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未経験からイラストを描き始めて22か月後に同人漫画を頒布するまでの過程

はじめに

 2017年11月に未経験からイラストを描き始めて、2019年9月にラ!のジャンルのオンリーイベントに20P程度の二次創作漫画を同人誌として頒布するまでに考えたこと、やったことをまとめます。

 ちなみに、現在私が頒布している同人誌の一部や漫画、イラストは、↓のpixivの方より閲覧できます。

 よくある「〇年でここまで上手くなった」系の話題に上がるような、「これ上手くなりすぎじゃね?」的なクオリティは今でも持ってないし、上達も別段早くはないと思います。これくらいのレベルに到達するにはこういう手順があるのか、というくらいの目安に見ていただけると幸いです。

同人漫画の頒布を実現するために考えた方針

 2017/11に、まず目標を「自身が萌えるくらいのクオリティで、カプ物の二次創作漫画を同人誌として頒布すること」としました。その実現のため、以下のような方針を立てました。

(1) 作品発表をコンスタントに行う

(2) 未完成品ではなく、完成品のみを発表する

(3) 段階的にできることを増やす

 (1)は、以前自分が傾倒していた作曲の趣味で学んだことです。作曲においてはよく「とにかく最初は作品を完成させて発表しろ」と言われます。このとき理由はわかりませんでしたが、最近になって「完成させない場合、次の課題が『完成させること』になってしまい、技術的な課題が見えなくなるから」「作品を発表して反応をみないと、良し悪しがわからず、フィードバックができないから」とわかりました。
 (2)は、発表することにより身が入ると考えたからです。
 (3)は、直感的に漫画をいきなり描くのは無理と思ったからです。何しろ、イラスト自体全く描いてこなかったので。精神的ハードルを下げて挫折を防ぐためともいえます。
 次に、時系列を追って行ったことを述べます。

2017/11~12 ひたすら公式絵を模写

 公式絵をひたすらにコピー紙に鉛筆で模写していました。中でも顔を重点的に、横顔、正面顔の両方を同じくらいの比率で模写していました。また、「人を描くって楽しいね」というサイトで顔の描き方を勉強しましたが、美少女系の二次創作だったので直接的には役に立たなかったと思います。ただ、単純に立体をとらえる力は多少ついたかも。模写は一つの作品につき、1-6時間くらいかけてやっていたと思います。

 今振り返ると、模写技術は、参考資料を書き写すこと、ひいては頭の中で3D回転させ適用する(=資料を見て描く)ことに不可欠でしたので、結果として大事な時期でした。私がたびたび記事に模写を取り上げるのはこのためです。
 ちなみにデッサンはやってません。最近伸び悩んでるしやった方がいいのかも
 このころはさすがに助走の意味合いが強く、作品発表には至りませんでした。

2018/1~6 とりあえずイラストを描く

 iPad ProとCLIP STUDIO PROを購入し、デジタル作画環境を整え、何回か模写で慣らしました。

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別記事にも貼った当時の桜内梨子ちゃんの模写 腕なげえ

 2月にpixivで初めての模写でない2次創作の投稿をしました。

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かすみんだってpixivの一番古い過去絵晒せますけど 

 公式絵をじっくり見ながらスポイトですべての色を抽出し、ほとんど模写みたいな過程で描いていたと思います。結局1つのイラストを描くのに1か月もかかりました。これでもね。
 これ以降も2週間くらいの間隔で、なるべく方針(3)「段階的にできることを増やす」を遂行するように、都度できないことに挑戦しつつ、気合を入れた作品を描きました。一日の作業時間は1-3時間程度でしたので、1作品につき大体総制作時間は20時間くらいだと思います。かけた時間は長いですが、できないことに挑戦する余裕ができたので、実感としては上達に繋がりました。

2018/7~9 漫画制作にチャレンジ

 この時期は漫画を描き始めています。初めに描いたのはこちら。

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よぴこの誕生日にこれを上げようと思った当時の自分の気が知れん

 ま、見ればわかりますけど、ギリギリ漫画の体を為している2コマ漫画です。でも描きあがったときは、出来たことが嬉しくて脳内小躍りしてました。
 これもやはり、方針(3)「段階的にできることを増やす」に則って作りました。いきなり4コマ漫画を描くのは無謀だと思い、コマ数を減らして起承転結でいうところの「転結」のみで構成しています。こうしてハードルを下げて、かつできないことに挑戦して成長できるラインを狙っています。結果的には描き上げたことで、次につながったと思います。
 漫画ではなく絵に着目すると、人体をなるべく全身で描くようにして、基本的な女の子の身体のバランスを学ぶようにしたと思います。
 次に作ったのはこちら。

