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【読書ノート】言語


序文

要約:
言語は人間の非本能的なコミュニケーション手段であり、その多様性と普遍性は驚くべきものである。本書は言語の本質を探求し、言語と思考、歴史、人種、文化、芸術との関係を考察する。言語の形式と歴史的プロセスは、人間精神の複雑な働きを理解する上で大きな価値を持つ。著者は専門用語を避け、主に英語の例を用いて議論を進める。本書が言語研究の刺激となることを願っている。

重要なポイント:

  • 言語は生得的なものではなく、文化的に獲得されるもの

  • 言語の多様性と普遍性は驚くべきもの

  • 言語の形式と歴史的プロセスは人間精神の理解に役立つ

  • 本書は専門用語を避け、英語の例を中心に議論を進める

理解度確認のための質問:

  1. 言語は本能的なコミュニケーション手段だと言えるか?

  2. 本書が言語の形式と歴史的プロセスに注目する理由は何か?

  3. 著者は本書の議論をどのように進めようとしているか?

重要な概念:
言語の多様性と普遍性: 言語は驚くほど多様であるが、どの言語も人間のコミュニケーションという普遍的な機能を果たしている。

言語の恣意性(arbitrariness of language): ソシュールが提唱した概念で、言語記号(単語の音声形式と意味内容)の結びつきは恣意的であり、必然性がないことを指す。例えば、「犬」という動物をdogと呼ぶ英語と、chienと呼ぶフランス語の違いは、言語ごとの恣意的な取り決めに基づくものである。

考察:
言語は人間の精神活動と密接に関わっており、その研究は我々の思考や文化を理解する上で非常に重要である。著者が指摘するように、言語の形式と歴史的プロセスを分析することで、我々は人間精神の複雑な働きに迫ることができるだろう。また、言語の多様性と普遍性という一見矛盾する特徴は、人間の創造性と適応力の表れとも言える。つまり、人間は環境や文化に合わせて多様な言語を生み出す一方で、どの言語もコミュニケーションという普遍的な機能を備えているのである。本書が専門用語を避け、具体的な例を用いて議論を進めようとしているのは、言語学の知見を一般の読者にもわかりやすく伝えるための工夫だと思われる。言語は我々の生活に深く根ざしているからこそ、その研究成果は広く共有されるべきである。本書が言語研究の面白さと重要性を多くの読者に伝え、この分野の発展に寄与することを期待したい。

第一章 序論 言語の定義

要約:
言語は人間のコミュニケーションを可能にする象徴システムであり、個々の発声ではなく、概念と音声記号を結びつける社会的な約束事によって成り立っている。言語習得は本能ではなく、文化的・歴史的に規定された過程である。思考と言語の関係は複雑だが、言語なしに抽象的思考が可能かどうかは疑わしい。聴覚映像と関連する運動感覚が言語の本質だが、それは他の感覚に置き換えることができる。言語はあらゆる人間社会に存在し、驚くほど多様である。

重要なポイント:

  • 言語は文化的・歴史的に規定された象徴システムである

  • 言語習得は本能ではなく、社会的な過程である

  • 思考と言語の関係は複雑だが、言語なしの抽象的思考は困難

  • 聴覚映像と運動感覚が言語の本質だが、他の感覚に置き換え可能

  • 言語の多様性と普遍性

理解度確認のための質問:

  1. なぜ言語習得は本能ではないと言えるのか?

  2. 思考と言語の関係をどのように捉えられるか?

  3. 言語の聴覚的性質はどの程度重要か?

重要な概念:
象徴システムとしての言語: 言語は個々の発声ではなく、概念と記号を結びつける社会的な約束事によって成り立っている。
恣意性:言語記号と概念の結びつきは必然的なものではなく恣意的であること。
思考との関係:言語は思考と密接に関わっており、言語なしには抽象的思考が不可能。一方で言語が思考を完全に決定するわけではない。
普遍性と多様性:あらゆる人間社会に言語は存在する一方、個々の言語は驚くほど多様。

考察:
言語が文化的・歴史的に規定された象徴システムであるという指摘は、言語の本質を理解する上で非常に重要である。我々は言語を使って思考し、コミュニケーションを行っているが、その言語自体が社会的な約束事の産物であることを忘れがちである。つまり、言語は個人の恣意的な創造物ではなく、長い歴史の中で集団的に形成されてきたシステムなのである。また、著者が指摘するように、言語習得は本能ではなく、社会的な相互作用を通じて達成される。子供は周囲の大人とのコミュニケーションを通じて徐々に言語を身につけていくのであり、この過程は文化や環境に大きく左右される。言語と思考の関係については議論の余地があるが、言語なしに抽象的な思考を行うことは困難であろう。我々は言語を介して概念を操作し、論理的に思考しているのである。ただし、言語の聴覚的性質は本質的なものではなく、他の感覚を介して言語的コミュニケーションを行うことも可能である。重要なのは、概念と記号の結びつきを社会的に共有することである。言語の多様性と普遍性は、人間の創造性と適応力を示す興味深い現象だと言えるだろう。

