見出し画像

【SS】告白雨雲|#毎週ショートショートnote

雨雲は今日も旅をしながら、どこかで雨を降らせている。下界を見れば、たいていの生き物は自分を避けて逃げ回り、やがていなくなってしまう。

雨蛙たちは、歓迎の歌声を奏でてくれているようだが、大雨になれば彼らも歌をやめてしまう。

草原の草花や木々、そして農作物たちは、自分のことを喜んでくれるけれど会いには来ない。

「今日も雨を降らせて、この地を去るだけだ。」

そんなことを考えながら、雨雲はふと後ろを振り向いた。すると、なにやら見たことのない美しい光がアーチを描こうとしている。

「君は誰?」雨雲は聞いた。

「私は虹よ。いつもあなたを追いかけていたけど、全然追いつけなくて…」

雨雲は嬉しくなった。自分のそばに、そんな美しいものがいたなんて!

「虹さん、僕と一緒にいてください。」

「ええ、喜んで。」

その日の天気雨は、虹色をしていた。


[374字]   博士出番無し

雨雲が虹に恋をした… そんなお話しです。

#毎週ショートショートnote
#ショートショート
#告白雨雲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?