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【SS】タイムスリップコップ②|#毎週ショートショートnote

「ありましたよ。博士!」

助手の井上が、部屋の片隅からコップを見つけ出した。ごく普通のガラスのコップだ。強いて言うなら、年季もの。

「大事なら、ちゃんと片付けておかないとダメですよ、博士。」

「そうだな。ハハハ」

植物学者の木下は、苦笑いしながら洗って水を注いだ。

「このコップは、自分がこの道に進もうと考えるきっかけになったものなんだよ。小学校の夏休みの宿題で…ヘチマを育てたんだ。」

「ウリ科ヘチマ属のヘチマですね。普通はアサガオを観察するのに、博士はヘチマを!」

「いや、1年生の時は全員アサガオだったよ。2年の時にヘチマを育てて、大きな実を作ることと、ヘチマ水を飲んでみたい…と思ってな。」

「そのヘチマ水を飲んだコップなんですね?どんな味だったのですか?」

「ただの水だったよ。でもな、何か……」

博士は思い出のコップで水を一口飲むと、小学生時代にタイムスリップしているようだった。


[406字]

博士と助手をどうやってタイムスリップさせるか悩み、とりあえず博士だけタイムスリップさせてみました。
いつかこの話の続編(博士の過去)書いてみたいです。そんなお題は訪れるのでしょうか…

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