第二章 ことばの要素

要約:
言語の基本的な要素は、概念を伝達する音声連続である。単語は言語の中心的な要素だが、常に概念と一対一で対応しているわけではない。文法的な要素も重要な役割を果たす。文は命題を表現する言語の基本的な単位であり、主語と述語から成る。言語は主に概念の伝達に関わるが、感情や意志も部分的に表現される。単語には感情的な意味合いもあるが、それは科学的な思考の妨げになることがある。

重要なポイント:

  • 言語の基本的な要素は概念を伝達する音声連続

  • 単語は言語の中心的な要素だが、概念との対応は完全ではない

  • 文法的な要素も重要な役割を果たす

  • 文は主語と述語から成る命題を表現する言語の基本単位

  • 言語は主に概念の伝達に関わるが、感情や意志も部分的に表現される

  • 単語の感情的な意味合いは科学的思考の妨げになることがある

理解度確認のための質問:

  1. 音声連続と概念の関係をどのように捉えられるか?

  2. 単語と概念の対応関係は完全だと言えるか?

  3. 言語における感情表現はどの程度重要か?

重要な概念:
文法的要素: 語根に付加されることで文法的な機能を果たす要素。単語の意味を修飾したり、文法的な関係を示したりする。
形態素:意味を持つ最小の言語単位。語を構成する要素となる。
自由形態素:単独で語として機能できる形態素。語根など。
拘束形態素:単独では現れることができず、他の形態素に依存する形態素。接辞など。
主語と述語:文の中心的な要素。主語は述語によって記述される対象を指示し、述語は主語についての陳述を含む。

考察:
言語の基本的な要素が概念を伝達する音声連続であるという指摘は、言語の本質を理解する上で重要な示唆を与えてくれる。我々は個々の音声ではなく、それらが連なって作る意味のまとまりを介して言語的コミュニケーションを行っているのである。ただし、単語と概念の対応関係は必ずしも一対一ではない。同じ概念を表す単語が複数あったり、逆に一つの単語が複数の概念を表したりすることがある。これは言語の柔軟性と創造性を示すものだと言えるだろう。文法的な要素も単語と同様に重要な役割を果たしており、語根に付加されることで単語の意味を修飾したり、文法的な関係を示したりする。文は主語と述語を備えた命題を表現する言語の基本単位であり、複雑な思考を伝達するために不可欠である。言語は主に概念の伝達に関わるが、感情や意志も部分的に表現される。ただし、これらの表現は言語の本質的な機能ではなく、むしろ副次的なものと捉えるべきだろう。単語の感情的な意味合いは文学的表現においては重要な役割を果たすが、科学的な思考においては排除されるべき対象である。我々は言語の感情的な側面に惑わされることなく、その本質的な機能を見抜く必要があるのである。

第三章 言語の音声

要約:
言語の音声は、調音器官の複雑な動きによって生み出される。子音と母音の区別、声帯の振動の有無、調音位置や調音方法の違いなどにより、多様な音が生成される。英語など個々の言語は、潜在的に可能な音声のうち限られたものを選択的に利用している。音素の実際の発音は、音声的文脈により異なる。個別言語の音韻体系は、一般的な音声学的過程を通じて長い時間をかけて形成されたものである。音声は言語の物理的実体だが、話者はその背後にある抽象的な体系を直感的に把握している。

重要なポイント:

  • 言語音声の多様性と個別言語による選択性

  • 子音と母音の区別、声帯の振動、調音位置と調音方法

  • 音素の実際の発音は音声的文脈に依存

  • 音韻体系の形成における音声学的過程の重要性

  • 音声の背後にある話者の直感的な体系理解

理解度確認のための質問:

  1. 言語音声の多様性はどのようにして生み出されるか?

  2. 個別言語の音韻体系はどのように形成されるか?

  3. 話者は音声をどのように認識しているか?

重要な概念:
音素:言語の音の最小単位。音素の交替で意味が変わる。
異音:音素の文脈による発音の変種。
調音法:音の生成における調音器官の動き方の類型。
音韻過程:個別言語の音韻体系の通時的な形成を導く一般的な傾向。

