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晴れ女の強引な辻褄合わせ 稚内 【専業旅婦は日本だって旅する その1】

5月の午後2時なんて一年で最もうららかな日差しであっても良さそうなものだが、なぜか今年一番の凍えと暴風霙(みぞれ)の中にいた。

駅から徒歩5分もかからないはずの、急遽決めたホテルまでの道のりだが、風雪でちっとも前に進めない。できるだけ風を背にして、建物の壁があればそこでしばし息を整えては “だるまさんがころんだ” の鬼とじゃない方を一人でやってるみたいな動きで にじにじとしか進めない。

冷たい 凍える 飛ばされそうだ

本当は稚内空港に着いたら稚内駅近くでご飯でも食べ、または何か買い込んで礼文行きのフェリーに乗り込むはずだった。

本格的に宗谷の天候が心配になったのは数日前だったが、とうとう強風波浪濃霧低温注意報が出た。
朝5時に今日のすべての離島航路の欠航が決まり、2泊する予定だった礼文島の宿の人からも電話があった。
「今日の分は仕方ないけど、明日は行きたいです!」
と伝えて快く了承してくれた。
羽田〜稚内の飛行機は予定通りなので、稚内で足止め日になった。
雨の稚内散策だ!と思ったが、実際は散策できる天候ではない。

鉄道系Youtuberの西園寺君がいないか期待してしまう
いたら最高の撮れ高になりそうな気候

そうじゃないかとは思っていたが、自分が相当の晴れ女だと確信したのは、屋久島だ。
数度にわたって屋久島に滞在したのべ1ヶ月。
なんせ 「1ヶ月に35日雨が降る」とまで言われた屋久島で、雨らしい雨に当たった覚えがない。
そう思えてきたらすっかり気分は晴れ女。
一月前台湾で土砂降りにあったことなど忘れて「本当に晴れてほしい時には大丈夫」とタカをくくっていた。
旅行予定の前週、週間予報を見てちょっと驚く。

あれ? 最低気温0℃? 礼文利尻4日間の予報がずっと雨?

いいやきっと威信にかけて晴れてくれるに違いない、と思うことにした。
セーターやダウンベストは荷物に追加したが。
そのせいか雨は予定より早まって、予報では徐々に利尻に行く後半2日間が曇りに変わってきた。この調子で前倒しになればいいな、と思ってはいたが、さすがに間に合わなかったようだ。
というより生半可の雨ではない、雪やら高波やら暴風も伴ったすごいのが、到着する日大暴れしている。


急に思い立って利尻礼文に行ってみようと思った。
北海道にいる娘を訪ねるのを口実に、故郷に行く。
口実にしては随分距離はあるけれど、道内と言えば道内だ。

故郷であっても広い北海道
生まれ育った旭川
進学と就職した札幌
ここには住んでいた。
札幌には結構最近の何年か前も一年半だが暮らしていた。
中学校の修学旅行先の函館も、友達が住む街として、何度か訪れている。
つまりは上り方面には馴染みがあるが、下り方面はさっぱりだ。
道東にも3年前までほぼ足を踏み入れたことがなかったし、襟裳岬とか長万部とかにも行ったためしがない。行こうとしても不便で、毎度あきらめる。
稚内は友達が住んでた20代の頃2回かな。
それも南稚内の駅と友達の家の飼犬の記憶しかない。

離島には惹かれるが、実際訪れたことがあるのは南ばかりだ。北海道の島のどれにも行った事はない。
そこから始まり、高校時代の友達が礼文島から来て下宿しながら通学していた事を思い出した。
そしてこじつけみたいだが、鹿児島県の離島が頭に浮かぶ。
まるで対比するように、丸くて標高の高い山のある島(屋久島と利尻島)と なだらかで細身の島(種子島と礼文島) が隣り合わせで南北にあることが。
そう気づいたら行ってみたくなったのだ。

大きさはちょっと違うけど
言いたいことわかるでしょ?

色々理由をつけてみた。でもつまり私はただ隙さえあれば旅行したいのだろう。

稚内駅のビルは最高だ。きれいな公的スペースになっていて、人の数に対してくつろいで座るところも十分あるし、飲食もできる。
空港から駅に着いてホテルのチェックイン時間まで、ビル内にあるセイコーマートで買った物で昼食。北海道に来たらできるだけそこのおいしいものを、と思う人は多いかもだが、北海道で普通に買えるものを自分で調理できるとそれで十分満足してしまい、毎回外食吟味しなくても全然惜しくない。宗谷と言ったら有名なウニも解禁前だし。
セイコーマートもここでしか買えない感があって大変によろしい。

たどり着いたホテルでは、安定の暖房により室内はポカポカの暖かさだし、大浴場で芯まであったまる。他に入浴客もいない時間でヨガポーズもとれる。
さっき歩いた時はは1m先までしか注意払えなかったが、実は近いところにあった名所も窓から見える。暖かくて安全な所から臨む海は旅情を満たしてくれる。

窓から見えたのは90年近く前に造られた防波堤ドーム
翌朝撮影

とは言え、あたたかな部屋の幸せを噛み締めても、おなかは空いてくる。
どうしよう。まだまだ外は大荒れだが、頑張ってもう一度外に出てみよう。

ラーメンなんかいいな、と近いところの人気店を目指してみたが…Google mapでは開店中になっているが、予想はしていたが臨時休業。行列できる店らしいから今日はすんなり入れたらラッキー、とも期待したが、こんな日だから仕方がない。
もう一件その先の店も…閉店している。ここまで来て温かいものにありつけないのだろうか?
道はアーケード街に差し掛かり、見出し画像のような人のいない幻想的とも言えるシャッター商店街になる。この天候なので店がほぼ閉まっているのか、地方の古い商店街の多くの例に漏れずなのかはわからない。
ただ店のテントに書かれたロシア語に道北の港町だなあと実感する。
アーケードの下ですれ違ったただ一人は、どうみてもロシア人女性だったし。

南下した先にあったラーメン屋さんで、稚内ローカルフードと言われてる「チャーメン」にありついた。
とろみのある素直な味の餡と カタ焼きソバほどは固くないけどパリッと感の残る麺。凍てつく日に出会えてよかった、おいしさ。

酢で後半味変できる

予報では大荒れの天気は明日までには回復するらしい。
利尻礼文の4日間ずっと雨の予報だったが、前倒しになった事はなった。初日は間に合わず1日にまとめた分大荒れになったが。
それを 晴れ女の名にかけて何とか強引に辻褄を合わせて二島での晴れを確保してくれた、と見るべきか?
それとも素直に晴れ女というほどでもないと認めるべきか?
自分の解釈次第だろう。

でも国内ですぐ簡単に変更がきいた便利さに救われて、稚内での一泊もそれはそれで悪くない経験だったな。

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