赤い傘|#シロクマ文芸部
赤い傘をさしている女の子を見かけたら、決して目を合わせたらいけないよ。もしも合ってしまったら…
あなたはその女の子の遊び相手にならねばならないから。
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傘を壊してしまった女の子は、新しい傘を買ってもらった。とてもきれいな赤い傘。ひとマスだけ、透明になっていた。早く雨の日が来ないかな… と女の子は新しい傘をさすのを楽しみにしていたが、交通事故に会い、かわいそうなことに夢は叶わなくなった。「赤い傘さしてお出かけしたかった」と亡くなる前にポツリとつぶやいていた。傘は棺の中に納められた。
女の子のお葬式が終わってしばらくすると、不思議なことが起こった。女の子と同じくらいの年頃の子どものいる家に、赤い傘をさした女の子がふらりとたずねてくるのだ。「あ、窓の外に赤い傘をさした女の子がいるよ」「えっ?」でも大人には見えないようだ。「どこに?」「もう帰っちゃった」そんな会話がほとんどだけれど、「ほら、そこにいるじゃない。手を振って笑っているよ」と答えることもある。そんな時は次の日から子どもが高熱を出して寝込む日が続くのだった。
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ある日、赤い傘の女の子の噂話を全く知らない家族が越してきた。その家族には小さい子がいて、おまけに噂と同じような赤い傘を持っていた。
雨が降る日、家族と一緒に女の子はその傘をさしてお出かけをした。信号待ちしている時に「あ、あそこに私と同じ傘をさした子がいる!」「どこに?」「ほら、そこ。ニコニコ笑ってこっちを見ているよ」でも、パパにもママにも娘と同じ傘をさした女の子は見つけられない。
信号が青に変わり、横断歩道を歩いている時、突然車が突っ込んできて… 大怪我をしたが命に別条はなく、傘が身代わりとなったようにボロボロに壊れた。
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赤い傘をさしている女の子を見かけたら、決して目を合わせたらいけないよ。もしも合ってしまったら…
あなたはその女の子の遊び相手にならねばならないから。
でもね、命まではとらないみたい。
[約800字]
似非怪談。BUNGEI-BU8 のスピンオフかな。
原稿用紙2枚程の夏休みの宿題、創作作文的な😅
(実際にこんなのを提出したら課題クリアになるのだろうか?)
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