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G'sのチャラいマッキーを表現したかったのだ

 なんか退化してない? これはpixivでよくある(最近はあんまりない)キャプションSSっぽいことをしようと思って、あえて台詞抜きにしてみたのです。あとカチっとした塗りなら楽に仕上るかなって。ぶっちゃけ失敗だと思っていますが失敗自体が経験に繋がったと思います。

 最後にこれ

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二枚目はH×H旧アニメのパロですな (誰にも気づいて貰えなかった)

 これは反省を活かして、前々回を発展させて、「起承結」で構成しました。描き文字、ウニフラやエフェクトも初めて使用し、楽しく描いて上達できました。今でもたまに見返すくらい好きな作品だったりします。
 1コマ目の振り向きで煽りアングルという課題設定も良かったかなと。こういう構図って頻出するので、やって良かったと思います。

2018/10~11 「漫画らしい漫画」を目指してみる

 漫画を4コマとし、起承転結のある内容にレベルアップさせました。最初の作品がこれ。

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 まだ吹き出しやフォントのセオリーを理解していなかったですが、4コマ漫画の方程式に当てはめて分かりやすいオチを付けました。また時短目的でデフォルメにも挑戦しました。しかし、デフォルメにはあまり力を入れる余裕がなく、絵柄の固定化は1年半後にまで持ち越すことになります。何気に3-4コマ目の人物が非常に難しく何時間もかけて描いたと思います。

 お次は百合R-18ものです。

 無謀な挑戦に思えますが、実は以前に布石としてパース構図で人体を描いたことがあり、その経験を総括して描きました。とはいえ20時間は優に超える時間がかかったと思います。とにかく資料を集めまくってラフを無限に変形でいじくったりしながらなんとか描いたという感じです。

 最後にこれ

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Dr.サイケがおる 有志による英訳版もあります

 1ページ幅のコマ割で3コマとなりセオリーから外れますが、難しいポーズ(机に寝そべり)と、背景を描くことに挑戦しています。絵の方はそんなに成功しなかったですが、漫画として見ると、漫画用フォントを使用して漫画として「らしく」することに成功しています。

2018/12~2019/3 画力が足りない⇒イラスト制作

 漫画を作ったのはいいものの画力の不足を感じ、漫画制作から離れ、イラストを描いています。この頃は意識して、カプ物に不可欠な「絡み構図」や、漫画を描くときに必要な背景のあるイラストを中心を描こうとしていています。制作間隔は週1程度です。また、レイヤー効果などデジタルイラストの技法を色々試していました。このイラストなんかは色々試行錯誤した跡があります。

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 ステンドグラスを描くに当たって焼きこみやら発光やら色々試していました。CLIP STUDIO君と仲良くなった時期といえます。今見ると人体や顔の造形はかなり甘いですが、こんな感じの絡みを描かなきゃいけない場面って百合ものだと無限に存在するし、どういう影入れをすればサテンの服(向かって右の人物)、コットン(向かって左)に見えるかなってのが多少なりとも理解できたかなと。

2019/4~9 漫画制作へ回帰、そして初めての同人誌

 画力向上は一区切りして、1-3ページの漫画を描き始めました。なるべく全身を描くことを意識しつつ、漫画的表現を身に着けることに注力しました。

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これほんと描くの難しかった記憶ある 多分今でも苦戦する 

 この作品はパース構図を多く利用した他にぶちぬき、ウニフラ、集中線、描き文字と様々なことを試しています。背景は力尽きておる

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マンスリーランキング原理主義だから事あるごとにネタにしちゃう
ちなみに「あはは。」は電撃時代のせつ菜の口癖

 起承転結のはっきりした4コマです。地獄先生ぬ~べ~的な擬音や背景の使い方だったり、黒背景の吹き出しを使うなどギャグマンガあるある技法を身に着けようと頑張りました。余談ですが、こういう「手垢のついた、使い古されたネタ」って好きなんですよね。

