介護で思ったこと ⑧ 自宅に病室がやって来る
在宅診療を実際に手配し始めるよりずっと前、
つまり当事者意識が希薄だった頃。
自宅で過ごすより
ゆったりとした居住空間の
医療・介護・生活が融合した施設に入居した方が
安心、快適に過ごせるのではと
私はぼんやり考えていたのだ。
△ 施設もいいのではと思っていた時期もあった
お母様がとある民間老人施設で生活している、
友人から、
『施設に入居した経緯、
お母様が快適に暮らしている(多分?)なこと、
そして何より家族が心の平安・安心を得られていること』
を聞いていたこともあり、
複数民間施設に問い合わせ資料を取り寄せ、
そのうちいくつか見学。コロナ禍真っ最中で
居住空間への立ち入りは不可だったけれど
雰囲気を感じ、丁寧な説明を受けて帰った。
ただここなら父も快適に暮らせるのではと思える
サービス、設備がいいところは
それなりにどころか、かなりお高くてびっくり!
経済的事情と父の強い希望、
そして私含め家族の固まった「覚悟」、
そして受けてくれる医師が揃い
在宅医療の準備が始まった。
△ 風船の中の空気を抜き切った
A、Bと二つの選択肢を見つけてくれた、
区の在宅医療相談担当者。
彼女を介して辿り着いたA 診療所の院長は
人の心を殻を解くのが上手な人だった。
入院中の大学病院の担当医からの
診療情報提供書とCD-ROMの画像に
目を通した後、私の方に向き直し、
私の話をじっくりと聞いてくれる。
溜まりに溜まった不安、混乱が詰まり
パンパンに膨れ上がった風船から
空気が抜けていくように、
初対面のアラ還女性が一気に吐き出す、
それまで口に出せなかった思い、考えを
受け止めてくれた。
△ 自宅に病室がやって来る
それから彼が話す番。
まず父の予後についての彼の見解。
思っていた以上に深刻でショック!
残されている時間は月単位だとは!!
そして次に在宅診療の方針説明。
在宅診療に携わるようになったきっかけである、
彼の国内外での医療現場の経験、
個人的経験を交えて話してくれ、
父のケースでできる事の説明があった。
施設に入所、入院すれば医療従事者の手が
そばにあり、本人も家族も安心安全と
思えるのではないか、
それに弱っていく父の姿を傍で
見続けるのが、辛く怖いとの思いがあるとも
本音も伝えた上で、
実は長期療養型施設やホスピスへの入所入院も
考えていたこともあると私は話した。
そんな私に彼は
病と闘っている本人が1番辛いのに
見るのが辛いなんて言ったから
可哀想だよ。見捨てられたと思うじゃない?
施設医療スタッフは優しく接してくれるよ、
だってもう残り少ない時間を
生きている患者だから。
でも優しい言葉掛けに
心の底から癒されると思う?
それにいくら医療スタッフが近くにいても
無音の病室のベッドに横たわり
刺激もなくずっと天井見てるだけの生活より
生活音がして家族の気配を感じる
日常の中で過ごした方がずっと幸せでしょ?
そこに私たちが参加してサポートするから、
自宅に病室がやってきたと思って任せて欲しい。
と力強い言葉をかけてくれたのだ。
全く胸がすく思い。
そして思わず目から涙が溢れてしまった。
△ 準備万端
こうして訪問診療開始へ向けて
具体的に動き始めた。
「う〜ん。
お父さんのケース結構ヘビーだからねー。
(⤴︎明るい調子で)
経験豊富な看護師さんがいる、
訪問看護ステーションにお願いするね」
とその場でちょっと悩んだ上で、
看護師さんも決めてもらえた。
医師、看護師さん、ケアマネさん連携のもと
父の退院に向けての受け入れ態勢が整っていく。
△ おまけ
院長先生は以前南半球某国某都市の大学病院で
研修生活を送っていた事がある。
これはHPの経歴で知った。
私たち家族もかつて同じ都市で暮らした時期があり
その大学病院も知っている。
あの国の医療に関わっていた人ならば、
優しいに違いない、
と根拠のない感情加点があったことも
Aを選んだ大きな理由。
大正解だった。
このことについてはまたいつか書くつもり。
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