「サヨナラの意味」の歌詞解釈/乃木坂46

昔からアイドルというものにはまったく興味関心のない私ですが、大好きな二曲があります。
それは『シンクロニシティ』と『サヨナラの意味』です。
今回はそのうち『サヨナラの意味』を紐解こうと思います。

この曲は、一行ずつ丁寧に歌詞を追っていくよりも、全体的にまるっと解釈したほうが伝わりやすいと思います。
ですので、まずはざっと歌詞を通して読んでいただけると嬉しいです。

*全歌詞はこちら

・・・どうでしょう。非常に物語的だと思いませんか。
というのも時間の流れがはっきりと描かれていて、その節々に起承転結があるためです。

電車が近づく 気配が好きなんだ
高架線のその下で耳を澄ましてた 
柱の落書き 数字とイニシャルは 誰が誰に何を残そうとしたのだろう

まず冒頭で、恋人と待ち合わせをしている主人公が見えます。
よく観光地にもありますよね、ハートで囲まれたあの落書き。
「ずっといっしょ」なんてメッセージが添えられていたりもします。
これ実は物語の伏線になっていますので後ほど解説しますが、彼はなんとなく「ああ今日たぶん別れを告げられるな」と予感しているんだろうな、ということが伝わってきますね。
1サビまではこの「別れの予感」が描かれています。

2番に入ります。

電車が通過する 轟音と風の中
君の唇が動いたけど 聴こえない
静寂が戻り答えを待つ君に 僕は目を見て微笑みながら頷いた

きっと彼女は「別れよう」と言ったんでしょうね。
主人公は別れを予感していたからそれがわかった。そして静かにそれを受け止めることが出来た。
「え?なんて?ちょっとよく聞こえなかったからもう一回言って!」
なんて野暮なセリフを吐いたり、「なんで急にそんな事言うの?」などとかっこ悪く食い下がったりせずに済んだわけです。

サヨナラを振り向くな 追いかけてもしょうがない
思い出は 今いる場所に置いて行こうよ

2番の歌詞の一部なのですが、さっき言った伏線の回収はこれです。
ラブラブな落書きも過去の思い出の1ページになる。
そのときは「またいつか二人でここへ来ようね」なんて話をしながら明るい未来の自分たちへ書かれたものかもしれませんが、別れたあとも思い出(落書き)は風化せず、ずっとそこへあり続ける。
実はこれを書いたカップルたちも、なんとなくそれを予感していたのかもしれません。
僕は君とお別れをしたこの場所にサヨナラの思い出を置いていって、前へ進みたい。
想像していた通りに恋人に別れを告げられていまった主人公の切ない心情が描かれているのが2番サビまで。  

躊躇してた間に陽は沈む ((切なく))
遠くに見える鉄塔ぼやけてく ((確かな距離))

君と会ったときはまだ空が明るかったのに、いつの間にか夕方です。
話し込んでしまったんでしょうか。
付き合っていたころの楽しい日々を振り返っていたのかもしれません。
しかし、別れのときが刻一刻と近づきます。
薄闇に溶けていく鉄塔に、いつの間にか開いてしまった自分たちの心の距離を重ねています。

君が好きだけど ちゃんと言わなくちゃいけない
見つめあった瞳が星空になる

えぇ…ついに夜になってしまいました。
別れがたいのはわかるけどもうそろそろ帰ろうよ。
なんて第三者だから言えるけど、実際はどんなに覚悟していても別れの瞬間は辛いものですよね。
つい、あともう少しだけ…となってしまう気持ち、痛いほどわかります。

この曲、特にサビは1番からずーっと「サヨナラなんて通過点だから大丈夫さ!前を向いて歩き出そうぜ!むしろサヨナラが僕らを強くするんだぜ!」なんて一見前向きなこと言ってますが、完全に強がりでしかないし未練たらたらなんですよね。
じゃあなんで主人公はそんなに強がっているのか?
それは、実は自分自身じゃなくて彼女のためなんです。
僕は大丈夫。君も大丈夫。と、彼女を励ましているんですね。

サヨナラは通過点 これからだって何度もある
後ろ手でピースしながら歩き出せるだろう
君らしく…

僕が君に伝える「サヨナラ」の意味。それは決して君との別れを望んでいるわけではなくて、君の素敵な未来への旅立ちを心から願っているということなんだよ。
なんて、そんないじらしさ溢れる歌だと私は思いました。

ところで高架下の電車の音、私も大好きです。
どんどん大きくなる音。一定のリズム。
思考停止してしまいそうになるような、それでいて一瞬で思考に集中できるような。
そんな不思議な感覚に捕われます。




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