つまんない話|#ストーリーの種
一番つまんない話をしたやつが優勝ね。
◇
俺たちは退屈していた。だいたいいつもなら「なんか面白いことないかな?」と考えたりするが、今日の俺たちは、探すことも面倒なくらい退屈しきっていた。
「つまんない話か… いくらでもあるぞ。昨日の漢字書取りテストで23点だったとか。微妙過ぎるだろ?どうせなら潔く0点取りたかったぜ」
「それ、つまんなくない。11点だった俺から見たら、自慢話にしか聞こえない」
「ていうか、あのテストは一問5点配点なのに、なんで23点とか11点を取るわけ?つまんないというより不思議なんだけど」
「あー、止めとか跳ねとかが微妙だったから、細かい減点あったんだよ」
「テストの話はやめよう。点数で優劣は決めたくないだろ?内容で勝負だ」
「そうだな。つまんない話と言えば… 俺んち、毎朝ご飯で味噌汁出るんだけど、いつも具がわかめとネギなんだよ。たまには違うもの食いたいな」
「それは贅沢だよ。味噌汁が出ることや飲む時間があることは幸せだぞ」
「朝ごはんか… 最近食ってねえや。自分ちの朝ごはんが何かも知らない俺って最低だな」
「気にすんなよ。毎朝食っているやつの方が、今は珍しい存在だよ、きっと」
「つまんない話って、なんか難しいな。自分では、つまんないことだと思っていても、他人から見れば羨ましく見えていたり。マジ、ムズい」
「自分に関係ない話にすれば良いんじゃね?芸能人のこととか」
「俺、3次元興味ないから話ができない」
「お笑い芸人で一番つまんないと思うやつの話にしてもな。今は売れてなくても、突然ブレイクすることあるし」
「多分、ずっと売れてないやつは、俺たちも知らないだろうし」
「でも、そいつらって、いつか売れることを夢見て頑張っているんだろうな。スゲーな」
「売れてない芸人をスゲーと思う俺らって、意外とすごくない?」
「確かに…」
「つまんない話って、マジ難しいな。何も話題にできない気がする」
「そう言えば、話が詰まったときは、天気の話をすれば良いって聞いたことがあるぞ」
「ああ、俺も聞いたことがある。今日の天気は…曇りか。暑くも寒くもないし」
「えっ?そうか?俺、めっちゃ寒いんだけど。ここだけの話、腰の辺りにカイロ貼ってる」
「お前、風邪でもひいてんじゃないの?やべぇ!お前、熱あるぞ。保健室行けよ!」
◇
保健室で安静にしているうちに、ずいぶん体調が戻ったようだ。そして、仲間たちが俺のカバンとかを届けに保健室に寄ってくれた。
「大丈夫か?お前の家までカバン届けてやるぞ」
「うん、もう大丈夫だと思う。ありがとう。ところでさ、あの話ってどうなったの?」
「つまんない話選手権か?」
「それ!誰が優勝した?」
「そりゃあ、話している途中で保健室に行くことになったお前に全員ドン引きしたから、お前が優勝だよ」
「そうなんだ。で、優勝したら何がもらえるの?」
「えっ?優勝したら何かもらえるって思っていたのか?じゃあ、今日の授業のノート貸出しを、特別に無料ということで!」
[約1200字]
つまんない話って… 難しいです。仲良しの友だちのお話だと、何を聞かされても興味深くなるって言うか、そんな感じで😅
Sheafさんの『ストーリーの種 58』から、書出しをお借りしました。
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