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頭にドリルを装備した話 カッコ物理カッコトジル
まえがき
ある日のこと。Twitterにて某氏が、「 #キナリ杯 読んでたけど面白い!フォロワーも書こうぜ!」とつぶやいていまして。
何事だろうと検索してみると、なるほど面白い。企画もだけど、書いてる人たちの記事がいちいち面白い。
せっかくなので参加してみようと思ったけれど、テーマが『面白い文章』。
はて、面白い文章ってなんだろう?
一応ライターの端くれとしてはおもしろい文章を書こうと日々頑張ってはいるけど、テーマとなると難しい。
面白い……面白い……FF6。
……違う。それは単に、私が好きなゲームだ。
いや待てよ。
FF6には、機械装備と呼ばれる何でも装備バグがある。『頭にドリル』のフレーズで有名なアレだ。
そういえば私は、頭にドリルを装備したことがある。物理的な意味で。
平たくいえば、頭にドリルで穴を開けたことがあるのだ。
頭にドリルを装備した日
一昨年の年末。
当時の私は、日々頭痛に悩まされていた。病院に行っても原因がわからず、風邪が長引いているのだろうとか疲れ目のせいだろうとか。
資格試験があったことや、年越し旅行が控えていたこともあり、痛み止めとかでなんとかごまかして生活していた。
年が明け、元日。夕飯が食べられず、ついに痛みが耐えきれないレベルに達し。
意識があったのは、救急車の中までだった。
頭の中に響く謎の音で、目が覚めた。
はじめは、金縛りにかかったのだと思った。意識ははっきりしているけれど、身体は動かない状況。金縛りに間違いない。
でもそれにしては、この音は何なのだろう。
次に、頭の一部に振動を感じた。
謎の音。振動。頭。
ようやく気がついた。これは、ドリルだ。ドリルで頭に穴を開けているんだ。
私は、頭の手術をされているんだ。ひどい頭痛は本当に重症で、緊急手術が必要なレベルだったのだ。なるほど納得した。
それなら、なぜ。私はそれが理解できるんだろう。
簡単なことだ。子供でもわかる理屈だ。麻酔が切れかけている。
理解できた。だからこそ怖くなった。
身体は動かない。でも、触覚は戻っている。ということは、つまり。
さらに追い打ちのように、嗅覚が戻り始めた。
消毒薬の匂い。やはりこれは交通事故などではなく、病院にいるんだ。
しかしそれ以上に強く感じるのは、どこか覚えのある嫌な臭い。子供の頃ストーブで髪の毛を燃やして遊んだ、あの臭い。さらに、肉が焼ける臭い。
これが、ドリルで頭に穴をあける時の臭いか。
どこか非現実的で、でも目の前の現実で、いつ戻るともしれない痛覚という恐怖の象徴。
必死に祈り、そしてもがいた。
この臭いは駄目だ。臭いが理解できるというのは本当に駄目なんだ。
眩しい光だけは、うっすら覚えている。
周りの動揺が伝わってきた。
どよめいていたのかもしれない。わからないけど。
声が出ていたらしい。ひょっとしたら手も動いたのかもしれない。
なんにせよ、私の意識が戻っていることは周りに伝わったのだ。
もう一度意識が途絶えた。
今度は、どこかほっとしていた。
目が覚めたら、謎の部屋だった。「戻ってきましたよ」と言われたけれど、ここがどこなのかはわからない。
緊急治療室の個室だそうだ。夫がいて、両親がいて、姪もいた。
かなり命が危なかったらしく、なぜ生活できていたかわからないレベルだったとか。
何にせよ、告げられた内容はどれも非現実的だった。
こんなに非現実的なことばかりなら、さっきまでのことも夢だったのだろう。そう思っていたら、主治医に告げられた。
「緊急手術中に目が覚めたときは驚いたよ。麻酔が効きにくい体質なんだね」
夢だけど、夢じゃなかった。
それから
もう一度手術をした。
『記憶の忘却・記憶力低下のリスクがあり死亡の可能性もあるが、再発の可能性は低い』ものと、『応急処置に過ぎないので再発のリスクが高いが、さして難しい手術ではない』もの。2つの選択肢をを提示され、私たち夫婦は前者を選ぶことに。
2回目の手術は無事成功し、無事日常生活を再開。数秒前のことを忘れる事が増え、会社勤めは難しい体になったものの、なんだかんだで在宅ライターやってます。
頭にドリルを装備しても、案外人は死なないものですね。
ティナやロックたちも装備してたもんな。
余談
2度目の手術が終わり一般病棟に移ってからは、スマホが使えるようになりまして。
で、当時Discordチャンネルで状況報告をしていたときの発言がこちら。
「そして、脳外科集中病棟からの脱出者といういらん称号を獲得しました。」(原文ママ)
いや、いくら何でも強火すぎません?
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