Emilyのこと

本当の名前はEmilyではない。コレから書くことは決して彼女が素晴らしいという内容ではないので仮名である。

それは大学生の頃、EmilyはKarenと一緒にAliのところに来た。彼女らはAliのことをいいように利用していた。Aliが優しくおとなしくあまり英語が話せないからだった。私はなぜそれを知っているかというと、Aliのtutorをしていたからだ。Aliは自分のmajor分野ならば特に困ることもなく過ごしていたが、今で言うなら理系コミュ障でアパートを借りるのも銀行口座を開設するのも一苦労の様子だった。でも人と過ごすのが特に嫌なわけでもなさそうなのと、たぶん彼なりに英語の実践練習をしようという覚悟でEmilyがなんやかやと誘って来ると渋々付き合っていた。

その時はEmilyではなくKarenの方がAliに何事かを頼んだらしい。らしいというのはAliにはKarenの言うことがいまいちわからなかったようなのだ。そこで私に付き添いを頼まれた。特に用事もないのでついていくと、なんとEmilyが親のクルマを使って出かけた先で駐車違反をし、車をtowされたというのだ。その場合車を取りに行く(かなり遠い)こと、違反金チケットを受け取ること、違反のレコードが残ること、というペナルティが課せられる。親の車ならば親に頼めば良いところだが、Emilyとしてはその話は親には秘密にしておかなければ次に借りることはできない、だからAliの車で連れて行ってほしいと。

何だか嫌な予感がした。案の定乗せてもらった車の中でKarenとEmilyは駐車違反そのものを英語がよくわからないAliのせいにしてしまう悪だくみをケタケタ笑いながら展開していた。

私は心底軽蔑した。車を運転しているAliにはわかったかどうか不明だが、ヘラヘラとjokeだと誤魔化す2人の女子に車から降りて歩いていけ!と怒鳴りつけた。何のつもりか知らないが、外国人の弱みにつけこんで、自分の都合で罪を被せようとする態度、しかもそれを笑いのネタにしようとする卑しさ。一生おぼえているから2度と私の前に顔を出すな!と怒った。今から思い出すとなぜそこまで腹が立ったのかわからない。しかしEmilyも品性はないものの多少の後ろめたさは感じたらしくすぐに降りてタクシーで行くと言う。Aliはわからないけど、車を出した以上はその場所までは行くと言う。親切な上に冷静な人間だ。ならば帰りは自分たちで何とかしろと言い渡し、現地までは行った。帰りの車の中で経緯を説明しようか?と言うとAliは別に知りたくはないし、知って嫌な思いをするならば知らなくてむしろ幸せだと。確かにそうだけど。その後Aliや私の前に彼女たちが現れることはなかった。

ある言語をうまく話せない外国人に出会ったら、その人は少なくともその言語は2カ国語目なのだ。尊敬こそすれ,バカにするなんてあり得ないという気持ち、ぜひ持ち続けていたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?