ママのジャム

朝、キッチンにはしかめっつらをしたママが
果物と砂糖のたくさん入った
お鍋をくるくるとかき混ぜていた。
年に数回ママはこうして、怖い顔をしながらジャムを作る。

最初こそは呑気に「ママの作るジャムおいし〜」
などと言っていたけど。
そんな時パパはジャム作りをするママを見て
申し訳なさそうにする。
次の日は決まってママの作ったジャムをパンに
たっぷり塗ってママに「この前はごめんね」という
ママはその言葉に「分かればいいのよ」と嬉しそうな顔をして言う。

その光景を何度か見て2人が喧嘩をした時のルーティンなのだと察した。
今回はなんのジャムだろうと思いながら。
「パパ？今回は何で喧嘩したの？」ときいた
パパは「今回はママが気に入ってたマグカップを割っちゃってな」と苦笑いをしながら言う。
毎回喧嘩の内容がくだらなすぎるので少し笑って
「早く仲直りしてよ？じゃないと困る」と言っておいた。

ママの作るジャムはとても美味しい。
可愛い喧嘩の内容がママのジャムを
もっと美味しくさせてるのかもしれない。

次の喧嘩は何だろうなと楽しみにしながらイチゴジャムを塗ったパンをかじった。