考察:
音声は言語の物理的実体であり、その多様性は驚くべきものがある。人間の調音器官は、実に様々な音を生成することができるのである。しかし、個別の言語は、その豊かな可能性の中から一部の音だけを選択的に用いる。それが各言語に固有の音韻体系を形作る。
興味深いのは、言語の音声が、純粋に物理的な実在ではなく、話者に内在化された心的実在でもあるという点だ。私たちは、自分の言語の音韻体系を無意識のうちに習得し、音声の背後にある抽象的な構造を直感的に把握している。
音声学と音韻論の研究は、言語の音の仕組みを理解する上で欠かせない。音声学は、調音器官の動きと音声の物理的性質に着目し、人間に可能な発音の範囲を探る。一方、音韻論は、各言語の音体系の構造的特徴を明らかにする。
個別言語の音韻体系がどのように形成されるかは、歴史言語学の重要な課題である。音韻変化の法則性を見出すことで、言語の歴史的な変遷を跡付けることができる。音韻体系の通時的な変化は、一見不規則に見えるが、より大きな音声学的な傾向に導かれている。
言語の音声が持つ特徴の豊かさと、個別言語によるその選択的な利用のメカニズムを解明することは、言語の本質を理解する上で不可欠だと言えるだろう。

第四章 言語に於ける形態・文法的手順

要約:
言語は、限られた数の音声型から、膨大な数の意味を生成するシステムである。文法カテゴリーによって意味が区別され、語形変化や語順によって意味が表示される。接辞や内部変化、重複、アクセントなど、様々な文法的手段が言語間で観察される。個別言語は、これらの手段を組み合わせて、独自の文法を作り出す。文法的意味は、語の要素の単なる足し算ではなく、全体としてゲシュタルト的に把握される。語順などの統語的な原理も重要な役割を果たす。言語によって、どのような意味領域を文法化するかが異なるのは興味深い。

重要なポイント:

  • 言語の文法は、限られた形式から豊かな意味を生成するシステム

  • 語形変化、接辞、語順など様々な文法的手段の存在

  • 文法的意味のゲシュタルト性

  • 統語的な原理の重要性

  • 個別言語の文法化の多様性

理解度確認のための質問:

  1. 文法的意味はどのように表示されるか?

  2. 言語はどのような文法的手段を用いるか?

  3. 個別言語の文法の多様性はどのような点に見られるか?

重要な概念:
語形変化:語の形を変化させることで文法的意味を表す方法。
接辞:語に付加される文法的な要素。接頭辞、接尾辞、接中辞など。
内部変化:語の内部の音交替で文法的意味を表す。母音交替、子音交替など。
重複法:語の一部を反復することで文法的意味を表す。
文法化:ある意味領域を文法的手段によって体系的に標示すること。

考察:
人間言語の驚異的な特徴の一つは、有限の形式から無限の意味を生成できることだ。個々の語は、文法的な要素の組み合わせにより、実に多様な意味合いを帯びる。文法カテゴリーは恣意的に見えるかもしれないが、言語使用に不可欠の認知的区分を反映している。
言語の文法的手段の多様性には目を見張るものがある。接辞、語形変化、重複、アクセントなど、様々な方法が駆使されている。これらの手段は、音声的な実体でありながら、非常に抽象的な意味機能を担う。
また、語の配列という統語的な手段も重要だ。語順は、意味解釈の手がかりとして機能する。主語、目的語といった文法関係は、語の形ではなく、その配列から判断されることが多い。
個別言語は、これらの普遍的な文法的手段を、独自の様式で組み合わせる。注目すべきは、言語によって、文法化の対象となる意味領域が異なることだ。ある言語では文法的に区別されることが、別の言語では語彙的に区別される。文法カテゴリーの普遍性を唱える一方で、個別言語に即して柔軟に記述する必要がある。
言語の文法は、人間の認知能力の反映であり、コミュニケーションの必須の手段だ。有限の形式から無限の意味を紡ぎ出す文法のメカニズムを解明することは、言語学の中心的な課題と言えるだろう。

第五章 言語に於ける形態・文法的概念

要約:
前章で見た文法的手法は、実際には様々な意味概念を表すために用いられる。言語の意味の骨格を成すのは、基本的な具体概念と、抽象的な関係概念である。両者は連続的で、多くの中間的な概念が存在する。具体概念は語根などの独立した形式で表されるのに対し、関係概念は、語順や文法的要素によって表示される。関係概念の中には必須のものと随意的なものがある。文法的手法は、意味を直接反映するとは限らず、形式の論理に支配されやすい。品詞の区別も言語により異なる。文の骨格は、主語と述語の結びつきである。

重要なポイント:

  • 言語の意味は、具体概念と関係概念に大別できる

  • 両者の間には連続性があり、中間的な概念が多数存在する

  • 具体概念は独立形式、関係概念は文法的手段で表示される傾向

  • 関係概念には必須のものと随意的なものがある

  • 文法は意味を直接反映せず、形式の論理に支配される面がある

  • 品詞の区別は普遍的でなく、言語により異なる

  • 主語と述語の結合が文の基本構造をなす

理解度確認のための質問:

  1. 言語の意味概念にはどのような種類があるか?

  2. 文法的手法は意味をどの程度直接的に反映するか?

  3. 文の基本的な構造は何か?

