は散り散りに、、なんて意味のわからないいかにもそれっぽいようなことをつぶやいてみたくて、馬鹿らしくなって自嘲する。

そうさ、だから命をかけているものに、またはかけていたものに。うかつにその様子を観察しながら覗いてはならないのだ。真正面で生きろ。そうしないとと大切な人の幸せな時間を台無しにしてしまうよ。と、カエルの自分に言い聞かせて、今日は自分だけが永遠に落ちないように紅い月の光を目印に蛾が舞う炎舞の夢を見る。

end

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もう今までで一番わからないものでしたがもっと面白く書けたらいいなと思いました。万が一読んでくれた人がいたり通りすがってくださった方に感謝します。もうちょっとまとめたいです。 今日は終わり。

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