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タイ製メンソール入りパウダー うちにあって 日本の一般家庭の1%未満にしかないだろうと思うものを挙げてみる その14

旅行に行った友達に買ってきてもらったこれは、もう何年も前のものです。

現在もこれはタイではよく使われているのでしょうか?
最後にタイへ行ったのは25年前。もう少し最近訪れたマレーシアやシンガポールではなぜかほぼ見ることのないメンソール入りのパウダーは、かの国では相変わらずの人気なのでしょうか?

成分と謳い文句の肝であるPrickly heatのみ英語表記



初めてタイに行った時、タイ通である日本人にみんなが使っている必需品だと勧められたのでした。

1988年。

確かにちょっとした店ならどこでも置かれています。一番人気のこのSnake Brandのもの以外にも、Hula Hula とかたくさんの商品がありました。
その上バンコクの外を歩く老若男女の一定数がシャツから出ている首あたり、勢いがつきすぎたのか顔まで真っ白になっていたのですが、それは水浴び後このパウダーをつけているからだと。
確かにミャンマーの人が顔に塗る白い「タナカ」とは違って、タイの白首の人達はもっと無造作で、よく見るとやがて白さが消えていくようなのです。

好奇心が強かった私は、もちろん買って試してみました。

PRICKLY HEAT というのは「あせも」とい意味だとデイリーコンサイス辞典で調べて早速使います。

安宿でシャワーを浴びます。
体をざっと拭いたらこのパウダーを塗るというか全体にはたきつけてみます。

そうしたら数分後やってきました。全身のスースー感というか、灼熱感の反対の刺激というか。

唐辛子で辛いことをホットというのだから、メンソールの刺激はクールと言っていいのか?

日本人には辛いと熱いは似ているけれど同じものではないように、メンソールでスースーするのと涼しいまたは冷えるのはちょっと別にも思えますが。
でも冷房のない部屋でこの清涼感は確かにいいかも。

タイ人のように朝晩水を浴びてこのパウダーをつけます。私も汗をかきやすい首にもためらいもなくたっぷりつけ、外出時は白首になっていたと思います。そして塗りたてのスースー感がおさまった後も、少しの時間なら汗ばむことでまたスースーが復活します。
部屋のシーリングファンの風とスースー感で、夜の寝つきも良くなります。

腕に出してみたけれどこれをのばしてもあまり白くならないから
地黒だったタイ人程白首は目立たなかったろう

日本でも当時からシーブリーズのローションは売られていましたが、スポーツをするでもない、ましてそこまで暑い日も少ない北海道に住んでいたので無縁に過ごしていました。
なのにこれには手を出したのは、バンコクが大変に暑かったのとローションではなくパウダーという形状への安心感があったようです。

この 一番の定番 Classic のフレグランス。他のブランドもフレグランスも試したけれど、王道のこれには私的には敵うものがありません。そしてほんのりと消えてゆく香りの割に強烈にクールな刺激を残していきます。

ベビーパウダー タルカムパウダー タルク などと言われるものは日本ではすでに昭和の終わりにはあまり使われなくなっていました。

赤ちゃんがひっくり返したパウダーを大量に吸い込んで肺炎になる事故があった。
汗腺を塞ぐのでかえって良くない。

そういうニュースがあって、そういう風潮になって「赤ちゃんのオムツかぶれ防止には必要ない 使いたい場合は練ってある固形のものを」とされるようになったからです。
ですが、昭和40年代の赤ちゃんは、おむつかぶれ防止にお尻にベビーパウダーをはたかれるのが常でした。
当時通っていた銭湯でも赤ちゃん連れのお母さんは缶入りのベビーパウダーを持参して蒙古斑のあるお尻にポンポンとつけていました。
あせもができやすい私は幼稚園くらいまで夏になるとお風呂上がりに体全体にポンポンされていたのを覚えています。

あのサラサラとして幸せな香りに包まれた記憶は、良くない、必要ないと言われてもどこか回帰したい気持ちにさせるのです。


この記憶があったからか、やってしまいました。

お尻につけたらどうだろう?

粘膜を有する部分につけることの危険性は頭をよぎったのですが、やってみたさには勝てませんでした。

その結果
安宿の部屋の壁に両手をつき、歯を食いしばりながら嵐のようなメンソールの刺激が過ぎ去るのをただ待つ私がいました。
昭和の新潮文庫の最後の目録にあった佐多稲子作の小説の題名 「体の中を風が吹く」 が脳内リフレインされて(読んだことなかったけれど題名だけ気になっていた)、これこそ今の状態を表す言葉はないと思いながらでした。

それから旅行の最後に立ち寄る事が多かったタイで、着いたらこれを買って使って持ち帰っていました。
そしてタイに足を踏み入れていなかったこの25年は数年ごとに友達に頼んでいました。日本の夏も相当暑いので。


築36年、それでなくても湿度の高い地域にあるうちは、洗面所のみならず夏は大変にジメジメして、その結果色々無頓着になりこの缶も結構錆びています。

容器の劣化と共に、多分7年ものの中身のパウダーにも変化がありました。メンソールが飛んでスースー感が弱まっているのです。
これならあの激しい「体の中を風が吹く」状態にならずに済む気もしますが、かといって試す必然性も果敢さも35年後の私にはもうありません。

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