重要な概念:
基本的概念:事物、行為、性質など、言語の意味の中核をなす具体的な概念。
関係概念:事物間の関係を表す抽象的な概念。空間、時間、数、論理関係など。
派生的概念:基本的概念を修飾したり組み合わせたりして作られる概念。
具象関係概念:関係を表しつつも、多少の具体的意味を残す概念。
品詞:語を文法的な働きによって分類したもの。言語により区分が異なる。

考察:
言語は現実を概念化し、体系化する道具である。事物や出来事を分節し、それらの間の関係を示すことで、世界についてのモデルを作り上げる。その意味の体系には、普遍的な骨格があるはずだ。
言語の意味は、基本的な具体概念と、抽象度の異なる関係概念から成る。両者の対立は連続的で、多くの中間的概念が存在する。言語は柔軟に意味を組み立てる。しかし、その手段は完全に意味に支配されているわけではない。音韻的な偶然が文法を複雑化することもある。
また、言語によって、意味をどのように文法化するかは異なる。ある意味領域が、ある言語では義務的に標示されるが、別の言語では全く無視される。こうした違いは、言語使用の習慣と環境を反映している。
言語の意味は、語だけでなく、語の配列によっても示される。主語と述語の分節は、恐らくあらゆる言語に見られる。これは、行為者とその行為という認知の基本構造を反映しているのだろう。
文法カテゴリーの恣意性を認めつつも、人間言語に共通の意味の枠組みを探ることが重要だ。それは結局、私たちの心の仕組みを解き明かすことにつながるはずである。言語の意味は、認知と密接に関わっている。言語の意味構造を理解することで、人間の認知の普遍的な特徴が見えてくるかもしれない。
意味と形式の絡み合いを丹念に分析することが、言語学の重要な課題だろう。記述的研究を通じて、言語を越えた意味の骨格を明らかにすることが期待される。同時に、個々の言語がそれを具現する独自の方法を記述することも大切である。

第六章 言語構造の型

要約:
言語は、その文法構造のタイプによって分類できる。伝統的な「孤立語」「膠着語」「屈折語」という区分は不十分で、より精緻な類型論が必要である。言語類型を決める基準としては、語形成の方法(孤立、膠着、融合)、統語構造(関係概念の標示法)、形態法の複雑さ、概念の統合度などが挙げられる。これらの基準は相互に独立しており、あらゆる言語を単一の尺度で測ることはできない。類型間の差は連続的で、混合型も多い。類型は通時的に変化しうるが、全体的構造は比較的安定している。系統を異にする言語も、類似の類型的特徴を独立に発達させることがある。

重要なポイント:

  • 伝統的な形態類型論(孤立語、膠着語、屈折語)の問題点

  • 類型を決定する複数の基準:形態法、統語法、概念の統合度など

  • 各基準の相互独立性と類型間の連続性

  • 混合型の存在と類型の通時的変化

  • 類型的特徴の言語間の平行現象

理解度確認のための質問:

  1. 伝統的な形態類型論にはどのような問題があるか?

  2. 言語類型を決める主な基準は何か?

  3. 類型論の目的は何か?

重要な概念:
孤立語:語と形態素が1対1に対応する分析的な言語。語の内部構造が希薄。
膠着語:接辞により語を形成する言語。接辞の境界が明確で、意味が規則的。
屈折語:語形変化により文法範疇を標示する言語。語基と接辞が融合的。
統合度:1語が含みうる文法的意味の複雑さの度合い。
ピュア関係言語:関係概念を独立した形式で표す(語順など)。
混合関係言語:関係概念を他の意味と融合して示す(格語尾など)。

考察:
言語の文法構造を一般的な類型によって特徴づける試みは、言語の普遍性と多様性を理解する上で重要だ。しかし、従来の類型論は、形態法の違いのみに着目する傾向があった。孤立語、膠着語、屈折語という区分は、語形成の方法を主な基準としている。しかし、言語の特徴はそれだけでは捉えきれない。統語構造や概念の統合度など、他の側面も考慮する必要がある。
言語類型を決定する要因は複数あり、それらは必ずしも相関しない。ある言語が形態法では膠着的だが、統語法では孤立語的であることもありうる。類型間の差は連続的で、多くの言語が複数の類型的特徴を兼ね備えている。従って、言語を単一の尺度で分類することは不可能だ。
また、類型は通時的に変化しうる。屈折語が分析語化したり、孤立語が膠着語化したりすることがある。ただし、形態法ほど統語構造は簡単には変わらない。言語の基本的な類型は比較的安定しているようだ。
興味深いのは、類型的特徴の平行現象である。系統も地域も異なる言語が、類似の文法構造を独立に発達させることがある。これは、人間言語に共通の認知的基盤を示唆している。普遍文法の可能性を示す証拠とも言える。
言語類型論は、個別言語の記述と普遍言語学を架橋する分野だ。一方で、言語の構造的特徴を詳細に分析する必要がある。他方、言語を超えた一般性を追求することが求められる。機能主義的な視点を取り入れつつ、認知言語学とも連携することが望ましい。
類型論の最終的な目標は、人間言語の可能性の地図を描くことだろう。あらゆる言語に通じる構造の枠組みを同定し、その中で各言語の個性を位置づけること。それは壮大な課題だが、言語の本質を解明する上で避けて通れない道でもある。今後の類型論の発展に期待したい。

