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闇のバイブル 聖少女の詩


映画『闇のバイブル 聖少女の詩』を観ました。1970年のチェコスロバキアの作品です。ヴァルリエという13歳の少女の初潮とそのあとの1週間を描いています。
出てくる3人の女性は、概念としての女性の人生を映しています。少女であり、大人の女性になっていくヴァルリエ、結婚をするヘドヴィカ、ヴァルリエの祖母であるエルサ。
大人になっていく時に、王子の仮面を被った(仮装の)モンスターを象徴とする男性が次々に現れます。映画の中では、死にかけた者、罪と欲におぼれて自らを見失ったものは(気づかない者も)うすい黄緑の顔色をしています。
ヴァルリエを襲おうとし、死にかけた司教をヴァルリエが助けても、彼女に司教は「私をたぶらかそうとした邪悪な少女め!」と暴言を吐き、彼女をおとしいれ火あぶりにしようとします。
兄のくれた真珠のイヤリングが、幾度も彼女(ヴァルリエ)を救います。その兄ですら、途中黄緑の顔色をしています。兄がヴァルリエに送った手紙がとても好きです。ユーモラスで遊びに溢れ、お洒落です。
ヘドヴィカとヴァルリエが「私には女友だちがいないから」と言って「嬉しいわ、嬉しいわ」とキスをしてベッドに2人で寝ているシーンが心にそっと沁みました。
欲に溺れてヴァルリエのものであるべき家を売り、恥じらい無く若返る祖母エルサが、老境にして女性の自分を獲得する様子が、下品な程いきいきと描かれています。ヴァルリエが彼女(エルサ)を「お祖母様」と呼び、とても敬虔に神を信仰し、振る舞いは大人の女性のようで、時代を感じますが、好ましくも見えました。

この作品を観る前に、この作品をいくつかの他作品と本などの文章を引用して解説した動画(海外の女性が語り手)をYouTubeで観ていたので、道理がわかって良かったです。
映画『ひなぎく』を好きな人は100%ハマるでしょう。
とてもお洒落な、可愛さと奇怪さでいっぱいの映画です。

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