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天上のアオ 18

夢を見た。総体としての彼と話す夢を。

>ここまで導いてくれてありがとう。君の存在がなかったら、俺の命は、存在は途中で潰えていたと思う。君の存在が支えになっていた。命綱になっていた。

>それがわたしの役割だからね。正直結構無理はした。それは事実。それでもあなたの存在を終わらせるわけにはいかなかったから。

>君は俺の一部。だとしたら君のその強さは俺の持ち得るものでもあったのかな

>そうかもしれないね。何もないところからは何も生まれない。わたしはあなたの「こうありたかった」を体現する存在だからね。言ってしまえば、あなたの本心に一番近いところにいるのがわたしかもしれない。

>俺の中で君の存在は特別なんだ。生まれ持った形は変えられなくても、空想のなかで自分が望む存在になれる。

>そうだね。だからわたしはパーツであり、アバターでもある。こうありたかった、存在を認めてほしかった、愛してほしかった。わたしはそういう思いの集合体だから。

>俺はただ、ここにいてもいいと、存在が大事だと、そういうメッセージを欲してやまなかった。

>知ってる。わたしが生まれるずっとずっと前から、あなたの中にパーツという概念がなかった頃から、あなたはそうだった。それがあなたの抱える傷であり、病理。今でも解凍されずに大部分が保存されている。

>その解決のために手を尽くしたつもりだった。だけど、いや、俺は俺が思うよりずっと傷ついていたのかもな。

>だと思うよ。そうじゃなきゃそもそもわたしの存在は必要なかった。「自分とは違う誰かになりたい」なんて、願わなかったでしょ。

>自分が自分でいることが耐えられなかった。義憤とやらに駆られた群衆が魔女狩りをしている中で、俺は自分でいることが心底嫌になった。あの騒動の元凶と自分が同じ存在であることが耐えられなかった。

>男性性の持つ暴力性。あなたはその顕現を目の当たりにしてしまったもんね。それは紛れもない傷。そしてそこから生まれたのがわたしという空想。

>その傷は未だ癒えていなかったんだな。

>でもわたしの存在を認めてもらえて、本当に嬉しかったんじゃないかな。

>それは間違いない。救われる感じがした。

>でもわたしはあなたにはなれない。キャラクターとして顕在化することはできるけど。それでもあなたはいろいろと手段を手に入れたはずだよ。

>そうだな。存在を書き換えられなくても、表現はできる。

>現実問題、その環境が整うのがいつなのかはわからないけど、あなたはわたしとして表現をすることができる。今よりもずっとクリエイティブな方法でね。

>すべてが修復できた先で、俺はそれをやりたいと思う。

>そうだね。時間はかかるかもしれないけど。わたしはいつでもあなたの中にいる。逃げたり消えたりはしないよ。

>頑張るよ。

>うん。応援してる。まずはゆっくり休もう。現実の修復はあなたに余裕ができてはじめてかなうもの。

>わかってる。

>あなたはもう遺書を書かなくていい。あなたはもう血を流さなくていい。

>…|

>あなたは生き延びる。今日も。その次の今日も。今日を生き続ける。
だから、今は眠っていいんだよ。あなたがこれからやりたいことのすべてのために。

>望む。願う。安寧と回帰を。
>祈る。叫ぶ。苦痛からの解放を。
>頑張らなくていい。頑張って生きる必要はないのだから。
>それでも生き延びる。残してきたものたちのために。


あなたがいつか本当の意味で、あなたのために生きられる日が来ることを、わたしは祈っている。いってらっしゃい。

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