第七章 歴史的所産としての言語・漂流

要約:
言語は常に変化しており、その変化の方向性を「drift(言語変化の趨勢)」と呼ぶ。個人のレベルでは言語使用に微妙な差異が見られるが、個人の差異は社会的な「言語の通念」により相殺され目立たなくなる。しかし、集団全体の言語使用が一定方向に偏っていくことで、長い時間をかけて言語全体が変化していく。この漸進的な言語変化は、「言語のdrift」である。個々の変化は不規則で予測不可能に見えるが、長期的な観点から見ると言語それ自体に内在する「drift」の方向性が見えてくる。英語史上の事例を見ると、「whom」の消失につながる複数の要因の絡み合いが観察される。このように、「drift」は言語の各要素に複合的に作用することで、長期的かつ大規模な言語変化を引き起こす。言語変化は言語外の社会的要因だけでなく、言語の構造自体にも規定されるのである。

重要なポイント:

  • 言語は常に変化しており、変化の方向性を「drift」と呼ぶ。

  • 個人レベルの言語の差異は、社会全体の「言語の通念」に飲み込まれる。

  • 長い時間をかけて集団全体の言語使用が変化することで、言語のdriftが生じる。

  • driftは予測不可能な個別の変化ではなく、言語に内在する変化の方向性を指す。

  • 英語の「whom」の消失は、複数の言語内的要因が絡み合った結果である。

  • 言語変化は、言語外の社会的要因だけでなく、言語の構造自体にも規定される。

理解度確認のための質問:

  1. 「言語のdrift」とは何を指すか。個人レベルの言語の差異とどう関係するか。

  2. 英語の「whom」はなぜ消失しつつあるのか。その要因は何か。

  3. 言語変化の原因は何か。言語外の社会的要因と言語の構造はどのように関わるか。

重要な概念:

  • drift: 長期的かつ大規模な言語変化の方向性。個別の変化は不規則でも、全体としての方向性が見られる。

  • 言語の個人差: 個人によって言語使用は微妙に異なるが、社会的な通念により平準化される。

  • 言語変化の要因: 言語外の要因(社会・文化・歴史)と、言語内在的な要因(構造・体系)の複合的作用。

考察:
言語変化は不可避であり、変化の方向性を「drift」として捉えることは言語の本質を理解する上で重要な視点だと思う。個人レベルでは変異に富む言語使用も、社会的な同調圧力によって均されるメカニズムには興味をそそられる。集団レベルでは漸進的かつ複合的に変化が進むため、短期的には予測が難しいことも納得できる。英語の「whom」の消失は、格の平準化、疑問詞の強勢、前置詞の定着など、通時的な英語の構造変化の帰結と見ることができる。外的要因か内的要因かを問うよりも、両者の複雑な相互作用こそが言語変化の本質であるという指摘は示唆に富む。言語変化の普遍性と個別性のバランスをどう理解するか。「drift」の概念は、言語の変化と多様性を統一的に説明する有力な視点を提供していると感じた。一方で、drift説で言語変化の全てを説明できるのかどうかは議論の余地がある。個別の要因分析も必要であろう。言語の変化と普遍性、そして人間の認知能力の関係を探求することで、「人間とは何か」という根源的な問いへと我々を導いてくれる刺激的な論考だと感じた。

第八章 歴史的所産としての言語・音韻法則

要約:
音韻変化は、一定の法則性を持って進行する。「音韻法則」とは、ある音が特定の条件下で別の音に規則的に変化することを指す。英語とドイツ語の歴史を比較すると、両言語で平行した音韻変化が見られることから、祖語から受け継いだ変化の傾向、つまり「drift」の存在が示唆される。母音が後続の母音に同化するウムラウト、語末音の弱化、口蓋化、二重母音化など、同種の音韻変化が繰り返し観察される。もっとも、音韻変化は機械的に規則を適用するだけではない。各言語の音韻体系のバランスを保つように変化が進むのであり、体系の無秩序な崩壊は回避される。子音が音声化したり硬口蓋化したりする事例は、音韻パターンを安定に保とうとする自己修復能力の表れと言える。つまり、音韻法則は単なる物理的・生理学的な法則ではなく、言語の記号的体系性という心的実在を反映しているのである。

重要なポイント:

