【SS】0色ボールペン|#ストーリーの種

0色ボールペンを買った。

0色ボールペンを置いている文房具屋はほとんどなく、まさかこんな山奥の雑貨店で出会えるとは思わなかった。0.3mm、0.5mm、0.7mm等種類も豊富で、店主の「半額でいいよ」の嬉しい言葉にも押されて全部買い占めた。

私は折り紙や色画用紙等を使ったペーパークラフト関連の仕事をしている。紙の折り筋をつけるのに、0色ボールペンが必須なのだ。

0色… つまり、色の出ないボールペンである。単色の紙なら、その紙と同じ色のボールペンを使えば良いのでは…と思われるかもしれないが、光の加減でボールペンの色はテカテカ光るし、例えば赤だったとしても、赤にもいろいろあり微妙に色が違う。単色でさえ問題があるのだから、模様付きだったり微妙な色だった場合には、色のあるボールペンは使えない。

今までは、普通のボールペンの使い切ったものを使用していた。0色化するため、無駄に試し書きを何度もしたりして、かなり時間がかかる。インクの入っていないボールペンが売られていないか、真剣に探していた。

山奥の雑貨店のものは、インクが固まって出なくなり0色化したものだった。でも、それでも良い。人肌で温まり、インクが溶けだすこともなさそうだ。店先で何度も書き味を試したが、申し分なかった。

多分一生分の買い物をした、と思う。


[561字]

Sheafさんの『ストーリーの種 43』から、書き出しをお借りしました。

折り紙や厚紙工作で、長い直線を折る時とか、手で一発で折れなさそうな時は、0色ボールペンで先に折り筋を付けます。で、そんな0色ボールペンが時々無性に欲しくなります。マジで、使い切ったボールペンを大事に使っているのですが、そんな用途に使っているとは知らない人が、たまに捨ててくれているので困ります😭

#ストーリーの種
#ショートショート

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