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SM小説「路上の恋文」⑧解放


頼れる人

敦司は何も言わずに部屋を出ていき、30分ほどすると戻ってきた。

「浅ましいアナルオナニーした挙げ句、アナルにペニスを挿れられてヨガってたところの動画を取ってきてあげたよ。誰にこの痴態を送信する?必ず一人に送信するから選ばせてあげる。」

そう言って麻美にオナニーショーの動画を見せてから、LINEの友達リストを見せた。

淳司を理解し始めた麻美にとって、反論や嘘は通用しないことは百も承知だった。怒らせてしまってはさらに事態は悪化し、選択肢が無くなっていく。麻美は与えられた中から最善の選択をしなければならいことを瞬時に理解した。

家族はダメ、地元の友達もダメ、会社の同期もダメ…どうしよう…簡単に決めれるようなものではなかった。

「さっさと決めて!それとも僕が勝手に選んでもいい??」

追い詰められた麻美は急いで答えた。

「ほ、本田さんでお願いします。」

本田。

本田 隼人。

隼人とは疎遠だし、ひょっとしたらブロックされているかも知れない。そして、過去のこととは言え、麻美と隼人の間には強い関係があった。そんな勝算が麻美にはあった。

「本田?本田隼人ね。誰これ?男だけどいいの?変わってるね。あ、すぐに既読付いたよ。」

麻美は驚いた。まさか既読がすぐに付くとは思っていなかったからだ。隼人から返事が来たらどう言い訳しようと焦った。しかし、5分経っても隼人からLINEの返事は来なかった。麻美は内心ホッとした。

「なんだこいつ。折角面白い動画送ってやったのに礼の一つも言ってこないよ。つまらない奴だな。ま、約束は約束だからね、今日のところはいいや。」

「これから、お前は僕の奴隷だ。分かったな?ちゃんと奴隷らしくしていればまた気持ちいいことをしてあげるよ。だけど、怒らせたら・・・分かってるよね?」

「はい、敦司さんの奴隷になります。これからよろしくお願いします。」

最後に敦司から3つの指示があった。

  1. 麻美のスマホは敦司がロックした状態のまま返すが、常に電源が入っている状態とし、着信があれば必ず出ること。

  2. 毎週土曜日は奴隷の務めを果たす日とし、敦司の家に10時に来ること。

  3. 二人のことは秘密とし、誰にも口外しないこと。

帰宅

監禁されていた部屋は敦司の屋敷の地下室だった。地上の扉はキッチン横の納戸の奥にあり、地上と地下はそこにある一つの長い階段だけで繋がっていた。また、その階段の途中に分厚い扉が執拗に何個も設けられていた。あそこでいくら叫んでも誰に見つけられることもないだろう。

昨日着ていた服はなく、恥ずかしいくらい短いスカートと厚手のトレーナーが準備されており、それに着替えて地下を後にした。そして、地上で履いてきた靴を渡され、勝手口から出た。

奴隷となる誓いを行うことで麻美は三十時間ぶりに解放された。

どうやって家まで帰ったかは覚えていない。ただ、とにかく早く家に帰って一人になりたかった。都会の雑踏は麻美にとって不快なだけだった。麻美は無意識のまま自分の家まで辿り着いた。そして、家に着くと同時に泣き崩れた。

やっと戻れた・・・安堵の涙だった。

これからの私、どうなっちゃうんだろう・・・どうして私がこんな目に合うのか?
警察に相談した方がいいのか?
敦司とは一体何者なのか?
でも、実は何も被害はなかったのではないか?
むしろ感じていたのではないか?
自分がずっと求めていたものではないか?
心も身体も本当に嫌がっていたのだろうか?
敦司に全てを委ねてしまっても大丈夫なのだろうか・・・

様々な問いか出てきたが、結局どれ一つ答えられないまま時間だけが過ぎた。

ひとしきり真っ暗な部屋の中で泣いた後、麻美は落ち着きを取り戻した。そして、風呂に入って身体を温めた。自らの迷いを落とすかのように必死になって身体をくまなく洗った。乳首の傷とアナルの使われた感触がいつまでたっても残ったままだった。

ブルブルブル・・・風呂から上がり茫然としている麻美に電話がかかってきた。麻美は反射的にスマホを取った。

「今日の昼、ずっと電話してたけど繋がらなかったけどどうかした?暇だったらご飯でも誘おうと思っていたんだけど。」

幼馴染で会社の同僚でもある晃子からだった。麻美は自らを奮い立たせて、いつもと変わらない麻美を演じるのだった。

「ごめん。スマホの調子が悪くって、それに、今日は体調が悪くて、疲れが溜まってたみたいでずっと寝てた。また今度誘ってね。」

「じゃ、来週の土曜日にランチでもどう?」

「ごめん。土曜日は予定があるんだ。日曜日なら大丈夫かも。また詳しくは会社で話しましょう。」

何か変だとは思われなかったかな?大丈夫かな?この時はそう応えるのが精いっぱいだった。晃子になら相談できるかも知れない・・・そんなことも少しこの時は思った。

新たな月曜日がやってくる。

麻美は泥のように眠るのだった。

<一部・完>

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