  • 音韻変化には一定の法則性があり、「音韻法則」として記述できる。

  • 英語とドイツ語には、祖語に由来する平行的な音韻変化(drift)が見られる。

  • ウムラウト、語末音の弱化、口蓋化、二重母音化など、類似の変化パターンが繰り返し現れる。

  • 音韻変化は機械的ではなく、音韻体系のバランスを保つように自己修復的に進行する。

  • 子音の音声化や硬口蓋化は、音韻パターンの安定を保つ心的メカニズムの表れである。

  • 音韻法則は単なる物理法則ではなく、言語の記号的体系性を反映した心的実在である。

理解度確認のための質問:

  1. 「音韻法則」とは何か。どのような特徴を持つか。

  2. 英語とドイツ語の音韻史に見られる類似性とは何か。それが示唆することは何か。

  3. 音韻変化が言語の記号的体系性を反映しているとはどういう意味か。

重要な概念:

  • 音韻法則:ある音が一定の条件下で別の音に規則的に変化すること。

  • 音韻変化のdrift:同系の諸言語に見られる類似の音変化傾向。祖語の特性の反映。

  • 音韻体系のバランス:個別の音韻変化は、音韻体系全体のバランスを保つように進行する。

  • 言語の自己修復能力:体系の崩壊を避け、パターンの安定性を保つはたらき。

  • 音韻法則の心的実在性:音韻法則は単なる物理法則でなく、言語の記号性に根差した心的実在。

考察:
音韻変化を貫く法則性を解明しようとする筆者の視点は、言語の通時的研究において極めて重要だと思う。英独両語に見られる母音変化の平行性は、同系言語に共通する変化の方向性(drift)の存在を強く示唆している。drift説は、一見不規則に見える個別言語の変化を、より大きな枠組みから整理するための強力な概念装置だと言える。
ただし、driftの実在性を実証するには、さらに綿密な通時的研究の積み重ねが必要とされるだろう。個別の音韻変化が全体のバランスを保つように自己修復的に進むという指摘も示唆に富む。変化は決して無秩序に起こるのではなく、言語の体系性を損なわないように調整されているのだ。音韻法則が言語記号の心的実在性に根差すという洞察は、生成文法理論の根幹をなす直観とも通底するものがある。
音韻変化のメカニズムをめぐっては、今なお多くの謎が残されている。法則の背後にある物理的・生理学的要因と心的要因の交錯を丹念に解きほぐすことで、人間言語の本質がさらに明らかになるはずだ。一方で、音韻変化をあまりに法則的に捉えることの危険性も意識すべきだろう。データに還元しきれない変化の個別性や多様性にも、言語の本質を映し出す何かがあるように思う。言語変化の普遍性と個別性、規則性と偶然性。その絶妙なバランスのうちにこそ、言語のダイナミズムが宿っているのかもしれない。

第九章 言語の相互影響

要約:
言語間の影響関係は、語彙の借用から始まり、音韻・形態・統語の各レベルに及ぶ。もっとも借用されやすいのは語彙だが、語彙借用の度合いは、言語の構造的特徴によっても異なる。英語は屈折語尾を失う一方で、ロマンス語由来の複合語を数多く取り入れている。一方、多くのアメリカ・インディアン諸語では、借用語はほとんど見られない。音韻や文法の領域でも、隣接言語との接触により、類似の特徴が現れることがある。たとえば、英語とドイツ語はともに、ムラウト(母音変化)による複数形の形成や、語順による統語機能の標示など、印欧祖語に由来する構造的な類似性を示している。また、リトアニア語は、かつての印欧語の格組織をよく保持しているが、これは周辺言語の影響が少なかったためと考えられる。文法の領域での影響関係は、表層的な借用にとどまることが多い。だが、一部の研究者は、隣接言語間の構造的な類似性の背景に、より深い系統関係の可能性を指摘する。この問題を解くには、さらなる比較研究の積み重ねが必要となるだろう。

重要なポイント:

  • 言語間の影響関係は、語彙、音韻、形態、統語など、多様なレベルに及ぶ。

  • 語彙の借用は最も一般的だが、借用の度合いは言語の構造的特性とも関係する。

  • 英語とドイツ語には、印欧祖語に由来する形態・統語上の平行性が見られる。

  • リトアニア語の格組織の保守性は、周辺言語の影響の少なさを反映している。

  • 文法の領域での借用は表層的なものにとどまることが多い。

  • 隣接言語間の構造的類似性は、言語間の系統関係を示唆する可能性がある。

理解度確認のための質問:

  1. 言語はどのようなレベルで相互に影響を及ぼし合うか。最も一般的なのは何か。

  2. 英語とドイツ語に共通して見られる形態・統語上の特徴とは何か。その起源は何か。

  3. 言語間の文法的影響関係について、どのような議論があるか。

重要な概念:

