#5 第1段階【好きを求める】
八戸に帰ってまもなく、Linpは師の教えの1つである”太陽と影”をテーマにした遊んで学べるボードゲームを創り始めた。
それを創るにあたりボードゲームについて調べ始めたら、世の中にはいろいろなボードゲームがあることを知り、次々買い始めた。
Linpは昔からゲームが好きなのだ。
ボードゲームを一緒に遊ぶのは楽しいことだったけれど、
ボードゲーム以外のことをあまりしようとはしなくなったLinpに不満が出てきた。
掃除くらい手伝って欲しいな。
イライラする思いをLinpにぶつけてみるとこう返ってきた。
「師から教わった”太陽と影”の教えを理解してるつもりだったけど、自分でちゃんと実践してなかったと思ったんだ。
だからやってみることにしたんだ。」
太陽に向かうとは「好きなことをする」「心地いい人といる」「心地いい場所にいる」ということ。
太陽以外の影は一切やらないというLinp。
私にとっても家事は影なのに!とイライラした。
「イライラするのはRuruが太陽に向かってないからだよ。」
そう言われてムッとする。
でもその通りだ(ムッ)
私の好きはなんだろう。
好きかもしれないものからやってみる。
違ったらやめる。
次の好きかもしれないをやってみる。
ホットケーキミックスを使ってお菓子を作る。
昔好きだったジグソーパズルをやってみる。
好きな写真撮ってSNSに上げる。
好きな画像を探してみる。
好きな画像。
猫。
そしてウェディングドレス。
二〇一三年にパレスホテルの地下で見つけた素敵なドレス。
初めて釘付けになったドレス。
それはハツコエンドウオリジナルのウェディングドレスだった。
こんなドレスを結婚式に着れたら素敵だろうなぁ。
写真を撮って待ち受けにしていた。
ハツコエンドウについて検索する。
その歴史やドレスの数々にどんどん惹かれていった。
図書館に行って過去の雑誌にハツコエンドウに関する記事を探して読んだ。
素敵だ素敵だ素敵だーー
二〇一四年九月。
私たちは入籍した。
すると一緒に学んでいた仲間たちが結婚パーティーを開いてくれるという。
しかも私が憧れていたあのドレス。ハツコエンドウのあのドレスを着させてくれた。
動いてくれた仲間、協力してくださったハツコエンドウのみなさん、感謝してもしきれない。
自分の好きを追いかけて、その素敵さに浸っていたら、
なんだかわからないけど憧れていたドレスを着ることが叶っていた。
二〇一五年五月、猫を飼う。
動物なんて私に育てられるのか自信がなかった。
「飼ったら?」
というLinpの言葉で子猫を飼うことになった。
かわいい。愛しい。元気で遊びまわる姿に癒された。
しかし、少し食欲がなかったり、便が緩くなったりすると大丈夫かと心配してしまう。
心配し続けるという影に向いていたときは病院通いも頻繁だったけれど、
心配するのを止めると決めて、猫のかわいさ、愛しさのほうを見続けるようにしたら、病院に行くことはほとんどなくなった。
それからも”太陽に向かう”ことを二人で続けていたら、ある日突然びっくりするくらいのお金が入ってきた。
それによって仙台にいたときにできた借金などを完済することができた。
そこで今度は「心地いい場所」を見つけるため、行きたいところに行くということを実践した。
行きたい場所へ行く。
学びたいものを学ぶ。
買いたいものを買う。
食べたいものを食べる。
慣れ親しんだ範囲を超えて、今まで体験したことのないようなことにもチャレンジした。
一流ホテルの最上級のお部屋に泊まってみた。
そんなお部屋に泊まれるわけがない。
予約は電話でしかできないし、きっと断られる。
そう思って尻込みしていたけれど、やってみなければわからない!と思い切って電話してみた。
断られるホテルもあったけれど、予約を取ってくれるホテルもあった。
泊まってみるとその接客は、本当に体験したことのないような接客の数々。
前もって予定を伝えると、車の手配からレストランの予約、メニューにない料理の準備、新幹線ホームへのお迎えなどしてくださる。
ドキドキしながらも初めての体験にワクワクしていた。
二度目に泊まったときには各セクションの方々が私たちの名前を覚えてくれていて、
「おはようございます。Linp様Ruru様」
「お帰りなさいませ。Linp様Ruru様」
と声を掛けてくださった。
誕生日のときにはお部屋に戻ると、誕生日の飾り付けとみなさんからのメッセージが置かれていた。
そういえば師が一流ホテルに滞在している理由の一つには、師の元を訪れる私たちに一流の体験させてくれるということがあった。
行ったことがなければ一流の接遇を体験できないし、一流の所作も学ぶことはできない。
あちこちへ行き様々な体験が出来るのはとても楽しかった。
楽しいのだけれど、それはだんだん満足感から違和感になっていった。
一流のホテルに泊まっても、帰宅すると疲れている。
一流シェフの料理じゃなくマックが食べたくなる。
高級なスイーツの感動は一瞬。普段は板チョコをつまみたくなる。
会社員だった時も、ブランド物を一生ものと思って買っても、満足が続くわけではなかった。
自分が望むものを手にいれれば満足するんじゃないか。幸せになるんじゃないか。
そう思っていたけれど、やってみるとそれで満足、満ち足りるということはなく、もっともっとと欲は大きくなるばかり。
どこまで手に入れたとしてもとても満ちたりることはないように思えた。
むしろなんか違う、なにか足りない、といった感覚が大きくなるばかりだった。
そうして自分の外側のものをいくら得ても、満たされていない自分に少しずつ気づいていった。
#6 第1段階【本心を知る】へ続く
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