【SS】ふりかえるとよみがえる②｜＃毎週ショートショートnote

「井上はお盆に帰省するのか？」

植物学者の木下は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の鳳仙花の果実をいじり、種を飛ばしながら助手の井上に尋ねた。

「帰るとお見合いとか勧められるので、帰りたくないです。博士。」

「井上も所帯、いや、子どもがいてもおかしくない歳だしな。好きな人はおらんのか？」

井上は、チラッと自分の過去を振り返ってみた。

初恋は、小学校の時の隣の席の女の子。次の恋は中学の時、美化委員をして一緒に花壇に水やりした女子。バレンタインの時、生徒会長にチョコを渡すのを見て失恋した。その次は高校で…彼女の方から告白してきた。僕が、彼女の初恋の人に似ていたそうだ。交際してみたが、お互いに『なんか違う』と感じて別れた。その後は…特にない。

「ほれ、へばの〜の彼女はどうだ？」

「えっ？！無いです、博士！」

井上に、思い出したくない思い出が蘇ってきた。中学の時、自分が失恋した彼女を失恋させた女だから…

［409字］

井上の過去… そして、まさかの！
あんな特徴的なお名前なら、忘れられないとも思うけど、学年が違うとかクラスが一緒になったことがないとか… 長い月日も経っているしね。

#毎週ショートショートnote
#ショートショート
#ふりかえるとよみがえる