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【Oral care-3】【in vivo】嚥下した歯周病菌が腸内細菌の異常を誘発しNAFLDの病態を悪化させる

オーラルケアシリーズの3回目です。
今回は、歯周病とNAFLD(nonalcoholic fatty liver disease)との関連に関する論文をご紹介いたします。
「Oral Pathobiont-Induced Changes in Gut Microbiota Aggravate the Pathology of Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Mice」
▶論文情報
Front. Immunol., 11 October 2021
発行日:2021年10月11日

▶概要
代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalisの経口投与による腸内細菌叢の変化が、NAFLDの病態の悪化に関与していることを明らかにした。
C57BL/6Nマウスにvehicle、P. gingivalis、または歯周病菌の中では病原性の弱いPrevotella intermediaのいずれかを投与し、その後、脂質60kcal%、メチオニン0.1%のコリン欠乏、L-アミノ酸規定の高脂肪食(CDAHFD60)を与えた。
CDAHFD60の摂食は肝脂肪症を誘発し、細菌投与と組み合わせることでNAFLDの病態をさらに悪化させ、線維化を促進した。
2つの細菌が異なる発現プロファイルを誘導することが明らかになった。
これは、P. intermediaとP. gingivalisを摂取した場合、血清エンドトキシン濃度、腸内細菌叢の組成、血清代謝物プロファイルが異なることから、腸内細菌産物の流入量と質的な違いによるものと考えられた。
結論としては 嚥下した歯周病菌がNAFLDの病態を悪化させるのは、腸内細菌叢の異常とそれに伴う腸内細菌および/または細菌の産生物の流入による遺伝子発現の調節障害によると考えられる。

今回の研究内容は新潟大学から発表されたもので、マウスを使った実験結果でしたが、腸内細菌の異常がNAFLDの進行の原動力であるということは様々な研究から示唆されています。
この論文では、腸内細菌叢の異常とNAFLDの病態との関連性は、腸管透過性の増加、細菌や細菌生成物への肝臓の曝露、腸内細菌叢によって産生される代謝物の変化という観点から説明されている、としています。
一方、口腔内細菌叢の異常は、歯周炎患者の特徴であり、これらの患者は、唾液中に存在する病原菌を継続的かつ無意識に飲み込んでおり、嚥下された病原性口腔内細菌叢が腸内細菌叢の異常を誘発するという概念は、歯周炎とNAFLDを結びつけるもう一つの因果関係である可能性が高い、と指摘しています。

つまり、口腔内に存在する歯周病菌は、胃を通過して腸まで到達し、腸内でdysbiosisを引き起こし、腸管透過性を高め、サイトカインなどを取り込ませ、肝臓に至り、炎症を引き起こす、ということになります。
ということは、歯周病菌を減らすことができれば、腸や肝臓へのダメージは減るのではないかと思われます。

広島大学のグループがこの点について調査を行っています。
「Elimination of Porphyromonas gingivalis inhibits liver fibrosis and inflammation in NASH」
J Clin Periodontol. 2021 Jul 11. doi: 10.1111/jcpe.13523.
(2021年7月11日)

この論文では、P. gingivalisの歯原性感染によって引き起こされるNASHの進行に対する抗生物質を用いた治療介入の効果を明らかにしており、
P. gingivalis歯原性感染を排除することで、感染によって誘発されるNASHの進行が抑制されることが示唆された、としています。

やはり、日ごろからのプラークコントロール、歯周病菌の除去は非常に重要であることは間違いありません。

NAFLDやNASHに関連する論文は日に日に増えてきていると感じます。メタボリックシンドロームとの関連で語られることが多いこれらの疾患ですが、予防するにはまずはオーラルケアから、と言えそうです。


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