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いま、パリなの!!

まだ子供が小さかったころ、真夜中に電話がなった。

インターネットも携帯もない時代。

真夜中の電話とはすなわち「家族の誰かがのっぴきらない状況になった」という合図であった。

慌てて電話を取ると、電話の主は母であった。

「ああ、ゆうこ? いま、パリなの!!」

パリ? パリ? フランスの?

こまめに母と連絡を取り合わなかった私は、母が初めての海外旅行でヨーロッパに行っていることを知らなかった。

確かに、電話の向こうの街の喧騒は、あきらかに異国のものである。

「今日帰るんだけど、テレフォンカードが余っちゃって、、、
もう日本は真夜中でしょう? ゆうこのところだったらまだ起きてるかな?
と思って。」

と、母の声は無邪気にはずむ。

いや、いくら宵っ張りの我が家でも、さすがに寝てる時間ですわ。

でも、楽しそうな声を聴けてよかったよ。

私はあまり母と仲良しではなかったのだが、そのことについては本当に心からそう思った。

私は、自分の望みを伝えることで、自分を尊重します。

家族のために我慢して、「私が我慢すればいいのよ。うまく丸く収まるんだから。」という態度を取りながら、心の中で、「私はこんなに我慢してるのに、誰も助けてくれない!!」という怒りで渦巻いていた母。

たまにゆっくり寝てると「人が働いているのに、いつまで寝てるんだ!!」と怒鳴り込んで起こしに来た母。

テレビを見て笑っていると、「人が働いているのに、テレビを見て笑っているんていい気なもんだ」と言われるので、子供らは母の気配を感じるとすぐにテレビを消して片づけをするふりをしたりしたものだ。

母の文句を書きたいわけではない。

それだけ母は一生懸命働き、余裕がなかったのだなと今ならわかる。

そんな母が、狭い田舎からはじけるように出かけていった初めての海外旅行。

そこからの電話の楽しそうだった様子を、いまさらに思い出して泣いている。

母のあの無邪気に楽しそうだった様子は、私を幸せにした。

それをね、忘れないでいようって、いまさらに思うんだよね。

人が幸せにしてるのを見るのは、本当はみんなうれしいはずなんだよね。

そんなことをね、新しく手に入れたオラクルカードの一枚から思い出したので、ここに記しておきます。

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