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【SS】音声燻製②|#毎週ショートショートnote

「この臭いは… 木酢液か?井上。」

研究室内に充満するスモーキーな臭いは、獣や害虫駆除の農薬としてかつて多く利用された木酢液のものだった。

「すみません、博士。原液をこぼしてしまって…」

植物学者木下の助手である井上は、申し訳なさそうに答えた。琥珀色をしたその液体は、炭を作る時に発生した煙を冷却して得られ、メタノールを作る原料となっていた時期もある。

井上は、登録失効した農薬の木酢液を改めて研究し、環境に優しい農薬として再登録できないか検証している。

それにしても… 臭い。燻された煙が原料なので当たり前と言えばそうなのだが。

「燻製の匂いは美味そうだと思うのに、木酢液の臭いを嫌悪するのは何故かわかるか?井上。」

「いいえ、わかりません。博士。」

「山火事を連想させるからだよ。命の危険を感じさせるんだな。」

臭いにむせながら、しゃがれ声で博士は説明した。


[387字]
久々に、植物学者らしいエピソードを書くことができました!(ちょっとかすっているだけですが)
燻製で、あのモクモクの燻された匂い?臭い?から『木酢液』を思い出せたのがよかった。
木じゃなくて竹から作られる『竹酢液』が一時期我が家にあって、めちゃくちゃ臭かったから…
(我が家の庭先に野良猫が糞とかしていたから野良猫避けで使用。効果はあったけど人間にも臭い)


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