見出し画像

世界最大の飛行機 An-225 の愛称「ムリーヤ Мрія」とは

「世界最大の飛行機」といわれるウクライナの An-225 には「ムリーヤ」という愛称がある。ウクライナ語で「夢」という意味。

この「ムリーヤ」がウクライナ語でどういう単語なのかについて調べたことを書いてみる。なお,筆者はウクライナ語の初心者なので,間違いが無いことは保証できない。

ムリーヤについて

ムリーヤは世界に 1 機しかないが,2022 年 2 月下旬のロシア軍の攻撃によりメチャクチャに破壊され,見るも無惨な姿にされてしまった。

東日本大震災が起こった時,フランス政府はこの巨大輸送機をチャーターして 150トンの救援物資を日本へ運んでくれたらしい(Wikipedia「An-225 (航空機)」)。それを知るとますます穏やかな気持ちではいられない。

ムリーヤにはかつて 2 号機が計画されていて,ある程度組み立てられたものの未完のまま長きにわたって放置されていた。

ところが,この 2 機目をまもなく完成させるというニュースが入ってきて,たいへん驚いた。

2 機目を完成させたい,という話は破壊直後から目にしていたが,戦争終結後に着手するような話なのだろうと思っていたからだ。

なお,「ムリーヤ」が 1 機目の機体の愛称なのか,それとも An-225 というモデル(?)の愛称なのかは分からなかった。
つまり,2 機目は別の愛称がつくはずなのか,2 機目も当然ムリーヤになるのか,よく分からない。

ムリーヤ Мрія という単語について

ムリーヤはウクライナ語で Мрія と書く(アクセントの位置を太字にした)。
Wiktionary のここ

で発音を聞くことができる。

ううむ,ロシア語は [nr] で始まる単語があったけど,ウクライナ語は [mr] で始まる単語があるのかあ。

日本語の「ムリーヤ」の「ム」の母音を弱めてなるべく子音だけにし,「リ」のところを巻き舌(べらんめえ調の,舌先を振るわせるやつ)にしたうえ,相対的に「ヤ」より強めにすればネイティブぽくなるんじゃないかな(知らんけど)。

語義について重要なポイントは,この「夢」は「睡眠中に起こる幻覚体験」の夢ではなく,「心に思い描く願い」としての夢のほうだということ。
「私の夢,実現は無理〜や」とでも覚えようか。

一方,寝て見る夢のほうは сновидіння(スノヴィヂンニャ;太字はアクセント位置)という別の単語を使う。
「夢に現れたのはスノー美人にゃ」とでも覚えようか。
こちらは「sleep」を意味する сон(ソン)と「vision」を意味する видіння からなるようだ。えっと,видіння って発音からして vision を外来語として取り込んだものなのかな。

追記(2022/12/08)

「видіння は vision を外来語として取り込んだものか?」はさすがに考えすぎであった。
видіння は「見る」という意味の видіти の語幹に名詞語尾 -ння を付けてできたもののようだ。だから n の音が共通しているのは偶然。
ただ,vision と語形が似ているのは全くの偶然というわけでもなくて,印欧祖語まで遡れば同源らしい。vision よりも video のほうが関連が分かりやすい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?