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格ゲーが盛んだった頃のゲームセンターの話③ 強制シャットダウンされる筐体

ゲーセンでプレイ中に筐体の電源が落とされる。
こういう経験をした事があるだろうか。
電源を落とすのはゲームセンター側だが、ゲーセン側の判断に間違いはない。
強制的にシャットダウンされるのも当然だ。

なぜなら閉店時間なのだから。


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・閉店5分前
閉店間際ということで、対戦をちょうどよく切り上げたプレイヤー達が出口へ歩いていく。
店員さんは灰皿を回収しながら、プレイされていないゲームの椅子を筐体の上に上げていき閉店の準備を黙々と進める。
そんな店内で両替機にダッシュするプレイヤーが1人。100円玉が排出される時間も惜しいという雰囲気が全身から伺える。
閉店寸前だというのにまだ対戦を続けるのかよと思うが、店員さんも慣れた光景のため気にも留めない。
両替を終えたプレイヤーが筐体へ戻り100円を叩き込み再戦の狼煙が上がる。
帰ろうとしていたプレイヤーも足を止め、後方腕組みベガ立ち姿勢で観戦を始めた。
いや、お前らは早く帰れよ。

・閉店1分前
店員さんが配電盤の蓋を持ち上げる。
こちらはいつでも準備OK。

唯一対戦中の筐体。
1-1で最終ラウンドへ絡れ込み、対戦がスタート。お互いに牽制を交えつつ、相手が攻撃をスカした隙に差し込んだ1P側の小パンが刺さる。コンボ始動前に画面端までの距離を感覚で掴んでいた1P側が距離限コンボを瞬間の間に選択。小パン始動のためダメージは伸びないが、相手を画面端まで運びダウン奪い、ゲージも回収して次のコンボで相手を倒せる状況を作り出した。起き攻めには詐欺飛びを選択。無敵技での切り返しを想定した安全択。
これを2P側は読んでいた。
起き攻めをガード後、このゲームのシステムである「ガードキャンセル」を交えた時間制限付きのキャラクター強化を発動。通常のゲージとは別に用意されている特殊ゲージを使用した行動のため使用できるタイミングは限られるが、起き攻めをガードしたタイミングで丁度特殊ゲージが溜まったのだ。
フレーム状況は2Pが微有利。
小パンが刺さるが壁背負いのため通常のコンボでは完走後の状況が悪いので、ダメージは安くても状況を意識し裏周りコンボを選択。相手に壁を背負わせ起き攻めへ移行する、先程とは逆の構図が出来上がった。
一瞬の間に互いの読み合いが始まり、逆択やそれに対しての逆択など読み合いが何周も行われる。両者が辿り着いた最適解が交差す------

バツン!

画面がブラックアウト。
先程までの熱戦が嘘のように、画面は何も写していない。完全なる暗転。
閉店時間に伴い電源が落とされたのだ。
どんなに熱戦が展開されていようと電源OFFには勝てない。
夏草や 兵どもが 夢の跡。

そそくさと立ち上がり出口に向かう両者だが、あのまま続いていたら俺が勝っていただの、返して俺の勝ちだの、決着が着かなかった対戦に対してマウントを取りながら歩いていく。
すれ違う店員さんへ「ありがとうございました」のお礼も忘れない。
出口を潜ったらそのまま同ビル内にあるラーメン屋へ向かう一同。私の周りのゲーセン勢は腹が減ったらとりあえずラーメンを食べに行くという謎の習性を持っている。
明日も対戦するであろう両者、今はただ腹を満たして明日への闘志を充填するのだ。

今思うと本当に迷惑な客だったなぁと思う。
店員さんも内心早く帰れよと思っていた事だろう。本当に申し訳ございませんでした。

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