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30歳の私へ(2020年 9月15日作成)


「20歳の私へ。アルバイトをしていますか?
それとも大学に通っていますか?」

私は2000年生まれで、今20歳である。
今年の1月に成人式を迎え、早生まれなので3月の誕生日にやっと成人した。成人式の頃はコロナウイルスの影響も今ほどではなくて、式も例年通り実施された。入学式や卒業式をはじめとした式典行事は昔から好きで、成人式も出席してよかったと思っている。人生の節目でちゃんとお祝いしてもらえることが嬉しいのだ。節目を迎えるごとに、自分の将来について考えるきっかけにしてきた。将来というのは、ちょっと大袈裟な表現かもしれない。

10年前。ちょうど10歳の時、小学校で1/2成人式という行事で、20歳の自分宛てに手紙を書いた。冒頭の一文は、その手紙の書き出しの部分だ。
書き終えた手紙は各自大切に保管して、「本当の成人式のころになったら読もうね」と、みんなで約束した。私は、保管場所として当時使っていたランドセルのポケットを選んだ。そこには、1/2成人式で両親にもらった手紙も一緒に入れおいた。

***

1/2成人式から本当の成人式までの10年間、本当に色々なことがあった。世の中で起きたことといえば、東日本大震災、テレビのアナログ放送の終了、東京スカイツリーの開業、マイナンバーの運用開始、SMAPの解散、オウム真理教・麻原彰晃氏の死刑執行、相模原市障害者施設殺傷事件、平成以降最多の死者を出した京都アニメーション放火殺人事件の発生、ラグビーW杯の開催。そして今もなお猛威を振るう新型コロナウイルス。

私個人の10年間もなかなか充実していた。
中学受験、人生の中でおそらくいちばん勉強を頑張った中学3年間、勉強も人間関係もひたすら悩んだ高校3年間、自分なりに努力した大学受験、才能あふれる同級生・先輩に出会った大学生活、そして将来に対する漠然とした不安。文字にしてしまえば何てことない、よくある学生生活ではある。波乱と、優しい思い出に満ちた大満足の10年間だった。

そういえば、10年という長い期間をまとめて振り返るのは初めてだ。改めて感じるのは、その瞬間瞬間では鮮やかに感じられた出来事も、今ではすっかり忘れてしまい、思い出すことさえままならないものだってあるということだ。過去を振り返ることにあまり意味を感じない人もいるかもしれないが、私はできるだけ正確に、その時その場所で自分が何を感じたかを思い出したい。だから私は、なるべく新鮮なうちに、その時感じていたことを感じたままに自分の言葉で表現したい、日々そう感じている。

20歳の私に宛てられた手紙は、期待したほど内容のないもので拍子抜けした。ごく当たり障りのないことが書かれていた。「20歳の私へ。アルバイトをしていますか?それとも大学に通っていますか?」という書き出しは、10歳にしてはあまりに硬すぎるんじゃないか。自分に敬語を使うあたり、クソ真面目という感じで昔も今も変わらないな。もうすこし小学生らしい純粋さを期待していた。あの頃は、大人びたことをするのがかっこいいと思っていた。今の私が10歳の私に手紙を書くなら…「10歳の私へ。小学生のくせにカッコつけんな。今頑張ってることとか、最近誰と遊んだとか、他愛もない日常を書けばよかったのに。」

両親から10歳の私に宛てられた手紙も読み返した。なかなかグッときた。父親も母親も、今の私が欲しい言葉を見事にチョイスしていたからだ。初めから20歳の私が読み返すことを見越していたのかのようだった。私ももし、将来子どもができたら、こんな言葉をかけたいなと思うような内容だった。手紙の保管場所に「ランドセルのポケット」を選んだ10歳の私も良いチョイスだ。10年経っても、手紙の場所も手紙の存在も、ばっちり思い出せた。

こんどは、30歳の私に手紙を書きたいと思う。
等身大で、肩の力を抜いて。














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