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 この作品はハガレンのパロです。ここでは絵は特に頑張っていないですが、ルビの振り方、流線の引き方などを学び取りました。あと、お米やお椀の描き方とか結構調べたと思います。商業漫画を参考にして、漫画的な手法を数多く学んでいました。

 話は逸れますが、実は私は「漫画のネタそのものの作り方」については意識して学んでいません。これまでのインプット(=読んできた漫画)が作りたいものに対して合致していたので、そのまま応用してアウトプットしていた感があります。四コマ漫画なんかは昔のDQ4コマやポケモン4コマを読み漁った経験を糧にしてると思います。

 7月中旬になるとストックがたまってきたので、これまで投稿した4コマ~2P漫画+αで初めての同人誌を制作することを決めます。内容はギャグ一本、締切は9月初旬。本文14P程度で、ちょっとカプ要素を入れた描き下ろしを4P。

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描き下ろし漫画P1。がさらじのラジオドラマから着想した漫画だと思う

 ただし、既存の8Pのうち1Pは全面描きなおしで、残りも全面的に手を加えています。

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描き直した四コマ

 大したボリュームではないのですが、残業続きだったりダイエットで毎日走ったりしてたので、めちゃくちゃハードでした。結果的には、無事に締め切りに間に合わせられました。ついでに頑張って色紙を作りました。

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 はじめての即売会の当日。私はろくに接客の仕事をした経験がなかったのでかなり緊張しましたが、いろいろ好条件が重なり、思った以上に手に取ってもらいました。
 同人誌の表紙はこんな感じです。

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 大分前の作品なので中身はWEB公開してます↓

2019〜2021年現在 そして、カプもの同人への道へ…

 ここからはオマケなのでサラッと話します。四コマ中心カプ要素控えめとはいえ、ひとまず薄い本を出した達成感に浸りました。
 ただ、「自分が萌えるレベルのカプ物同人誌」という域にはまだまだと感じました。これは、当時より多少なりとも上達した2021年現在でも、同じように壁として立ちふさがっています。
 当初の目標であるカプもの同人誌は、なんやかんやで、この期間で6冊刊行しています。その間、人体教本を3冊ほど練習したり(うち2冊は挫折)、週一で四コマ漫画を連載して、その中で、これまで通りに色々と課題を設定していってます。
 冒頭にも述べましたが、まだまだ絵うまというわけではないので、日々精進ですね。
 最後に、一番最近出した同人誌の表紙を載せておきます。

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まとめ

 同人誌を出す目標を実現するために行ったことを示しました。

おわりに

 今まで「下手だったけどこうしたらこんなに上手くなった」系の記事をいくつか見て、自分も記憶が残っている内にこれまでの軌跡を残したい!と思い立ち、なるべく細かく描こうとしたら、予想以上に長くなりました。

 で、ここまで書いておいて難ですが、ぶっちゃけ、カプものの同人誌を出そう!って思ったら、22ヶ月もの準備期間はなくてもいいと思います。出来はともかくいきなり同人誌出してブラッシュアップするのも一つの選択です。そこは本人の性格次第かなと。私の場合は着々と物事を進めていく性格なので、長い時間かけて準備したのだと思います。

 この記事を読んで、同人漫画作るのって大変だなーって感じたかもしれません。実際、自分で読んで萌えるってレベルまで行き着くのって、大変ですよね。読み手の目って厳しいですし。

 また、ラ!のような大手ジャンルで活動していない方や、一次創作の場合は、また別の苦労もあると思います。

 でも、やっぱり同人活動って楽しいし、大変でも続けちゃうんですよね。目標に向かって課題を一つ一つクリアするたびに表現出来ることが増えていき、また作品に共感してもらえるのが代えがたい喜びだからだと思います。

 また、「カプ物の二次創作漫画」という目標を最初に立ててはいますが、振り返ってみると、こういった大目標は必ずしも必要ないかな、って思います。
 今までいろんな作品を作ってきましたが、目標達成のためという意図はあれど、何だかんだで「その時一番作りたいもの」を作っていました。模写をしてた時期もそうです。目の前の作品に一生懸命になって、壁を乗り越えることで、次に作りたいもの、目標がどんどん生まれてくるんだと思います。今となっては「カプ物漫画」は一つの選択肢であって、他にも作りたいものが沢山あります。

 同じような志を持つ方が、この記事を読んで少しでも参考にしていただければ幸いです。



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