  • 言語接触:地理的に隣接する言語間の相互交流。語彙や文法の面で影響を及ぼし合う。

  • 借用:ある言語が他言語から語彙や文法的特徴を取り入れること。語彙の借用が最も一般的。

  • 言語の類型:言語の形態的・統語的特徴の類似性に基づく分類。互いに影響を及ぼし合う。

  • 汎言語的傾向:世界の多様な言語に共通して見られる構造的特徴。普遍性の現れと考えられる。

  • 言語同盟:隣接する複数の言語に見られる、起源の異なる構造的特徴の収斂。

考察:
筆者の指摘を通して、言語の多様性が単に個別の差異の集積ではなく、言語間の複雑な影響関係の産物でもあることが見えてくる。語彙や文法の借用・転移・収斂のプロセスを丹念に追うことで、個々の言語の成り立ちや系統関係についての理解が深まるはずだ。
英語とドイツ語の比較は、両言語に共通する変化の方向性(drift)を浮き彫りにしている。かつて獲得した構造的特性を維持しつつも、新たな変化を被るというダイナミズムは、言語の生命力の表れと言えるかもしれない。一方、リトアニア語の事例は、周囲からの影響を相対的に受けにくい地理的・文化的条件が、言語の構造的保守性を支えることを示唆している。
言語接触による影響が、個別言語の変化を方向づけるのか、それとも言語に内在する変化の潜在性を顕在化させるに過ぎないのか。この問題を考えることは、言語の本質を探る上で重要な示唆を与えてくれる。表層的な語彙の借用から、構造的特徴の収斂まで。接触のあり方が多様であるだけに、相互影響のメカニズムの解明には、綿密な事例研究の積み重ねが欠かせない。
同時に、変化を生み出す言語の普遍的な性質についても、さらなる考究が必要だろう。一見ランダムな変化の背後に、人間言語に共通する認知的・機能的制約が潜んでいる可能性は十分にある。比較言語学と類型論、通時的研究と共時的研究を架橋することで、言語の多様性と普遍性、変化と不変性のダイナミックな相関が明らかになるはずだ。
個別と普遍、変化と持続の絶え間ない綱引き。言語の本質は、その力動的なプロセスそのものの中に宿っているのかもしれない。一つ一つの言語事象を着実に記述する地道な営みを通して、人知の創造物としての言語の神秘に一歩ずつ近づきたい。そして、その営為を通じて得られる洞察を、ひいては人間そのものへの理解へとつなげていく。そうした言語研究の意義を、改めて教えられる思いがする。

第十章 言語と人種と文化

要約:

言語、人種、文化は互いに独立した概念であり、単純に対応関係にあるわけではない。言語の分布は人種や文化圏と完全に一致するわけではなく、ある言語が別の人種や文化圏に広がることもある。英語を例にとると、英語を母語とする人々は単一の人種ではなく、ゲルマン系、ケルト系など多様な人種的背景を持つ。また、英語圏でも米国とイギリスでは文化的な違いが大きい。一方、言語と文化が密接に関係する場合もある。語彙は文化を反映するし、言語の形式も文化的価値観に影響を受ける。ただし、言語の形式と文化の関係は必然的なものではなく、歴史的な偶然によるところが大きい。我々は言語、人種、文化の相互関係を慎重に見極める必要がある。

重要なポイント:

  • 言語、人種、文化は互いに独立した概念である

  • 言語の分布は人種や文化圏と必ずしも一致しない

  • 英語を母語とする人々は多様な人種的背景を持つ

  • 英語圏でも米国とイギリスでは文化的な違いが大きい

  • 語彙は文化を反映するが、言語の形式と文化の関係は偶然的である

理解度確認のための質問:

  1. なぜ言語、人種、文化は互いに独立した概念と言えるのか?

  2. 英語を例にとって、言語と人種の関係はどのようなものか?

  3. 言語と文化の関係について、著者はどのように述べているか?

重要な概念:

人種:身体的特徴によって分類される人間集団。
文化圏:共通の文化的慣習や信念を持つ地域。
文化的価値観:ある文化に特有の基本的な信念や態度。

考察:

本章では、言語、人種、文化の関係について重要な洞察が提示されている。我々は安易にこの3つの概念を結びつけがちだが、著者が指摘するようにそれらは独立した現象であり、常に一致するわけではない。特に言語と人種の関係については慎重に考える必要がある。英語という一つの言語を見ても、その話者は人種的に非常に多様であり、単一の民族や人種と結びつけることはできない。同様に、文化的な違いも言語の違いと常に一致するわけではない。英語圏でも米国とイギリスの文化は大きく異なるのである。

一方で、言語が文化を反映することは確かである。特に語彙は文化的慣習や価値観と密接に関連している。ある文化で重要な概念は、その言語で豊かな語彙を持つ傾向にあるだろう。ただし、著者が強調するように、言語の形式、つまり文法構造などと文化の関係は偶然的であり、必然的な結びつきはない。文化が言語に影響を与えることはあるが、両者の関係はもっと柔軟で複雑なものなのである。

言語、人種、文化をめぐる議論は今日でも重要なテーマであり、安易な決めつけは避けなければならない。個々の事例をきめ細かく観察し、それぞれの概念の独立性を認識しつつ、相互の関係性を慎重に考察することが求められる。著者の議論は、このような冷静な態度の必要性を説得的に示していると言えるだろう。

