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『Alchemical: Volume 1』、ずっと待ってました。

このページに足を運んでいただき、ありがとうございます。
待ちすぎて首がとっても長くなった、黒木りりあです。

何を待ちすぎていたかというと、ダヴ・キャメロン(Dove Cameron)のデビューアルバムとなる、『Alchemical: Volume 1』のリリースです。どれだけ待っていたかというと……冗談じゃなく約10年です。


ダヴ・キャメロンとは

ダヴ・キャメロンはここ数年は歌手としての活動を主としていますが、元々は女優としての活動で知られていました。彼女のブレイクのきっかけはディズニーチャンネルのドラマシリーズ『うわさのツインズ リブとマディ』("Live and Maddie")です。主人公のリブとマディを一人二役で演じきった彼女の演技は高評価で、一気にブレイクを果たしました。このドラマでは主題歌を担当し、歌手としても人気に。更に、リブは歌える女優という設定だったため、劇中でも歌声を複数回披露しています。
ドラマが始まったのが2013年とちょうど10年前。当時から彼女のデビューアルバムを待つファンは多く、私もそのうちの一人です。なので、『Alchemical: Volume 1』はまさに10年越しの待望のデビュー作なのです。

キラキライメージからの脱却

『うわさのツインズ リブとマディ』の役柄のイメージや、ブロンドにグリーンアイズかつキュートな笑顔から、彼女にはキラキラとしたチャーミングなイメージがついていました。しかし、本人曰く性格は根暗でパブリックイメージとは異なるとのこと。
そんな彼女のもう一つの代表作がディズニーチャンネル・オリジナルムービーの「ディセンダント」("Descendants")シリーズです。ディズニーでおなじみのおとぎ話に登場する悪役たちの子供たちがおとぎの国でプリンセスの子供たちと一緒に生活したら……?をコンセプトとした作品で、世界的に大ヒットを収めました。ダヴは本作でマレフィセントの娘で主人公のマル役を演じ、こちらも人気を博しました。本作はミュージカル映画だったので、こちらでも歌とダンスを披露しています。

また、『うわさのツインズ リブとマディ』終了後にはドラマ『エージェント・オブ・シールド』("Agents of S.H.I.E.L.D.")に出演。ヒロインへ著しい執着をみせる、殺し屋として育て上げられた少女ルビー役を演じ、話題となりました。

大切な人との別れ

順調にキャリアを積み上げて行く一方で、彼女は大切な人の死を経験しています。
彼女がまだ15歳だった頃に、父親が自殺。その死がいかに彼女に衝撃だったかについて、複数回にわたり公の場で心情を吐露しています。

2016年には、『うわさのツインズ リブとマディ』に登場する『What a Girl Is』という楽曲に共に参加した歌手のクリスティーナ・グリミーが銃殺される事件が勃発しました。コンサート会場でクリスティーナの熱狂的なファンだという男性が、無理心中を図ろうとしたとのことで、犯人は彼女を撃った直後に自殺しました。まだ22際という若さで命を奪われた才能あるシンガーの死に、世界中が大きな衝撃を受けました。共演経験のあるダヴもまた、彼女の死にうちひしがれたと言います。

2019年、「ディセンダント」シリーズでダヴと共演していた俳優のキャメロン・ボイスがまだ20歳の若さでこの世を去りました。死因は持病のてんかんによる急性の発作でした。『ディセンダント3』の放送を直前に控えた突然の訃報に世界中が心を痛めました。キャメロンとは家族のように親しかったダヴは、彼の死のショックから立ち直ることの辛さを度々告白しています。彼の家族が立ち上げたチャリティーへの参加や、彼のライフワークを引き継ぐなど、彼への敬意と愛を今でも示し続けています。

クィアのアイコン、そしてシンガーとして

ディズニーチャンネル時代、様々な別れを経験しながらもダヴがソロのシンガーとして動き始めたのは、2019年。彼女の音楽の特徴はどこかダークな印象が漂う曲調と、クィアなメッセージ性です。

彼女の音楽の方向性が最も明確に示されたのは、映画の予告編にも使用されたことのある2020年リリースの『We Belong』。この曲以前から、彼女の楽曲は性別を限定する表現が使われていないことが多くありましたが、本作でも同様に、性別を限定する表現は使用されませんでした。一般的にへテロセクシュアルを基準とした、性別を限定するような歌詞が少なくない状況において、この傾向は彼女の音楽の特徴の一つと言えるでしょう。
更に、本楽曲のリリックビデオでは、へテロセクシュアルに限らない、様々なセクシャリティを有するカップルがイラストで描かれました。もともとは男女のカップルしか描かれていなかったところを、ダヴ自ら依頼して作成し直してもらった、とのことです。

そして、ダヴをシンガーとしてスターダムにのしあげたのが、2022年にリリースされた『Boyfriend』です。ポップスでありながらもゴシック調でキャッチーなメロディーは、一度聞いたらなかなか耳から離れません。
これまでとは違い、性別を限定する表現をタイトルや歌詞に使用する一方で、「あなたの彼氏よりも私の方があなたを正しく扱うことができる」と女性が女性に向けたラブソングという点でも話題となりました。ダヴ自身もこの曲を「最高にクィアな曲」と称しており、LGBTQ コミュニティからも支持される曲となりました。更に「今の彼氏はあなたにふさわしくない」という楽曲のメッセージから、女性をエンパワーメントする曲としても支持されています。
この曲のヒットを受けて、2022年にダヴはMTV Video Music Awardsにて最優秀新人賞をはじめ、いくつもの賞を受賞しました。

待望のデビューアルバム

ダヴは同じく2022年に、シングル『Breakfast』をリリース。同様にダークな雰囲気を漂わせたポップスのメロディーに、男女のパワーバランスを逆転させた歌詞でヒット。この歌詞の世界観は『Breakfast』のミュージック・ビデオでも再現されいるだけでなく、女性の中絶を禁止する法案に対して疑問を投げ掛ける内容となっており、大きな話題を呼びました。このミュージック・ビデオで2023年のMTV Video Music Awardsにて社会的なメッセージの込められたミュージック・ビデオ部門の最優秀賞を受賞しました。

そんなダヴのデビューアルバムは二部構成となっており、その前半パートである『Alchemical: Volume 1』が本日、2023年12月1日に世界同時リリースされました。
昨年のヒット曲、『Boyfriend 』や『Breakfast』を含む全8曲が収録されています。
それと一緒に、アルバム収録曲『Sand』のミュージック・ビデオも公開されています。『Sand』は終わることが分かっているけれども、簡単に手放すことのできない愛について歌った、切ない楽曲です。この楽曲も性別を限定する単語が使用されていません。
アルバムには、他にもディセンダントのマルを彷彿とさせるような楽曲なども収録されています。割と短めな楽曲が多いアルバムなので、少しでも興味のある方は気軽に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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