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「現代社会心理学特論」を学んでみた

昨年度後半から開始した放送大学大学院の選科履修生。
今年度前半は「現代社会心理学特論」を選択してみた。
当初は教育学の科目履修を計画していたが、コーチングにはまってからは心理学に興味が出てきた。
ではなぜ「社会心理学」なのか。
コーチングではクライアントはコーチからの問いかけによって新たな視点を得る。クライアント自身の内部からはこれは難しいのか。他者からの問いかけが有意義なのはなぜか。これは人同士の関係性、人との関係によって生じる心理学的なものが影響しているのか。
そんなことを知りたいと思ったため、「他者の存在によって、個人の心や行動がどのような影響を受けるか」を探究する社会心理学が、とっかかりとしてはピッタリだと考えたのだ。

そんな問題意識を持って始めたが、学び始めると、社会心理学の歴史や認知研究の発達と広がり、さらに新しい理論の登場など、興味深いものをたくさん知ることができた。まさに脳科学が発達するに伴い、心理学も急激な変化を受けつつあるように思われた。

面白かったのは、人間は「認知的倹約家」であり「動機を持つ戦略家」であるということ。
物事を理解するための労力や時間には限りがあるため、通常はその認知資源を無駄遣いしないように努めているのが人間だが(「認知的倹約家」)、強く興味を持ったものや自分の損得に関わるなど、状況や目的に応じて情報処理にかけるコストを調整する特徴もある(「動機を持つ戦略家」)。
そしてそれぞれによって情報処理過程が変わる。

バイアスやステレオタイプ、ヒューリスティックなどのいわゆる認知の歪みやエラーについても学んだが、今振り返ってみると、それら認知の歪みの殆どは、人間が「認知的倹約家」であるとともに「動機を持つ戦略家」でもあるということでかなりの部分説明できるのではないかと感じている。

今回学んだことからは若干外れるが、
人間は、自分の身内や親せき、性格や過去の経歴をよく知っている人物に対してはそこそこ冷たい対応はしづらいものだ。
と考えると、当たり前のことであるが、日常の人間関係を円滑にするために、自分自身を相手に知ってもらった方がよい。つまり、いかに相手に自分に関心を持ってもらえるか、相手を「認知的倹約家」から「動機を持つ戦略家」に変えられるか、がポイントなのか、などと考えた。
営業活動や売り込みというのはこういうことか、と。

冒頭の私の疑問「自分自身の内部から物ごとを見る視点を変えることは難しいのか」という問いについては、人間はただでさえ認知の歪みを普通に持つことから「難しい」ということ、「他者からの問いかけがなぜ有効なのか」については、状況の力が人間の心の働きや行動に及ぼす影響が強大であるからであり、究極的には「人間は社会的動物であるから」というアリストテレスの時代の言が回答になるのかもしれない。

学んできて、ぐるっと回って元に戻った、あらためて足元にあった真理を理解した、そんな感じだ。