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料理を始めた理由

映画の仕事につきたくて、二年半勤めたアパレルを辞めたのは22歳のとき。
とは言え、なんのツテもなく、あるのは「映画の仕事をしたい」という気持ちだけ。辞めて一ヶ月、毎日映画館に通っていた。一ヶ月が経って気づいたのは、実家における居場所のなさ。働きもせず、ただ映画を観ている、22歳のプータロー。どう考えても、どうしようもない。家族にせめられた覚えはない。今ではかなり自由に生きてはいるけれど、元来はわりと真面目なので、世間の常識に焦る。

そこで考えあぐねた結果、(そうだ、ご飯を作ろう!)と思いついた。
帰ってきた家族にご飯を作る。何もしないプータローよりご飯を作ってくれるプータロー。少しだけマシ。それで自分の立場の復権を目指したわけです。
そもそも母が専業主婦で、かなりの料理上手だった。ピロシキやボルシチも作る母だったから、子供の頃から手伝うこともあったけれど、自ら作る必要がなかったのである。でもここは、自分の立場の復権との闘い。一念発起して料理をはじめ、その後、派遣会社に登録して仕事をしつつ、映画業界に入るための本格的な動きを始めた。

あれから20年以上の月日が経った。
今も映画宣伝の仕事をやっている。そしてあの時の(ご飯を作ろう)という一念発起のおかげで、今では料理上手になり、味噌や梅干しまで自分で作るようになっている。27歳で一人暮らしを始めたというのも、料理を本格的に始める要因でもあったけれど、あの時、自分の立場の復権を考えなかったら、今の自分はなかったと思う。今週は柴漬けを漬け、新生姜でジンジャーシロップを作り、先ほどバジル酵母を仕込みました。パンを焼きます。
ひとつの決意が、思いがけない結果を生む。人生はやっぱり、かなり面白い。

#料理 #自家製酵母 #バジル酵母

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