第十一章 言語と文学

要約:

文学は言語を媒体とする芸術であり、各言語の個性が文学の形式や表現に大きな影響を与える。詩の韻律や形式は言語の音声的特質と密接に関係している。英語の詩はストレスアクセントを基本とし、フランス語の詩は音節数と脚韻に基づくが、これは両言語の音声的性質の違いによるものだ。一方、偉大な文学作品には、特定の言語を超えた普遍性がある。シェイクスピアの作品は英語に根ざしながらも、他の言語に翻訳可能な普遍性を持っている。つまり、文学には言語に依存する側面と、言語を超越する側面の両方があるのである。文学の言語的制約は、作家の創造性を妨げるどころか、かえって創造の契機となる。

重要なポイント:

  • 文学は言語を媒体とする芸術である

  • 各言語の個性が文学の形式や表現に影響する

  • 詩の韻律や形式は言語の音声的特質と密接に関係している

  • 偉大な文学作品には特定の言語を超えた普遍性がある

  • 文学の言語的制約は創造性の源泉でもある

理解度確認のための質問:

  1. なぜ文学は言語を媒体とする芸術と言えるのか?

  2. 英語とフランス語の詩の形式の違いは何に起因するか?

  3. 文学における言語の制約と創造性の関係をどのように捉えられるか?

重要な概念:

韻律:詩などの言語芸術における音の調和的な反復や交替。
脚韻:詩の行末で同じあるいは類似の音を反復させること。
普遍性:特定の言語や文化を超えて広く受け入れられる性質。

考察:

本章で展開される議論は、言語と文学の密接な関係を浮き彫りにしている。文学が言語を表現媒体とする以上、各言語の特性が文学作品の形式や表現に影響を与えるのは当然のことと言える。特に詩の韻律や形式は、言語の音声的・韻律的特質と不可分である。英語の詩がストレスアクセントを基本とし、フランス語の詩が音節数と脚韻を重視するのは、両言語の音声構造の違いに由来している。このことは、言語の制約が文学の多様性を生み出す一因であることを示唆している。

一方で、著者は偉大な文学作品が特定の言語を超えた普遍性を持つことを指摘している。シェイクスピアの作品は英語で書かれているが、翻訳を通じて他の言語圏でも広く享受されている。これは、文学が言語の制約を超えて人間の普遍的な感情や経験を表現しうることを物語っている。文学には言語に依存する側面と、言語を超越する側面の両方があるのだ。

ただし、言語の制約は文学の創造性を妨げるどころか、かえって創造の契機となることもある。与えられた言語の枠組みの中で、いかに新たな表現を生み出すかは作家の創意工夫にかかっている。言語の限界が想像力を刺激し、独自の文体を切り拓く原動力となるのである。

言語と文学の関係を考察することは、言語の本質と可能性を探る手がかりともなる。文学が言語の芸術である以上、言語の理解なくしては文学の真の鑑賞は難しい。同時に、文学作品は言語の新たな可能性を切り拓き、言語観を深化させずにはおかない。言語学と文学研究の協働が、言語と人間の理解に大きく寄与するゆえんである。

書評

Edward Sapirの「Language」は、言語の本質や構造、変化について考察した言語学の古典的名著である。Sapirは、言語を人間の精神の所産であり、思考と不可分な存在であるとした。そして、言語の形式や構造が人間の思考を規定していると論じた。これは、現代言語学におけるサピア・ウォーフの仮説として知られる言語相対性理論の原型となった考え方である。

Sapirはまた、言語の音韻、文法、語彙といった側面を詳細に分析し、それぞれの言語に固有の特徴があることを明らかにした。言語の類型論的研究の先駆けともなったこの視点は、現代言語学において発展を遂げ、世界の言語の多様性の解明に大きく貢献している。

一方、Sapirは言語の恣意性を強調するあまり、言語と思考の関係を矮小化しすぎたきらいがある。現代言語学では、認知言語学の隆盛により、言語が認知の制約を受けつつも、認知に影響を及ぼしうることが明らかになっている。言語の恣意性と認知的動機づけの両面を捉えることが肝要である。

また、Sapirは言語、人種、文化の関係について積極的な相関を認めなかったが、現在では三者の相互作用についてより複雑なとらえ方がなされている。とりわけ、言語と文化の密接な関係は、言語人類学、社会言語学などで解明が進んでいる。

Sapirの議論は全体として、言語の一般特性を追求するものであり、個別言語の研究という現代言語学の主流からは距離がある。しかし、言語の本質を探求し、人間の精神との関わりを問うたその視座は、今なお言語研究の指針たりうる。言語の普遍性と多様性を理解し、人間の本性に迫る営みとして言語学を位置づける彼の言語観は、現代言語学が学ぶべき点である。

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