お餅についての_おはなし

お餅についてのおはなし

先日、デザイン部でのチームランチ(ゴーリストのチームランチ制度につきましてはこちらの記事をご参照ください!)の際に「伊勢の人は、2週間に1回ぐらいの頻度でお餅を食べる」という話をしたらすごく驚かれました。ですが、実は私もちょっと驚いたんですよね。よく東京にいる伊勢出身の友達たちと「東京ってお餅の種類少なくて飽きるよね……」と話をしていたので、会社のメンバーに「そんなにお餅の話って日常会話でする?」と言われてびっくりしました。日本全国どこでも餅の話はするもんだと思っていたので、「え?キノコ/タケノコ論争的な餅論争ってないの?!」となりました。

と言うことで、今回は伊勢のお餅にまつわるいろんなことについてご紹介していきたいと思います!もし東京で美味しいお餅屋さんを知っていたら、皆さん教えてください。餡子と餅に飢えているので。


1. なぜ伊勢はこんなに餅が多いのか?

伊勢といえば、「伊勢神宮」があることで有名なのですが、江戸時代から「お伊勢参り」をするために日本全国から多くの旅人たちが訪れていたので、その方々向けの食文化が街道沿いを中心に発達してきました。例えば、伊勢の名物でもある「伊勢うどん」などもその食文化の1つにあたります。

そのため、道中に手早く食べられ、腹持ちの良いものが好まれてきたと言われています。食事を提供するお店としても、手早く食べてもらえればお店の回転率がよくなるので売り上げが上がります。双方の利点がマッチしたことで、旅人たちの道中食として「お餅」が伊勢神宮までの街道沿いに多く生まれてきたんですね。

ちなみに、三重県桑名市あたりから伊勢神宮までの街道を「参宮街道」や「伊勢街道」(正確にはちょっと違うのですが、街道の話をすると長くなるのでカットします!)と言うのですが、別名「餅街道」とも呼ばれるほどお餅屋さんがたくさんあります。

あと、これは非常に個人的な見解ですが、伊勢の人に限らず、三重県の人がお餅を好きな要因の一つとして、「下戸の甘党」も関係があるのかな?と思っています。と言うのも、「三重県生まれは下戸が多い」と言うお話があるんですね。

お酒を飲むと、アルコールがアセトアルデヒドに分解されるのですが、これらを分解して無害化するためにはアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)と言う酵素が必要になってきます。ただ、このALDHは、人によって分解能力の高い人と、低い人に分かれているんだそう。分解能力が高いのは白人や黒人に多く、逆にモンゴロイドは分解能力が弱いと言われているそうです。そして、日本でその割合を調べて統計を取ったところ、三重県の人がALDHを持つ割合が最も少なかったそうなんですね。

これで「三重県の人は下戸が多い=甘党が多い」と決まるかと言われるとそうではないのですが、「下戸の甘党」の起源から遡って考えてみると、「万里の長城建設時に、それほど寒くない平地の門(下戸)を守る兵士には甘いものを配ったという」ということから生まれた言葉だそうなので、三重県もそれほど気候変動の激しい地域ではないので、「下戸の甘党説は、あながち間違っていないのでは?」と思っています。個人的な見解ですけどね。


2. お朔日餅

さて、伊勢の人がお餅を好きな要因の1つとして考えられるのが、赤福さんが毎月1日限定で発売している朔日餅(ついたちもち)があるかと思います。地元民はなぜか「お朔日餅」(おついたちもち)とも言ったりします。

伊勢では、月の初めに早起きをして、ひと月無事に過ごせたことを感謝し、新しい月の無事をお祈りするという、朔日参り(ついたちまいり)という風習があるんですね。その朔日参りに合わせて、内宮前では参拝客をもてなすためにいろんなお店が早朝から営業しています。朝の5か6時ぐらいにはお店が開いていたような気がしますね。

そんななかでも、伊勢を代表する銘菓「赤福」を売っている赤福さんでは、毎月1日(1月は除く)に「朔日餅(ついたちもち)」を販売しています。このお朔日餅ですが、毎月お餅の種類が変わるので、地元民は「お朔日餅で何月の餅が好き?」という地元トークをしたりします。ちなみに私は7月の竹流しが好きです。

この朔日餅は、残念ながら特定の店舗でしか販売されておらず、本店では毎月1日は長蛇の列ができることでも有名です。人気のお餅ともなってくると、三日ぐらい前から人が並んでいたりもします。地元民は慣れていますが、他県の人が1日にやってくると、長蛇の列を見てびっくりしてますね。


3. 赤福VSへんば餅論争

これは本当に地元トークになるのですが、私の周りでよく聞くのが、「赤福とへんば餅どっちが好き?」という話題です。他県民が聞いたら「は?」という話題だと思うのですが、伊勢の人は割と話題にすることが多いように思います。

赤福は言わずもがな、伊勢名物なのでみなさんご存知の方も多いと思うのですが、いわゆるあんころ餅の一種で、お餅をあんこで包んだシンプルなものになります。一方、へんば餅は、中にこし餡が入ったお餅です。両面に焼き色がついていて、もちもちとした食感が特徴のお餅になります。余談ですが、赤福の方が知名度は高いですが、へんば餅を買うためだけに、観光バスがわざわざ「へんばや」に停まることもあったりするぐらいには人気です。

この赤福とへんば餅がなぜ地元民の餅論争の対象になるかと言いますと、どちらも美味しいということが1つ。そして、レア度が関わってきているんだと思います。美味しさに関しては個々人の好みなのですが、このレア度という観点に関しては結構な違いがあります。

赤福は駅のお土産コーナーやそれこそ赤福の店舗など、伊勢なら割とどこでも買えるのですが(と言っても、だいたい遅くとも17時には全部売り切れてしまうようですが)、へんば餅は「へんばや」でないと買えないんですね。この「へんばや」なんですが、4店舗しかなく、伊勢神宮付近と伊勢市駅の近くにできるまでは、伊勢市内の人間でも車を使って買いに行くような、ちょっと不便な場所にあったんですね。なので、伊勢中心あたりに住んでいる人ほど「あ〜ちょっと買いに行くの面倒だよねぇ」という感じだったんです。なので、誰かが買って来てくれると「へんば餅じゃん!」と喜ぶぐらいにはレア度のあるお餅だったんですね。

ちなみに、「へんばや」もお餅が売り切れるとたとえお昼間であろうとお店を閉めてしまうので、こちらも赤福同様に、ご購入される際にはお早めに買われた方が良いと思います。


おわりに

今回、お餅の記事を書くにあたって、「そう言えば、伊勢ってお餅、何種類ぐらいあるのかなぁ」と思って数えてみたら、赤福へんば餅二軒茶屋餅くうや観助餅御福餅岩戸餅太閤出世餅神代餅と8つほど出てきて「いや、多いな……」と思いました。ちなみに、上記8つのお餅は、伊勢市内で常に売られているお餅で、お朔日餅も含めると19個もの味の違うお餅を1年間で食べることができます。これに、最近赤福から発売された「いすず野あそび餅」や、志摩市で売られている「さわ餅」、四日市市の「なが餅」なども食べたりするので、おそらく三重県内に限定してもお餅だけで年間で20種類ほど食べているかと思います。「めっちゃ餅食べるやん……」と改めてなりましたね。この記事を書いていたら、お餅が食べたくなってきたので、その時の気分によってお餅が選べるように、東京でのお餅開拓を進めていこうと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?